社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「スマイル 生まれてきてくれてありがとう」島津智之・中本さおり(2016)クリエイツかもがわ

2016-07-27 09:37:48 | 医学
 熊本県で、小児在宅支援事業を展開しているNPOの活動を紹介している。

引用
・障害がある子どもたちの生活は、三つの要素によって支えられています。一つ目は「生命の安全」。この土台を担うのは、主に医師です。(中略)このベースの上に、二つ目の「健康の維持」がきます。この担い手は、主に訪問看護師です。(中略)そして三つ目が「社会生活」。命が守られ、健康が維持されると、遊びや学び、外出といった体験を通して、人生を豊かなものにしていきます。ここの担い手として期待されるのが、ヘルパーなのです。
・在宅生活では、医療だけでなく、ヘルパーのような介護サービスも不可欠です。訪問看護師とヘルパーが子どもをお風呂に入れている間、お母さんが保育園にきょうだいのお迎えに行く、ということができるのも、入浴介助を担うヘルパーがいるからです。医療と福祉、この両方をうまく活用してこそ、笑顔の在宅生活を実現できるのです。そのためにも、一人ひとりの子どもの現状を見て、在宅生活をトータルに見渡し、計画を立てられる人が必須です。


 在宅生活、在宅医療となると、高齢者支援と思われがちだが、当然のことながら子どもも、65歳未満の大人もいる。その広がりの大切さを改めて感じた。
そして現場では時に、ヘルパーは看護師よりも格下の職種と認識されている印象を受けるが、本書ではそれを真向から否定している。
互いの専門性を知り、適切な役割分担がすることが、質の向上につながるのだと思う。

スマイル 生まれてきてくれてありがとう
島津 智之,中本 さおり,認定NPO法人NEXTEP
クリエイツかもがわ
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「高齢者向け分譲マンションの現状と課題」吉村直子(2009)『マンション学』第34号

2016-07-24 16:11:14 | その他
 高齢者の住まいのひとつとして普及し始めている、高齢者(シニア)向け分譲マンション。現状と課題について、建築業界からの視点から整理している。

引用
・高齢者向け分譲マンションとは、高齢者を主な対象として想定し、供給される分譲集合住宅のことである。(中略)有料老人ホームのように明確な定義づけがなされていない。
・高齢者向け分譲マンションは、権利を他人に譲渡できない有料老人ホームとは違い、購入者の資産として、自由な売却や賃貸、相続が可能である。
・マンションディベロッパーの中には、新規事業の有望株として大いに期待しつつも、「売り切り」では済まされない長期の事業を自ら責任もって手がけられるのかという不安を抱える事業者が多いことも事実である。


 高齢者向け分譲マンションは、その数は決して多くなく、サ高住や有料老人ホームと同等にみられることもしばしばある。加齢に伴って生じる身体的な問題等に、臨機応変に対応できるのか?、とても不透明な印象を受ける。
自宅ゆえに、介護サービスや訪問系の医療サービスを活用することで、最期まで過ごすことはもちろん可能である。しかし一方で、「高齢者向け=24時間体制の介護付き」という認識で購入を決め、実際との違いに困惑している人もいると聞く。
こういった物件の紹介は、町の普通の不動産が仲介している。正しい情報の提示をお願いしたい。
 
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「常盤平団地発信 孤独死ゼロ作戦 生きかたは選べる!」中沢卓実著、結城康博監修(2008)

2016-07-11 13:31:04 | その他
団地の自治会長さんの著書。自らが住む団地における孤独死ゼロ対策について、事例を交えて紹介している。

引用
・「孤独死対策」では、①「早期発見・早期対応」、②65歳以上の「安心登録カード」の呼びかけ、③ひとり暮らしへのきめ細かな対応、④通帆のネットワーク化、⑤向こう三軒両隣といった地域へのよびかけ、⑥福祉よろず相談業務の充実、⑦関係団体との連携、⑧行政との協働と役割分担。以上が具体的な実践のポイントです。
・「あいさつもしない」、「社会参加はしない」、「何事にも関心を持たない」、つまり「孤立」した生活をしているという点は、「孤独死」に共通しているともいえます。


今は、宅配業者等を巻き込んだ安否確認、行政主導での支援ネットワーク作り等が普及し始めている。
個人情報保護法との関連、プライバイシーに関する意識の違い等で、すべてが円滑に進んでいるわけではないが、本書が出版された当時と比較すると雲泥の差で改善されている。
昔は地縁で補えた「助け合い」の部分について、今は意識化して活動をしていかないと、結びつきが生まれない状況になっている。
隣近所という単位、同一団地や同一マンションという単位、小学校区という単位等々…つなぎ目をつくり、広げていかないと、よいコミュニティは形成されないのだと痛感する。


常盤平団地発信 孤独死ゼロ作戦―生きかたは選べる!
クリエーター情報なし
本の泉社
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「地域福祉論」岡崎重夫(1974)

2016-07-09 22:28:52 | 社会福祉学
言わずと知れた、日本における地域福祉論の原点。社会福祉たるもの、地域福祉(コミュニティケア)たるものについて、シンプルに考えることができる。

引用
・援助対象者の生活の全体性と主体性の援助を特色とする社会福祉は、生活の一部面にのみかかわる専門分化的な社会制度や普遍的サービスの一面性を補完することができる。
・社会福祉における主体性援助の特色は、生活困難そのものの解決と同時に、解決能力の強化を強調するものである。それは将来に向っての抵抗力の強化による予防である。
・予防的社会福祉は、社会生活上の困難の「発生予防」はもちろんのこと、社会生活の積極的な改善をも目的とする社会福祉である。(中略)予防的社会福祉は「社会的健康の増進と維持」を目的とするのである。


何らかの援助機関に属するソーシャルワーカーは、発生した問題解決のために対象者と面接をし、支援を開始することがほとんどではないだろうか。
そもそも、ソーシャルワーカーは問題解決のために登場した歴史があるため、当然と言えば当然であるが…。
介護予防や虐待防止等、「防ぐ」ことを求められることが多くなった昨今、予防的社会福祉という側面を今一度考えてみたいと思った。

地域福祉論
クリエーター情報なし
光生館
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『高齢者を「支えあう」地域見守り活動の課題ー地域見守り活動調査からー』斉藤千鶴(2009)

2016-07-07 05:41:30 | 社会福祉学
『関西福祉科学大学紀要第13号』
 
 地域包括支援センターに配置されている「見守り推進員」への調査をもとに、その活動内容、課題を整理している。

引用
・異常を発見し、通報を寄せてくれた人に様々な人がみられた。近隣や地域住民、民生委員等はもちろんのこと、その他に新聞配達人、配食サービスの人、近くの喫茶店の主人、高齢者が受診をしている医療機関など、様々な身近な人たちが関係していた。


 地域におけるつながりが希薄化している現代において、専門職なしでは、地域のつながりを意識させ、強化させ、継続させることは難しいのかもしれない。
 本論文に登場した見守り推進員の方々の声は、「他者」が生活に入り、内と外とのつながりを見出す難しさを伝えてくれている。
 在宅での介護や看取りがますます増えていくだろう。内と外とのパイプ作り…その面も忘れてはいけないと思った。
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