院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

児童相談所の「股裂き状態」

2011-04-03 10:25:49 | Weblog
 原子力安全・保安院というのは経産省の管轄だそうだ。だとすると本来、原発推進がその役割のはずである。ところが今回、原発を取り締まるような立場に立たされている。これは「股裂き状態」である。保安院としてはコメントのしようもなかろうところにコメントを求められるのだから、気の毒という他はない。

 行政が「股裂き状態」になることは、ときどきある。現在の児童相談所がその状態であることに、誰も気付いていない。(したがって報道もされない。)

 児童相談所とは元来、子供のことが心配な「親を援助する」のが役割である。ところが児童虐待がクローズアップされると、親を取り締まる役割を求められるようになった。

 児童相談所の職員は、親をサポートするトレーニングは受けているけれども、親を告発したり取り締まるトレーニングは受けていない。

 そのため、児童相談所の苦悩はそうとうなものだと推定される。まったく気の毒としかいいようがない。マスコミも個人も、誰もそのようなことを言わず、児童相談所がそのような役割を担うのは当然だというような雰囲気さえあるので、私がここで指摘しておく。

このたびの地震に寄せて(15)

2011-04-02 17:51:14 | Weblog
 とうとうPTSD(心的外傷後ストレス障害)の「亡霊」が出た。いつかは出ると思っていたけれども、ついに出た。

 精神科医という肩書きのタレント、香山リカさんが新聞でちょろっと言ってしまったのだ(中日新聞朝刊3月31日付、愛知県版)。もっとも、彼女が言わなくても誰かが言っただろうが・・。

 PTSDのことを伝えるには、3月29日のこの欄で述べたように、たくさん注釈を付けなくてはいけない。香山さんは注釈もなく「2,3ヵ月後に起こるといわれている」と述べた。これはデマの一種だと思う。PTSD概念を撒き散らしたDSM(アメリカ精神医学協会の精神疾患診断統計マニュアル)にさえ、そんなことは書いてない。

 そもそもDSMは「状態像だけで診断する。原因は問わない」という「哲学」をもっていたはずである。それなのに、PTSDだけ原因を問うのである。つまり、「トラウマ」がなければ、PTSDとは診断できない。これは自己矛盾ではないか?(つまり、政治の圧力に負けて、「哲学」を曲げたと思われても仕方がない。)

 この概念が俗耳に入りやすいのは、「トラウマ」の捉え方がどういうふうにもできるからだ。「トラウマ」のまったくない人なんていやしない。すでに述べたように、この概念は政治、あるいは補償がらみだから、いっそう曖昧になる。

 このたびの災害では、PTSDなぞというインチキの診断をすると、禍根を残す。「驚愕反応」とか「喪失反応」など、控えめに考えておいたほうがよいだろう。間違ってもPTSDを確立した疾病概念として取り扱ってはならない。

このたびの地震に寄せて(14)

2011-04-01 13:50:57 | Weblog
 放射能に関するマスコミ報道があいまいである。TVに出演する「識者」の発言もあいまい、または迂遠である。何故そうなのかが最近やっと分かった。マスコミは責任を取りたくないのである。政府が発表した以上のことを言いたくないのだ。

 このほど某大学教授のK君が地元のTV局に解説を頼まれた。その際、TVで「魚は安全だ」と言うなというのが条件だったという。

 K君は魚は安全だと考えている。それを言うなというのなら、何のための「識者」による「解説」なのか?「識者」はただのお飾りか?

 この欄でつねづね批判しているマスコミだが、もう批判する気さえおこらない。「識者」はついに投書者と同レベルになった。投書とは受けたメディアの思想にに沿ったものしか掲載されない。

 これまでは長崎放射線医学研究所のHPが役に立った。福島原発事故以前に書かれた記事がおおかったからである。事故以来、政府見解なぞも載せるようになり、その信用度は大きく下がった。