リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

Dubut作曲?、Chiaccone イ短調(2)

2021年07月29日 15時22分04秒 | 音楽系
12月のコンサートで取り上げるChiaccone イ短調、そのままイタリア語式で読むとキャッコーネ、これはチャッコーナとかシャコンヌともいいますが、この曲はウィーン楽友協会の図書館にある Mus. Ms7763/92という写本の一番最後に書かれている曲です。写本の冒頭には曲名だけで作曲者名は書かれていませんが、なぜドゥビューの名前が出てくるのかというと、一曲前のアルマンドがドゥビューの曲だと明示されていてかつそれと同じ筆跡で書かれているので、ひょっとしたらそうかな?とも考えられるからです。

ルッツ・キルヒホーフというリュート奏者はこの曲を録音していますが、CDの解説ではドゥビュー?となっているだけでなぜそう書いたかの解説はありません。このChiacconeがDubut作かも、というのはこのCDが出どころのようです。

しかしこれら2曲の様式を見ると、Dubut作かな?と見るのは無理があります。アルマンドの曲の作りはフレンチ・スタイルですが、Chiacconeはフレンチスタイルではなくもう少しあとのドイツ語圏で見られるスタイルです。ですから少なくともこの写本の終りから2曲目(アルマンド)と最後の曲(キャッコーネ)の作者は異なります。

後年の誰かが最後2曲を書き足したということも考えられますが、これら2曲の筆跡はそれらより前に書かれている曲にも見られますのでその線はありません。

ということでコンサートのプログラムでは作者不詳としておきますが、曲としてはなかなか華やかかつ抒情的ないい曲です。ちょっと書法に精緻さを欠きますが、まぁそんなことは吹き飛ばすくらい魅力がある曲です。

大山さんから今度のコンサート用にプロモを作ってはと提案がありましたので、この曲の演奏を一部入れて50秒くらいのプロモを今制作しているところです。