社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ご遺体のケアを看護師が家族と一緒に行うことについての家族の体験・評価」山脇道晴(2013)

2013-05-25 21:27:55 | 看護学
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究2』日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団』

ホスピス・緩和ケア病棟から退院した患者の遺族から、「ご遺体へのケア」を一緒に行った家族の体験と評価を明らかにするため、質問紙調査を実施。その結果を報告している。ご遺体へのケアへの率直な思いを知ることができる。

引用
・看護師からご遺体へのケアを行うか声を掛けれられ、行った家族…81%
・看護師と一緒に「ご遺体のケア」を行った場面のことを思い出して、時々つらい気持ちになることがある
 …「どちらともいえない」+「そう思う」+「とてもそう思う」31.9%
・見送ることへの心の準備ができた…「そう思う」+「とてもそう思う」…74%
・看護師と一緒に行っている時に、さらにつらい気持ちになった…「どちらともいえない」+「そう思う」+「とてもそう思う」…41.1%

・考察⇒家族は「うれしさ」や「良かったこと」として、「良い思い出」になったと感じられているが、悲しみが癒されたり、気持ちの整理がつきやすくなったりした、とまではいえない。
・結論⇒家族の満足度に起因するご遺体へのケアは、故人の容姿の穏やかさと尊厳および家族の意向が聞き入れられることである。


調査結果において、「やせた(むくんだ)体をみているのはつらかった」「体の傷や腫瘍、治療の管が入っているところは見たくなかった」「陰部は見たくなかった」等の項目があり、各々「どちらともいえない」+「そう思う」+「とてもそう思う」の数値が半数を超えていた。しかしもしかしたら、長期的に在宅介護をした家族であったら、この数値は違いがあるかもしれないと思った。

湯灌は亡くなった本人よりも、遺された家族のために行う…ということが多いようだ。そしてまた、湯灌は日本独特の風習であると別の書物で読んだことがある。
病院死が一般的になる以前、自宅で介護をしそして看取ることが日常であった時代、湯灌もまた多くの家庭で行われていたそうだ。
在宅での看取りが見直され、そして推進されている現在、湯灌もまた見直されて来るのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「遺族からみたホスピス・緩和ケアにおける望ましいソーシャルワーク」赤澤輝和(2013)

2013-05-21 06:27:57 | 社会福祉学
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究2』日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団

緩和ケア病棟に入院した経験のある患者の遺族を対象に、ソーシャルワーカーへの相談経験と相談援助に対する評価を明らかにするために、質問紙調査を実施した。その結果と課題について提起している。

引用
・ソーシャルワーカーに相談していない、わからないと回答した遺族のうち、ソーシャルワーカーに相談できることを知らなかったと回答した遺族は64%であった。
・ソーシャルワーカーが行った個別援助のうち、60%以上の遺族が「解決した」と評価した援助は、「緩和ケア病棟の入院の手順に関すること」「緩和ケア病棟に入院する条件のこと」「緩和ケア病棟で受けられる医療やケアに関すること」などであった。
・ソーシャルワーカーに相談していないと回答した割合が60%以上であった項目は、「患者様が亡くなられた後の悲しみについて」「患者様が亡くなられた後の生活のこと」「お看取りに関すること」「患者様が亡くなられることに関したつらさについて」であった。


ケアの入り口については、ソーシャルワーカーがその役割を果たしていることが顕著となり、患者さんへのケアを終え、ケアの対象が家族に移行していくことへは手が行き届いていないことが分かった。これは緩和ケア病棟にかぎらず、保健医療領域のソーシャルワーカーにとっての今後の課題であり、また可能性でもあるだろう。

調査結果において、ソーシャルワーカーが高い評価を得たものに、入院の手順に関すること、入院する条件に関することがあった。
これらは、すでに回答が出ているものを伝えていく作業でもある。もちろん、この伝える作業の中に、患者・家族が持っている課題を解決していくプロセスが含まれているのかもしれないが、情報を伝えるだけにとどまってはいないか?と思った。ソーシャルワーカーが個別援助と思っていても、家族が「説明をしてくれた人」とだけ認識していないか?という懸念でもある。
一方で、遺族ケアのみならず、「家族の中で意見をどうまとめていったらいいかについて」「ご自身について」といった、より内面にアプローチしていく項目は低かった。デリケートな部分への介入は、とても難しく、時間を要する場合もある。でもこの部分にいかにアプローチでき、そして満足をしてもらえるかが、本当に大切だと考える。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ホスピス・緩和ケア病棟の患者-家族間で交わされる思い・言葉について」中里和弘(2013)

2013-05-11 17:48:44 | 心理学
副題:患者-家族が伝え合う「ありがとう」を支えるために
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究2』日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団

 終末期に、患者と家族の間で交わされる思い・言葉の実態を明らかにするため、遺族を対象に質問紙調査を実施。日本人特有の「言葉にしなくても思いは通じる」という側面が明らかになった一方で、医療従事者への要望(課題)も浮き彫りとなった。

引用
<調査結果より>
・言葉を交わさなかった遺族でも、8~9割が「気持ちを受け取った/気持ちは伝わった」と回答をしていた。
・家族から患者へ「思いを津与える行為」に影響する心理的要因…「患者に死を意識させるようでいやだった」「あえて言わなくても、お互いに思いは通じ合っていると思っていた」

・医療者は単に家族が患者に言葉を言ったかどうかではなく、それをどのように受け取っているのかに配慮する必要性がある。言葉にしなかった遺族に対して、後悔や辛さを十分に受け止めたうえで、遺族自身が「言葉は伝えられなくても気持ちは伝わった」と思えるよう意味付けられることが重要となる。
・(医療者は)家族が思いを伝えることに不安や抵抗を感じていないか、タイミングや伝え方が分からないと感じていないかをより注意深く観察した上で、必要に応じて患者・家族に両者の思いを繋げられる言葉かけや環境調整をすることが求められる。


家族間の問題には、とかく医療関係者は踏み込みにくさを感じてしまう。それは、日本人特有の感覚なのかもしれない。
相手が亡くなってしまったあとでは、伝えたいことも十分には伝えられない。それが相手に届いているのか、聞こえているのかに関係なく、相手に「伝えた/話した/言った」は大切な行為なのだと思う。

そして、双方の関係性にも違いはあるだろう。長年連れ添った夫婦間、まだ言葉の理解ができない新生児や乳児と親との関係などなど…。
それでも援助者は、少し目を配る(頭の隅にこういった情報を入れておく)だけで、対応が違ってくるであろう。
ちょっとの工夫や、ちょっとの勇気で、救われる家族(遺族)がいると痛感した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする