社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「人工呼吸器非装着の筋萎縮性側索硬化症患者と家族の病の経験と生活ー生活構造論・生活の資源の枠組みを用いてー」

2021-01-23 11:04:04 | その他

田中恵美子、土屋葉、平野優子、大生定義『社会福祉学』第53巻第4号 2013

 

 ALS患者の遺族に対するインタビュー調査をもとに、タイトルについて論述している。

「正しい」「正しくない」というのではなく、装着・非装着についてのプロセスを多面的に丁寧に掘り下げている。

 

引用

・ALSは1869年に発見

・生活構造論→生活を、家庭において、日常的・習慣的な運動と、生活変動を受け止め正常化していく運動とが交差する動態的なものとしてとらえる。

(調査結果より)

・女性介護者は、患者の発症を機に、特に介護に対する生活戦略として、協力者を得て連携して資源の管理者役割を担った例がみられた。

・男性介護者は協力者をもたない、または、いても連携せず独立して資源を管理する傾向がみられた。

・(非装着者の遺族の言葉)「『ALSは呼吸器さえつければなくなることはないから、怖い病気ではない』みたいな書き方をする方がいるんですけど、それちょっとひっかかってしまったんです。…いろんなケースがあって、確かに呼吸器つけて、生活の質…いい人生送られる方もいるかもしれないけど。こういう人もいるっているのをきちんと扱ってほしい」

・呼吸器の装着、非装着という生活戦略の違いは、生死を分かつ重大な違いだが、どちらも呼吸筋麻痺というある状況に対し選択されたひとつの生活戦略にすぎないのである。

・特に男性介護者の場合、ALSに関わる資源管理の前に、家庭生活に関わる資源の管理および他者との共同作業への支援が必要である。

 

 病を抱えての生活は、探し、迷い、決定し…そういったひとつひとつの作業がとてもストレスで、とても重たい。

ありきたりであるが、伴走者が必要であり、いわゆる専門家と呼ばれる人たちがもっともっと効果的に機能しなくてはいけないと、

つくづく考えさせられた。

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「介護老人保健施設の退所支援ソーシャルワークの評価枠組みの構成」間嶋健、和気純子(2019)

2021-01-11 16:35:44 | 社会福祉学

副題:支援相談員による支援記録の質的分析より

「ソーシャルワーク学会誌」第38号 15-26 2019

 老健における支援相談員のソーシャルワークについて、支援の評価枠組みの作成方法を提示している。

分析によって導き出された評価枠組みも分かりやすく、活用しやすいが、

個人的には、分析材料として扱った支援記録を読むことで、

支援相談員の取り組みの有り様が目に浮かび、印象に残った。

 

引用

・老健の退所支援において家族とSWの視点が反映されたSWの評価枠組みとして、12の小カテゴリーと6つの大カテゴリーが抽出された。

・(小カテゴリーのなかで印象に残ったもの)

  →「家族成員のバランスを図った決定」家族が本人の意向も汲み、家族の成員それぞれの事情などが考慮された決定であること

   「介護態度の熟成」介護にあたって適応的な態度が家族の中で熟成されていること

   「家族の許容範囲内の予測介護負担感」家族によって予測された老健退所後の介護負担が家族の負担範囲であること

 

 老健は在宅復帰を目指した施設であることは言うまでもないが、社会や家族の事情から、すんなりと在宅介護に意向できるケースは

さほど多くはないであろう。そういった中で、様々な折り合いをつけながら、できる限り不公平さがないように、

在宅もしくは他施設に移行できるようにと尽力している様子が想像できる。在宅復帰率が高い=優秀な支援相談員ではないということを

多くの人に知ってもらいたいと思った。

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