社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅緩和ケア地域連携クリニカルパスの作成と導入」 小林孝一郎、村上真由美ら

2013-11-28 21:23:12 | 医学
『Palliative Care Research 2013;8(2)』

入院から在宅に退院する際の連携をより円滑にするために、誰にとっても使いやすいパスの開発し、そしてその試用後の調査を報告。
疾病に限定されたクリニカルパス、病院から病院へのパスはすでに存在しているが、在宅緩和ケアに特化したものは開発途上にある。
それゆえに、本研究は先駆的であり、学ぶべき点が多い。

引用
・パスは10項目から成る…①緩和ケアパス・運用方法、②プロフィール・わたしが大切にしたいこと、③患者医療情報、④医師の役割分担、⑤地域医療者の役割、⑥在宅療養生活の注意点、⑦説明・同意書、⑧わたしの療養記録、⑨自由記入欄、⑩病院の各部署・担当者のご案内

・(調査報告から)家族から「つらいときには見る気持ちになれないと言われた」

・現在運用中のがんパスは、がん診療連携拠点病院と一般病院や診療所に外来通院している患者を対象とした循環型パスであるのに対して、緩和ケアパスは、在宅での終末期ケアや栄養管理、看取りなどを支援する支援型パスである。

・在宅緩和ケアでは、「医療モデル」より「生活モデル」に重点が置かれる。


試用段階であるため、まだまだ改良の段階ではあると思うが、試用後のアンケートは医師、看護師が中心であり、ソーシャルワーカーやケアマネ、宗教家は含まれていなかった。
また肝心の患者及び家族も含まれていないため、評価の側面としては不十分ではないか?と感じた。

「生活モデル」であると明記しているのであれば、医療者のみではなく広く多職種の声を聞くべきであろう。
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「男が介護するということ-家族・ケア・ジェンダーのインターフェイス-」斎藤真緒(2009)

2013-11-22 21:22:22 | その他
『立命館産業社会論集』第45巻第1号

近年、わが国において増加している、「男性介護者」(妻を介護する夫、親を介護する息子)の実態と課題を把握し、今後の研究のの射程を欧米の先行研究から抽出することを目的としている。
筆者のこれまでの調査研究の報告もあり、男性介護者の実態をわかりやすく提示している。

引用
・(調査報告より)(介護の担い手として)「嫁」の割合の劇的現象の一方で、介護の担い手としての男性-夫、息子-が台頭してきている。
・(調査報告より)男性介護者が介護で困っていることとして最も多かったのが「入浴介助」である。
・家事を中心とする男性の生活的自立能力が問われており、家事スキルの有無が、男性介護者が抱える困難や負担の最初の分岐点となっている。
・介護以前に家事という生活的自立という課題と突きつけられる男性介護者が多いということだけではなく、現在の介護サービスが、家族介護者の家事スキルの習得を与件としていることを逆照射する結果となっている。
・Harrisは、男性介護者を4つのタイプに類型化している。第1のモデルは、家の外での仕事の延長線上に介護を捉えようとするタイプ。第2のモデルは、愛情としての介護であり、あらゆる時間とエネルギーを被介護者に注ぎ込むタイプ、第3のモデルは義務としての介護、第4のモデルは岐路に立つ男性としての介護者というタイプである。


Harrisが提唱している介護者の4つのタイプは、各々にリスクがある。その人がどのタイプに属するか(もしくは近いか)を知ることで、支援の糸口を見つけることができるかもしれない。

女性が行うことが当然とみなされてきた家事や介護は、介護保険によってその認識が少し解き放たれ、そして男性をも担うものとなっている。
子が親を介護する、配偶者同士で助けあう。当たり前のことであるが、各々の立場を見ていくとそんな簡単にはうまくいかない。それは男性のみならず、女性にも言えることであろう。
少子化で、ますます家族介護が厳しくなっていく今後に向けて、女性/男性が共通して抱える問題点、性別によって異なる問題点…ひとつづつ、そして確実に把握し、整備していく時期にきているのだと、感じさせられた。
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