リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

みんなのリュート通奏低音(10)最終回

2022年03月13日 16時59分31秒 | 音楽系
ここまで駆け足で少し抽象的な内容もありましたが、ここからがやっと通奏低音の入り口になります。このくらいできてやっと通奏低音をやっていく体制が整ったということです。

できそうもないことを並べ立ててお前は通奏低音をアマチュアに弾かせないようにしているんだろう、なんて思った方もいらっしゃったかも知れませんが、そうではありません。物事には積み上げが必要であり、必要なことをすっとばしてできるようになることはありません。

何もハーモニーを理解せずソロフレーズの蓄積もないのにジャズのアドリブはできません。ロックの華麗なギターソロも指の俊敏さを養わないとできません。クラシックギターのアルハンブラの想い出もトレモロ奏法をきちんとイチから練習しないとできるようにはなりません。そしてこれらはいずれもそう簡単なことではありません。リュートの通奏低音も然り。

私は意味不明のジャズのソロ、よたよたのロックギターのソロ、ボッツンボッツンの指もつれトレモロのアルハンブラのような通奏低音を聴くにつれ、大変残念に思ってきました。また反対に通奏低音に近づこうともしない方も残念に思っていました。

いずれの場合も演奏をするという行為と正面から向きあっていません。ですからどうしても知識偏重で頭でっかちになりがちです。(リュートは他のモダン楽器などと比べると幸か不幸か「暗記事項」が多いのです)どうかアマチュアの皆様には健全な演奏をめざすべく、これまでにあげたポイントを少しずつでもいいですから取り組んでいっていただきたいと思っています。始めはあまり成果が出ず途切れ途切れの演奏になってしまうかも知れません。でも取りあえずはそれでいいのです。本連載で挙げたことに取り組む姿勢があれば、それが通奏低音、ひいては演奏そのものの上達への近道につながることだと思います。