社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ソーシャルワーカーのミカタ」芦沢茂喜・山岸倫子(2022)生活書院

2022-10-27 14:46:59 | 社会福祉学

副題:対話を通してともに「解」を探す旅の軌跡

「ソーシャルワーク」とは何か。「ソーシャルワーカー」とは何者か?について、今回は筆者らが指導する側に立ち、

問いている。

多くの文献を踏まえ、そしてたくさんの経験をもとに綴られているが、堅苦しい「専門書」にはとどまっていない。

専門家を目指す人たちが、「専門家ってなんだろう」と立ち止まったときに、とてもチカラになると感じた。

 

その事柄を抱えていて、困っているのは誰か?抱えている本人なのか。

それとも本人を解決の方向に導けずに、オロオロとしている専門家としての自分なのか?

そしてその解決の方向とは何か?

 

本書では、「専門職」と認識している(認識されたい)ことによって焦点がぼやけ、

誰のための支援なのか、誰が主軸なのかが二の次になってしまうループについて、触れられている。

社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士…

多くの資格が存在し、支援者がゴマンといるような錯覚に陥られてる昨今ではあるが、

「支援」、「ソーシャルワーク」の根本は何なのか?

本書はそれをふんわりと、そしてガツンと投げかけている。そんな印象を受けた。

 

 

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「身寄りのない独居高齢者の身元保証問題に対する医療ソーシャルワーカーの望ましい支援とは」富田幸典、谷川和昭(2022)

2022-10-18 14:01:16 | 社会福祉学

副題:兵庫県・岡山県の実態調査より

『関西福祉大学研究紀要 第25巻』

 

医療機関に従事するソーシャルワーカーに対し、質問紙調査を実施し、支援の在り方を整理、分析している。

目新しい知見は見受けられないが、現場で奮闘しているソーシャルワーカーが直面している課題を、丁寧に整理している。

今後、確実に増加していくであろう身寄りのない独居高齢者への対策を検討するうえで、参考になると感じた。

 

引用

身寄りのない独居高齢者の身元保証問題に対する医療ソーシャルワーカーの望ましい支援については、①成年後見制度、生活保護制度などの活用を図る、②地域の協力を得て、多職種多機関連携の要となる、③本人への説明と信頼関係の構築を図る

 

20年以上前の話になる。在宅療養支援診療所に勤務していたころ、90代の独居女性に対し、自宅での看取り支援をしたことがある。看取りといっても、唯一の家族は80代の妹さんで、同居ではなかった。「家」でこのまま死んでいきたいという本人の思いを、ただ叶えようとしただけである。住んでいたアパートは、築50年以上がたった木造アパートで、隣に大家さんの家があった。アパートには本人しか住んでいなかったため、本人が亡くなったらアパートを閉じる予定であった。生活保護を受けていたため、死後の手続きはケースワーカーさんが妹さんと一緒に行うことで合意が得られ、家で亡くなることは大家さんが了承してくれた。了承してくれるどころか、食事を運んでくれ、安否確認をしてくれ、強力なサポーターであった。そんなこんなで無事に?「家」で亡くなることができたが、これはなによりも、地域の力があったからだと痛感している。一人でも「独居で死にそうな人を、このまま家に置いておくなんて!」と反対したら、きっと実現はしなかったであろう。

これからの日本は、きっとこういう方が増えていく。どう支えていくのか、支援者にも本人にも、準備と覚悟が必要だと考える。

 

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「社会福祉法人の地域貢献活動に関する検討‐大都市の高齢者施設に焦点化して‐」大洞菜穂美(2019)

2022-10-06 10:58:12 | 社会福祉学

『十文字女子学園大学紀要』Vol.50

 社会福祉法人が行っている地域貢献活動について、その促進要因と阻害要因をインタビュー調査を通して明らかにしている。税制上の優遇を受けている社会福祉法人は、地域貢献を行うことを一つの責務とされている。その実態について、分かりやすく報告されている。

 

引用

・(調査結果より:調査対象の)すべての法人で地域貢献活動を行っていた。内容について大きく分けると、「地域交流を目的とした活動」「認知症カフェ、認知症サポーター養成講座講師」「地域からの要望や協力で行っている事業」「法人独自事業」となった。

・「法人独自事業」とは、ランチ交流会や体操教室、栄養教室、就労審など、いずれも職員が自分たちになにができるのか、またどんな地域課題があるか検討したうえで行われている。

・(活動への阻害要因)①社会福祉法人本部の地域貢献活動に対する意識格差がある、②理事に対する理念の具体化及び啓発の機会がない、③社会福祉法人のミッションについて認識が乏しい

 

新型コロナウイルスが流行し、福祉施設が地域とつながる機会が激減している。そして、家族とすら手を取り合えない福祉施設入所者も少なくない現状は、異常という言葉では表現できないくらいである。

社会福祉法人は地域に根差し、地域に貢献し、地域の人とともに生きていく…こういった類の理念を掲げている組織は、とても多い印象を受ける。私の勤務先も然、である。しかしながら、予算や人手ややる気や…いろいろなものが足かせになり、結局のところ、「新しくできた、あそこの建物はなんだ?」と思わせる、対象となってしまったのである。

法人本部は施設とは異なる行政区にあり、経営者集団は親族で構成されている。似通った環境で生活をしていた人たちが、おかしな共通の認識で、組織としての成長の幅を狭くしているのではないか?と思わされることが多々ある。組織の内側に皆が集中するのではなく、外の世界に目を向けてほしい。この論文を読み、痛切に感じている。

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「人生の終盤に向かう過程の事前準備支援に関する対話へのケアマネージャーの関与」

2022-10-03 13:45:40 | その他

島田千穂、伊東美緒、児玉寛子/第67巻第7号『厚生の指標』2020年7月

 

その人の人生の終わりの時期に深く関わっていくケアマネージャーを対象に、質問紙調査を実施している。

「どのように過ごしていきたいか」の対話について、高齢者本人、そして家族と、どのくらい・どのように行っているのかを確認している。

 

引用

(調査結果から)

・ケアマネージャーの97.8%が、人生の終盤に備えるための準備支援が必要と回答し、その必要性は高く認識されているにもかかわらず、8割以上の利用者に対して事前に対話していた人は12.0%にとどまった。

・ケアマネージャーの基礎資格との関連をみると、利用者本人、家族との事前対話頻度との優位な関連は見られなかった。

・ケアマネージャーの介護に対する介護規範意識によって、本人との事前対話への関与の程度は異なり、(中略)家族が看取りにかかわるべきと考える人ほど、本人との対話は少なくなっていた。

 

「人生をどのように終えたいか」「どの程度までの積極的な治療を希望するのか」など、人生の終盤には、事前に決めておきたいとても大切な事柄が詰まっている。

その人の終わり方は、家族の意向に左右されるかもしれないし、その時に関わっている専門職の価値や力量に左右されるかもしれない。それゆえに、ある程度は明確に、意思表明をしておく必要があるのだと思う。

今は望めばどこまでも、「生き長らえる」ことができるようになった。だからこそ、自分のしんどいと感じることを、早めにわかりやすく、家族や近しい人に伝えていければと思う。ケアマネージャーのみならず、人の生活を支える人たちには、「死」をタブー視せずに、日ごろから話し合えるきっかけを作っていって欲しいと願う。

 

 

 

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