リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(6)

2022年03月23日 16時46分19秒 | 音楽系
フーガの後半部ではこれまた普通リュートでは使わない5コース10フレットとか最高音のfなんかも使うところがあります。このあたりはあまりいい音で楽器が鳴らないのですが、これは仕方ありません。なんとかいい音で鳴るよう練習をしていくしかありません。

後半の後半は音域が下がっているのでこちらはなかなかヘ長調では快適に演奏できます

私の場合バッハを編曲するときには最適運指、最適弦をさぐりながら編曲していくので、編曲が固定したときには曲はほぼ仕上がっている感じになります。

ヘ長調編曲とは直接関係ないですが、オリジナルとは異なる音で弾いているアレンジが多い箇所をひとつ指摘しておきましょう。

66小節目の2拍目のバスです。変ホ長調のオリジナルでは1拍目がEs、2拍目がナチュラルがついていてeに鳴っています。この2拍目が半音高くなっていないアレンジが実は大半なのです。新旧バッハ全集、Tree Edition, UT ORPHEUS EDIZIONIのリュート編曲版、大半の録音、皆半音上がっていません。ごく一部の演奏家の演奏でここをオリジナル通りに演奏しているのを聴いたことはあります。

オリジナルは以下の通りになっています。ちゃんとミにナチュラルがついているでしょ?


上の図版は上野学園が998購入の際に出版した記念論文に添付されていたカラー印刷の998を複写したものです。これはすでに上野学園にはなく競売にかけられたあとはどなたの手に渡っているかは不明です。1億円くらいで落札したといいますからリュート好きの富豪がいたのでしょうか。どっかの図書館や博物館が買い戻してほしいところです。