リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

またもや!?(3)

2024年10月11日 11時55分38秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】

実はこの絵は何年か前に同紙の別のシリーズのコラムでも扱われていて、描かれている楽器を4コースのルネサンス・ギターだと書いてありました。これは明らかに間違いなので日経新聞編集部を通じて著者である美術関係の先生に問い合わせをしてもらいました。編集部を通じて返答をいただきましたが、描かれている楽器は4コースのギターであり、オランダのこの時代でもまだ4コースの楽器が使われていた可能性は大であるという内容でした。このくだりに関しては以前の当ブログでも書きました。

今回のコラム、まさか金澤先生が以前のコラムの著者のような間違いをするわけはないと思って読んでいきましたら、どう読んでも描かれているギターは4コースの楽器であるとしか読めません。

コラムの記事(有料会員しか読めないかも)(_ _)

正確に言うと、この絵の楽器が4コースのギターだとは書いてありません。5コースのギターだとも書いてありません。1550年代の4コースギターについての解説が書かれているだけです。でも普通の読み方をするとフェルメールの絵のギターもやはり4コースだというふうに読めます。4コースギターの時代から100年くらい経ってギターは5コースになってオランダでも大流行している、ということを書かないでどうしますか!

前回は音楽史に関しては素人の美術史家の先生だったですから仕方がないと言えば変ですが、まぁそんなところでした。でも今回は音楽史に精通されているはずの金澤先生です。大先生がおっしゃったことに対してわかっている人がいくら反論してもそれが極少数の場合だと、何も分かっていない多数の方にどれだけ言っても大先生が正しいとなってしまうかも知れません。そうなるとまさに衆愚の様相です。

秀吉の御前演奏曲が「皇帝の歌」だと結果的に定着させてしまった皆川達夫説とともにまた日本の古楽界隈におけるレベルの低い話がまたひとつ増えてしまうかも。他にもまだその手の話しはいくつもありますが、ここでは日本の古楽界はレベルが低いとだけ言っておきましょう。


またもや!?(2)

2024年10月10日 15時30分06秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】

答えは10本です。ヘッドを見ると裏からペグが通されていて端が表にでています。これを数えると10個ありますので、弦は10本張られていることになります。ヘッドの下方にはペグのつまみの部分が少し見えています。ヘッドの白く塗られた部分が6つありますがこれを数えてはいけません。これは装飾的な塗装なんでしょうか。あまりこういうのは見たことがないのでよくわかりませんが。

ボディのあたりの弦を数えても、この絵の場合なんか弦がはっきりと描かれていませんので、よくわかりません。ここを数えて4コースだという人もいるかも知れません。

日経新聞、文化欄のコラム、「絵画に宿る古楽器の調べ」シリーズは毎日楽しみに読んでいます。レベック、ヴァイオリン、ガンバ、リュートと来ていますので10月9日第6回目はギターかな?と思っていたら大当たりでした。フェルメールの「ギターを弾く女」です。

コラムの執筆は音楽学の泰斗、金澤正剛氏。氏とは面識はありませんが、氏がハーバード大学で研究されていた頃に出版した「アントニー・ホルボン全集1」(1967)を1970年代始め頃に買いました。3290円でこのテの学術的な書籍としてはとても安価に設定されていました。多分大学から補助が出ていたのだと思います。ドルの価格でも9.95ドルでした。この頃は円がまだ固定相場か、変動相場になったばかりの頃ですので、日本の販売価格3290円はかなり良心的だったと思います。

背表紙は本当は表紙と同じ色でしたが、本棚に入れておくうちに退色してまいました。

 


またもや!?(1)

2024年10月09日 18時01分07秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】

リュートを聴くのが初めてというお客さんが多そうなコンサートではときどき次のようなトークをします。

「このバロック・リュートは弦がとても多いですけど何本あるか数えていたかたもいらっしゃったのでは?」

(かすかな反応)

「ではもう次の曲を演奏しますので、その間に数えてみてください」

(演奏が終わる)

「はい、何本ありましたか?」

「18本」「23本」「20本」・・・

「はい、実は24本弦が張られています。ひょっとして弦をはじいているあたりを数えていませんでした?これを数えるのはなかなか大変ですよね。それよりこちらを数えるいいですよ」

(と言って、ペグの方を指し示すとみなさんなるほどと納得のご様子。少し受けた?)

弦楽器は必ずペグ(糸巻)に弦を結んで調弦しますので、糸巻の数=弦の本数です。

さて下はフェルメールの有名な絵ですが、この楽器に張られている弦は何本でしょうか。


ペグの回し方(3)

2024年10月08日 16時41分42秒 | 音楽系

こういった栓は17、8世紀の人々にとってはあたりまえの世の中であったため、いちいち押しながら回すということを言われなくとも指先が知っていた筈です。

当然こういった栓は固めですから指先の力もついていたことでしょう。これが現代人、とくに50歳くらい以下の人たち、になるとペグの回し方を知らないため、人差し指と親指でペグの持ち手を挟んだだけで回転させるだけというような回し方をしてしまいます。

それでは回るわけがありません。ペグの持ち手のカドを指に当ててテコの原理で回さないとまわりません。まぁ水道の水栓でも今は回さず上に上げるだけ、それすらもない自動水栓も増えているので出来ないのも無理はありませんが。

指先で「回す生活」がなくなっているために指先の筋力も衰えているので、もうひとつ出来にくくなる要素が増えます。回し方がわからない、プラス筋力不足です。

こういうことに対処するためにペグ回しの補助具が実はあります。

これは私の生徒さんの自作品を頂いたものです。これだと固いペグでも易々回りますし、ロー・ギア化するのでより細かい精度で回すことができます。


ペグの回し方(2)

2024年10月07日 18時50分27秒 | 音楽系

大昔私にとって初めてのリュートが完成したというので製作家野上三郎氏のスタジオを訪れました。氏は完成した楽器を手に取り、まず始めにリュートを調弦するときの注意事項を教えてくれました。楽器を演奏するときのようにかかえたまま調弦するのではなく、自分の前に楽器を置き右手と左手でペグを回しなさい。そのとき顔を近づけすぎると、弦が切れたりペグが抜けたりしたときに弦が目に当たるので注意しなさい、というような内容でした。

今聞くと笑い話のような内容ですが、もちろん調弦するときは演奏するときと同じように楽器を構えて左手でペグを回します。

注意することは演奏しているときとは異なり右手はより斜めにして楽器を自分の方と右膝上に軽く押さえ気味にすることです。前回のフェルメールの絵のような感じになります。
バロック・リュートの弾き方は、右手アームを下の絵のようにしていました。

これが調弦するときには右アームがフェルメールの絵のような角度になるわけです。

さらに重要なことはペグを回すときはペグボックスに押し込み気味にすることです。これをやらないと数回も回さないうちにペグはポロッと抜けてしまいます。ペグの棒は円錐状になっていて先の方が少し細いです。これは突っ込みながら回すことによって抜けないようにする工夫です。ペグを円柱状にしたらうまくしまりません。酒樽などの栓も同じ仕組みです。


ペグの回し方(1)

2024年10月06日 13時57分49秒 | 音楽系

リュートは産業革命以前の産物なのでいろんなところで現代人には多少の不便を強いることがあります。ペグに関することもそのひとつです。

一部のロマンティック・ギターではペグ仕様のものもありましたが、多くは金属のギアを回して調弦します。金属ギアがついているペグはロー・ギアになるので「大きく回して、少しずつ音程が上下」します。この方が当然音程は細かく合わせやすいわけです。さらに木のペグと異なり絶対に抜けることはありません。

私はこういった仕様のペグがついているギターがとてもうらやましいく思います。リュートの場合は、ギヤ比は車でいうとトップ・ギアと同じハイギアードですので、指で回した分と同じ回転で弦を巻き上げたり緩めたりします。ほんの数セントに満たないくらいの音の狂いを修正するのは、一発で決めるのはなかなか難しく「運」も影響してきます。

上の絵はフェルメールの有名な絵ですが、以前はリュートを弾いているところだとされていますが、今はそうはいわれていないようです。この絵については以前当ブログでも書いたことがありますが、絵の女性は少し前まで11コースバロック・リュートの5コースか6コースあたりを調弦していたが、何かに気づいて調弦するのを止めたところ、が描かれています。

調弦をしている最中でない証拠に左手は調弦しようとしているコースのペグを触っていても、右手はその弦は触っておらず10コースあたりの上に来ています。何かに気づき窓を見たらふいに右手が調弦している弦から離れてしまったのでしょう。

女性が何に気づいたかはさておき、正しいペグの回し方をよく表していると思います。


絵本太功記

2024年10月05日 19時38分58秒 | 音楽系

文楽を見に行ってきました。会場は津市の三重県文化会館中ホールです。このホールは三重県総合文化センター内にある施設で、この文化センターで教員時代の30年以上前に高円宮杯全日本中学校英語弁論大会の三重県予選を何回か運営したことがあります。当時は出来たばかりの建物でしたが、さすがに少し年期が入って来た感じがします。中庭にカラフルな彫刻がありましたが、塗り直し作業の真っ最中でした。

会場内のカフェで簡単な食事をとって中にはいりますと、文楽の人形が展示してありました。

今回の演目は二人三番叟と絵本太功記です。実は文楽のライブを見るのは今回が2回目。1回目は徳島に行ったときに見ましたがこれは短い簡略的なものでした。本格的なものを見るのは今回が初めてです。

この絵本太功記は本能寺の変を題材とする時代物だそうで、1799年に大阪の道頓堀若太夫芝居で初演されたと解説に書いてありました。全編はとても長いので今回は夕顔棚の段と尼崎の段の2編の上演。この2編でも1時間半くらいかかります。

上演に際しては左側に字幕があるので助かりました。さすがに太夫の語りだけでことばの意味を理解するのは難しいです。私は弦楽器奏者なので三味線のプレイについ耳目が行ってしまいがちです。絵本太功記の三味線は三人の方が交代で演奏しましたが、その中で一番最後に登場した鶴澤清介の三味線が圧巻でした。そもそも調弦を始めた第1音からして音が違いました。テクニックは素晴らしく太夫の語りによりそってストーリーを作って行く技量は大変なものだと思いました。まるでリュート一本と福音史家で受難曲をやるようなものです。もっとも太夫は歌唱はしませんが。

ヨーロッパのオペラは沢山の音を使い、沢山の人が登場してストーリーを展開しますが、人形と太夫の語りと三味線という全く別の方法でオペラに匹敵する舞台劇が展開できるとは、すごいものが日本にはあるものです。

 


瀬川千鶴

2024年10月04日 11時05分52秒 | 音楽系

リュートやクラシック・ギターの世界では女性奏者は普通だと思うのですが、ジャズやロックの分野では大半が男性だというイメージがあります。私が知らないだけなのかも知れませんが。

少なくとも40何年か前にフュージョンが流行り始めた頃は、フュージョンギタリストと言えば男性だと相場が決まっていました。その頃私は渡辺香津美のギターアルバムに衝撃を受けていろんな人の演奏を聴いていたのでそれは多分間違いないです。

最近 You Tube で The Jazz Averngers という女性ばかりのジャズ・フュージョングループの演奏をたまたま聴きました。編成は、サックス4人、キーボード、ギター、ベース、ドラムです。その中でギターがとてもいい感じなので名前を調べてみましたら瀬川千鶴というまだ30代の人でした。

キャリアはもう結構長いみたいですが、確実な技術とセンスのある音楽性を聴くことができましたので、早速ソロアルバムを探しましたら1枚出していました。

こっちの分野はシロウトなのであまり詳しくはないですが、昔に比べるとインストルメンタルはぐっと少なくなっている感じがします。そんな中、伝統的?なフュージョンやジャズの分野がまだ受け継がれていることがとても嬉しく思いました。車の中やワークアウト時の新しいお伴です。 次のアルバムが楽しみです。


スイスでも

2024年10月03日 18時11分38秒 | 日々のこと

スイス・チューリヒのエリコン地区で保育園児が襲われるという事件があったそうです。スイスと言えば多分もっとも治安がよく安全な国のひとつだと思いますが、そこでもついにこういう事件がおこるようになったのでしょうか。

エイコン地区は確か空港に近いところで、エリコンという名の駅もあったと記憶しています。旧日本軍がエリコン社の航空機関砲をライセンスしたものを使っていましたが、その会社があったところでしょうか。

ヨーロッパの大都市では夜になるとちょっと危ない感じがする地区があるのが普通のようですが、ことスイスに至ってはそういった地域はないと言えるくらい昼はもちろん夜でも安全なイメージがありました。

留学していたとき夜遅くバスでバーゼルに帰って来たことがありましたが、ひとりでとぼとぼ下宿まで歩いた道筋は安全そのものでした。バーゼルの街はそんなに大きくはないとはいうものの田舎ではありません。夜でも車が通っていますし、人も歩いています。日本の桑名市は世界的にみたら相当安全な場所だと思いますが、それでも夜遅く桑名駅から自宅まであるいたら、ヤンキーのお兄さんがバイクや車で走り去るのを目にするのはそう珍しくありません。

チューリヒの旧市街も夜間出歩いたことがありましたが、ここがスイス第1の都市ということが信じられないくらいゆったりと時間が流れ危ない感じの人はほぼ皆無、これがヨーロッパの他国でしたらそうは行きません。

それが白昼に襲撃事件が起こるとは、スイスも変わったものです。ひょっとしたらすでに他にもあったのを私が知らなかっただけなのか。スイスでも移民が増えてきたのでヨーロッパ諸国と同じような問題がすでに一杯起こっていたのか。詳しいことはわかりませんが、件の事件の背景を知りたいものです。

 


驚きのワイヤレス

2024年10月02日 10時43分12秒 | 音楽系

iPhone でときどき英語のリスニングをするので、どこにいても出来るようワイヤレスイヤホンがあったらいいなと前から思っていました。はい、大層勉強熱心な私です。

ワイヤレスは多分そこそこのお値段がするだろうからと思いこんでいたのでなかなか購入には至りませんでした。大して勉強熱心ではない証拠です。

一昨日急に思い立ってネットでしらべてみましたら何と安いものは1000円台からありました。まぁ音楽用ではないので、昔の携帯ラジオで使われていたような片耳だけのコード付きイヤホン程度の音が出れば充分と、Xiaomi Redmi Buds 6 Play1380円をポチってしまいました。アマゾンのポイントがあったので実際は0円です。

注文が23時58分頃でしたのであと2分以内に注文すれば明日に届きますと脅されたのであわててポチったのですが、ホントに14時間後(つまり昨日のお昼過ぎ)に置き配されていました。

早速iPhoneとBluetoothのペアリングを行い音を聴いてみましたが、何と驚くことに片耳イヤホンどころの騒ぎではないのです。それどころか高級品に匹敵する?くらいの音が出ています。え?これが1380円?という感じです。

そこで高級品と比較をしてみました。比較品は泣く子も黙るShure SE846です。100倍のお値段の品です。比べてみるとまぁもちろんSE846と比べると音の解像度は劣り音質も少し薄い感じはしますが、それにしてもてっきりドンシャリだと思っていたのでこの音質なら大健闘です。高音域から低音域までナチュラルにバランスよく音が出ています。以前持っていた3万円台の日本製やデンマーク製の品よりはいい感じがしました。クラシックの音楽も充分聴くことができます。

Redmi Buds 6 Playはこの夏に出たばかりの新商品のようですが、ペアリングもとても楽で確実でしたしどうしてこんな値段で出せるのか不思議な感じがしますが、Xiaomiはスマホの巨大メーカーなので量産効果が高いからでしょう。ただこの品、お値段がお値段だけにケーブルは付属していませんでしたので、アマゾンで注文しました。こちらもポイントを使いましたが。