社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「納棺夫日記」青木新門(1996)文春文庫

2011-05-14 20:43:44 | その他
映画「おくりびと」のもととなった本。納棺夫という職業を通して見た、独自の死生観を記している。

引用→
①今日の医療機関は、死について考える余地すら与えない。周りを取り巻いているのは、生命維持装置であり、延命思想の医師団であり、生に執着する親族たちである。死に直面した患者にとって、冷たい機器の中で一人ぽっちで死に対峙するようにセットされる。しかし、結局は死について思うことも、誰かにアドバイスを受けることなく、死を迎えることとなる。
②末期患者には、激励は酷で、善意は悲しい、説法も言葉もいらない。

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①について、この本は15年前に出版されたものであり、現在とは少し異なっているかもしれない。しかしながら、「死について考える余地すら与えない 」ことは、医療機関にのみならず、社会全体にはびこっている現象であると考える。生と死が分断されて存在するものではないということを、今一度問い直し、問いかけねばならないと感じる。


納棺夫日記 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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「やまない雨はない」倉嶋厚 (2004)文春文庫

2011-05-09 13:48:40 | その他
妻の死後、鬱病に罹患した筆者の看取り~鬱病闘病記。
看取りに向かう心境が、死後「後悔」の中で回想されている。男性独特の「喪失体験」を垣間見ることができた。

引用→
・最後の日まで妻を支えるために私がまずしなければならないことは、自分自身の精神安定をはかることだと判断しました。
・今、悲しみの最中にある人にかける言葉があるとしたら、あまり自分を責めるなということです。あなたはあなたのキャパシティでやることはやったのだから、いたらなかったことも含めて、それでじゅうぶんではないですか。


家族支援は、患者の亡き後にこそ必要である、ということを 痛感させられた。
精神科医だけでは十分ではなく、親族や隣人の支援がいかに重要かが分かる。それをうまくつなぎ合わせることができる専門家もまた、必要であろう。


やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから… (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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「在宅ホスピスの広がり1-神経難病の在宅ホスピス-」ニノ坂保喜

2011-05-03 09:30:44 | 医学
医師である筆者が、臨床から得た知見をもとに、在宅ホスピスについての現状を報告。事例の紹介もあり、その在り方をイメージしやすい報告となっている。

引用→
・(神経難病のような)長い時間をかけて、徐々に病状が進行する場合も、いや逆に徐々に時間をかけて進行するからこそ、緩和ケアが必要なのではないか。
・在宅ホスピスの良いところの1つは、疾患を制限されないこと。がん患者ばかりでなく、神経難病の方、老衰や認知症の方も同じようにホスピスケアを受けるべきだと考えるし、さらには、重度の心身障害を持つ子どもたちへのケアも、常にホスピスケアとして考えるべきである。

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筆者の意見に、全く同感である。日本は医療保険制度ありきの医療サービスの提供であるがゆえに、対象者が限定されてしまう。新しい取り組みを定着させるためには、やむを得ないであろう。しかしホスピス・緩和ケアのもともとの思想も、違った解釈で浸透している印象も受ける。今一度、考え直す時期かもしれないと考えた。

緩和ケア 2011年 03月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
青海社
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「患者・家族の在宅死の意向とその実現について」池崎澄江

2011-05-02 10:06:55 | その他
『緩和ケア』Vol.21.No.2 MAR.2011

海外の先行研究を中心に、在宅死をめぐる患者・家族の動向を報告している。
海外の研究ゆえに、日本のそれとイコールなのか?と疑問を抱く点もあるが、今後の日本の在宅ケアの指標としてみれば、学べる点もあると感じた。

引用→
・イギリスの調査結果…在宅死について、患者が望む場合よりも、家族が望んだほうが実現率が高い。
・全米の調査結果…がん末期を自宅療養した遺族の悲しみや精神健康は、死亡場所や患者の意向と実際の一致とは関連はなく、家族の意向と一致しているかどうかに関連があった。
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家族の意向と本人の意向、どちらか一方だけを優先することはできない。在宅療養は、家族介護があってこそ実現できることも多い。各々の意向を客観的に把握し、実現に向けて調整をする。頭では分かっているものの、やはり難しい。
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