リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハ「マルコ受難曲」と「カンタータ198番」(2)

2021年12月17日 23時13分54秒 | 音楽系
バーゼル市は人口が17万人あまりと桑名市より少し多い程度ですが、プロのオケが複数あり古楽オケまで複数あります。そのひとつカプリッチォ・バロックオーケストラが2015年にマルコ受難曲の復元版のCDを出しました。

この録音は1744年演奏の後期版ということで、残念ながら198番では使われているリュートは入っていません。初版ではリュートが入っていたマタイ受難曲も、一般的な版ではリュートが入っているヨハネ受難曲も、バッハ晩年の版ではいずれもリュートはフィーチャリングされていません。恐らくその頃の(1740年代)のライプチヒにはいいリュート奏者がもういなかったということなのかも知れません。

マルコ受難曲の初演は第1回で書きましたように1727年ですが、この1744年版で録音したというのは、実は新資料の再発見があったからです。この資料が「再」発見だったのは多分資料自体の存在は知られていたのですが、マルコ受難曲の後期版とは結びつけられて考えられてはいなかったからでしょう。BWV1025のケースと一緒ですね。


CDの解説には次のようにあります。

2009年に素晴らしい発見が世界中の興味を駆り立てた。それはヨハン・セバスチャン・バッハの失われたマルコ受難曲の後期バージョンを含む印刷テキストがサンクト・ペテルブルクで発見されたことである。日付は1744年とあり、その印刷冊子には今までに知られていない2つの新しいアリアが含まれていた。その発見は偉大なトマスカントール(バッハのこと)の作品の中でも特に重要なことである。ハープシコード奏者のアレクサンダー・グリクトリックはこのCDのために初めてとなる後期版の復元を行った。