社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「日本におけるホスピス・緩和ケアの発展の経緯、現状、将来」柏木哲夫(2007)

2010-03-19 20:37:38 | 医学
『現代医学 55巻2号』

ホスピス、緩和ケアの歴史について、日本およびイギリス、アメリカを中心に概観している。
ひとつひとつについての詳細の情報は得られにくいが、大きな節目を知ることはできる。

引用
・近代的な意味でのホスピスの始まり~1967年 セント・クリストファ・ホスピス(イギリス)
・日本における緩和ケアの始まり~(特定のベットは持たなかったが、チームを組みケアを提供するという在り方が、それと言える) 1973年 淀川キリスト教病院
・緩和ケアは、「病むこと」を病態生理学的以上としてのみではなく、患者が苦悩し、家族が打撃を受けるという視点からもとらえ、次のことを実践する(9項目のうち、本ブログでは6番目の項目に注目)~患者が病気に苦しんでいる間も、患者と死別した後も家族の苦難への対処を支援する。


「患者が病気に苦しんでいる間も、患者と死別した後も家族の苦難への対処を支援する。」
これは職種問わず、対人援助業務に携わっている人であれば、だれしもが必ず一度は必要性を感じる項目であろう。
今は特に、がん末期患者を看取った家族を支援することが中心になっている印象を受けるが、それであっても十分に提供されているとは思えない。
心理学を研究する大学の付属機関、NPOによるもの、そして自助グループによるもの…様々な提供体制で実施されているが、患者本人の死後に、適切なケアを受けられるような「つなぎ」の作業は、十分に行えているのだろうか?

せめて専門機関や自助グループへの「つなぎ」は、きちんと担っていくべきであろう。




コメント (3)
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『生きる。 生きる「今」を支える医療と福祉』岡安大仁・市川一宏/編 人間と歴史社 2004

2010-03-15 21:19:07 | 社会福祉学
「生きる」こと、そして「生きる」を支えることについて、医学、看護学、社会福祉学から述べている。
2002年に開催された市民講座の講義内容をもとに執筆されているせいか、難しい論点をついているのも関わらず、とても分かりやすくまとめられている。
市民講座は今から9年前、本書の発行も今から7年前と少し昔のものではあるが、「利用者に寄り添う」「その人の呼吸に合わせる」といった極めて「当然」な支援論を、とても丁寧に読み取ることができる。

引用
『生きる「今」と向き合う」岡安大仁
ホスピスというものを、、単にガンに限ることない福祉と医療の合作としてとらえる必要があると思います。

『「喪失」-心の空白への援助 悲しみを支えるワーク』福山和女
・日本の場合、「火葬」にするというのは、否認を何とか怒りに移動させるようなものなのです。目の前でその人がいないということを見る。そういうところに立ち会うということです。ですから、息を引き取るときに立ち会うことは非常に重要なことなのです。
・配偶者の死のときにどのように取り組んできたのか、その取り組みを全部聞かせて欲しいのです。そうすれば、その人の死に対する信念が理解できます。

『「生きる歩み」を地域で支える』市川一宏
本来のホスピスケアは、死にいたるまでの見守りだけでなく、死後に残された家族へのケアを含むはずですが、それに対してはまだ十分ではありません。


社会福祉(学問、実践など)においても、ホスピスケアは専門分野であるということを、9年前にすでも語られていたにも関わらず、その浸透(普及)は進んでいない印象を受ける。
研究者のみならず、緩和ケア病棟に従事しているSWや職能団体も、その必要性を痛感し、職能教育にも取り組んでいる。
ホスピスケアを実践するチームの一員としてのSW…これが浸透しきれないのは、診療報酬だけの問題か。それとも専門性か、はたまた他業務こそが力量発揮の場であると、手が回らないのか/回さないのか…。

本書を読めば読むほど、ホスピスケアやグリーフケアこそが、SWの専門性を十二分に発揮できる場であると思わずにはいられない。


生きる。―生きる「今」を支える医療と福祉

人間と歴史社

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「愛する人を亡くした方へのケア 医療・福祉現場におけるグリーフケアの実践」

2010-03-06 21:34:37 | その他
宮林幸江・関本昭治 日総研 2008

看護師、医師、NPO在宅緩和ケアセンター所長による共著。
グリーフケアの歴史的背景、グリーフケアの定義といった学問的な側面から、実際の支援方法まで、幅広く丁寧に記述されている。
特に、筆者が取り組んでいる「ワークショップの実践方法」は、具体的な運営方法が紹介されており、マニュアル本としても一読の価値がある。
宮林氏の自身の悲嘆経験をもとに、繰り返しなされた綿密な調査研究をベースとして書かれているため、学問的な裏付けと実践に使いやすいいわゆる「方法論」が、とてもバランスよく読みやすい。

引用
・死別経験者は「思慕を中心とした心的反応(感情)」と「死別という現実に対応しようとする志向性(理性)」が共存している。

・日本人の4つの悲嘆反応(悲嘆反応は国ごとに、その表出が異なっている)
①思慕
②疎外感
③うつ的不調
④適応、対処の努力
(⑤死別者の怒り、罪責感)

・死別相談時の介入方法-大別して4つある
①情報的介入
②情緒的介入
③道具的介入
④治療的介入
*筆者は、看護師は①と②の介入にとどめておくべきである、ソーシャルワーカーは②と③において欠かせない存在であると述べている。


我が国においては、グリーフケアは「善意の行為」にとどまっている感がある。
診療報酬によって保障されている訳ではなく、専門教育が確立している訳ではなく、ただただ、その必要性を実感し、どうにかして支援をし続けたいと願う人達の、熱意によって展開されているように思う。
グリーフケアは、終末期ケアの一部であり、地域生活支援の一部でもあるだろう。
特化させるのではなく、当たり前のケアとして、援助計画に組み込める医療福祉従事者が増えることを願う。

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