『日本コミュニケーション学会』Vol.46 No.2,2018
仕事の質と組織内職員間の情報共有との関係について、質問紙調査を通して探っている。特に、「情報共有の正確性」と「情報共有のタイミング」に焦点を当てている。
引用
・(先行研究より引用)自己効力感が向上した従業員は、その認識が低下した従業員よりパフォーマンスが上がっていた。
・仕事の質は、組織全体のあらゆる職員の連携と協働で維持され、向上するものである。
・情報を得ていないとか、伝達されるべく情報に気づいていないという状態は、情報の循環、すなわち情報共有が十分になされていないということである。
・情報共有とは、組織内の各グループ(部署やチーム)間や職員間で隠ぺいすることなく交換し、情報を組織内でとどこおりなく循環させることといえるだろう。
・(調査結果からの考察)高齢者介護施設内全体の職員間で、施設内で起こった感染症などの緊急事態、事故、ヒヤリ・ハットの情報が正確に共有されていると施設の職員が認識しているほど、彼らは自分の施設のケアの質が良好であると認識していた。
職員間のコミュニケーションが円滑に行われていると、ケアの提供も円滑に行われ、そしてさらに複雑な(難しい)ケアの実現にも前向きに取り組める。これは、私が介護施設に勤務しているなかで、痛感していることである。しかし残念ながら、今はそれが「できていない」という状況からの逆説的な痛感である。
私は以前、医療機関に勤務していたが、それはたまたまであったのか、多職種で構成されているにも関わらず、コミュニケーションがとても上手に取れていて、「初めてのケース」で「大丈夫かな。対応できるかな」と不安があっても、少しづつではあったが支援がうまく続いていた。しかし介護施設では、同じ職種が多いチームであるにも関わらず、「理解」「共感」「納得」がどうも円滑にはいっていない。同じ職種がゆえに、「言わなくても分かるだろうから、いちいち言わない」ということなのか、「そこまで言わないと分からないの?」ということなのか。はっきりとは見えてこないが、どうやら「暗黙の了解の域」が各々違うのに、同じ職種であるがゆえに、「わかっているはず」というフィルターは、各々持ってしまっているからではないか?と本論文を通して、気づいた。
コミュニケーションの在り方で、仕事の捉え方、仕事の質向上との関連性などに気づくことができ、今の私には新鮮な論文であった。