社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

Ⅲ.小児緩和医療におけるチーム医療-「チャイルド・ライフケア・スペシャリスト(CLS)の立場から」

2012-11-27 13:57:55 | その他
早田典子『小児科診療』2012年・7月号

都内の大学病院で活動するCLSによる報告。
日本には少ないが、北米を中心にはじまり、病気の子どもとその家族の心理社会的支援を行なっているという。

引用
・わが国の小児医療の現場では、1999年にはCLSが、2006年にはホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS)が国内で活動をはじめた。現在では、合わせて30名ほどが活動をしている。

・チャイルド・ライフ・スペシャリストの役割
⇒・病室やプレイルームにおける成長・発達を促す活動の提供
 ・治癒的遊び
 ・検査や手術など診療のためのぷプレパレーション
 ・入院前の院内ツアーや情報提供
 ・診療中の支援(ディストラクション)
 ・家族支援・兄妹姉妹支援
 ・悲しみや死別に対する支援
 ・救急や外来での支援

・医療環境などにおいて心理的ダメージを未然に防ぐための遊びを「治癒的遊び」という


病棟保育士との違い、そして医療機関によっては、ソーシャルワーカーや心理士等との役割分担が問われる職種であろう。
病児のみならず、兄妹や姉妹にまでもケアの手が行き届くことを事例を通して知った。病児にとっては、親のみならず兄妹や姉妹は、自分を取り巻く環境を構成する、大切な要素のひとつである。兄妹や姉妹の精神的な健康にまで目を向けることは、全人的医療の実現からとらえると当然のことかもしれない。

CLSは日本では「子ども療養支援士」として、育成が始まっているという。講義のみならず、700時間もの研修を必要とするそうだ。どれだけの専門性を要するのか、そしてどれだけの責任を有するのか…この養成過程のプログラムをみると考えさせられる。

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Ⅱ.緩和医療として提供する内容 在宅医療・レスパイトケア 前田浩利(2012)

2012-11-26 15:12:10 | 医学
『小児科診療』2012年・7号

在宅療養支援診療所の医師が、自身の臨床経験及び調査結果を踏まえ、小児在宅緩和ケアを充実させるため課題を提起。

引用
・2007年に日本小児科学会倫理委員会が実施した調査結果より
⇒在宅療養をしている超重症児のうち、訪問診療を受けている子どもはわずか7%、訪問看護を受けている子どもは18%、ヘルパーを利用しているのは12%にすぎない。

・医療ケアが日常的に必要な子どもを在宅で支えるための諸要素
⇒1.医療的支援:訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ
 2.生活支援・介護支援:ホームヘルパーなどの介護
 3.家族のためのレスパイトケア:短期入所施設、デイサービス施設などの整備
 4.上記を適宜にコーディネートするケアコーディネーターの育成と制度化


救急医療が進歩し、成人のみならず、乳幼児の生存率も向上している。生命を重んじることに異論はないが、その先のケアについては、まだまだ未整備でおろそかであると感じる。

上記の諸要素は、子どもに限らない。しかし少なくとも高齢者に対しては、一定の数と質が保証されつつつある。ここが大きな違いであろう。
キュアからケアへ…これは私が学生時代であった15年前に、障がい者や高齢者に向けていわれていた言葉である。時を遅くして、ようやく病気や障がいを持ち子どもたちとその家族にも、その考えが向けられているのだと感じた。

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「保証人問題の解決に向けた取り組み~患者実態分析とチェックリスト作成の試みを中心に~」林祐介

2012-11-11 21:17:43 | 社会福祉学
『医療と福祉』No.92 Vol.46-1

 保証人不在の患者の特徴を明らかにし、その結果を踏まえ、ソーシャルワーカーの業務の均質化を図るためにチェックリストを作成している。
チェックリストは、筆者の勤務先である回復期リハビリテーション病棟を対象としている。これをベースに自身が所属している病院の機能に合わせ応用化できると考える。

引用
・保証人なし群は、保証人ある群と比べて、①50代と60代男性の締める割合が高い ②脳梗塞・脳出血の割合が高い ③低所得世帯の締める割合が高い
・保証人なし群に対しは(ソーシャルワーク援助の特徴として)、金銭管理支援、家賃支払支援、水道光熱費等に関わる支援、身の回り支援を行なっている


在宅療養中の人(患者)は、まずは「医者はいらん!」ということから始まることもある。必要性をコンコンと説き、関係機関に根回しをし、ようやく医療が開始されることもある。「本人が必要と感じていないなら、医療が入ることはない」という人もいる。それも一理ある。
しかし、そうすることで孤独死を招く恐れもある。孤独死のあとの、その責任の所在の有無を恐れて医療の介入うんぬんを考えていた時期もあった。恐らく、そう考えている援助する側の人はは少なくないと思う。この時に、家族がいれば問題は起こりにくい(家族が拒んで医療が開始できないこともあるが…)。

主治医の指導を無視し、店屋物を食べ続けて、入院先で生涯を閉じた糖尿病のおじちゃんがいた。「食べることが大好きな彼の、その欲望をまっとうできた幸せな人生だった」という援助者もいた。「指導を無視するのであれば、最初から医療が入る必要はなかった」という援助者もいた。援助は難しい…とつくづく思う。
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「Bereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版作成」岩本喜久子、福田裕子、廣岡佳代

2012-11-06 05:37:53 | 社会福祉学
『日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団 2011年度調査研究報告』

カナダで活用されている遺族支援アセスメントの日本語訳版の作成を報告。詳細のものは、今後学会等で発表されるとのこと。遺族支援のアセスメントツールは、未だ日本には存在していない。遺族支援のみならず、実践者たちが理解を深めるためにも、有効であろう。報告が待ち遠しい。

引用
・Stroebeらは、複雑化したグリーフを、それぞれの文化的背景から逸脱したひとつもしくは複数の症状が長期的に表出されること、と定義している。
・BRATでは、ビリーブメントリスクとして次の項目を抽出⇒
 社会資源、過去の喪失体験、コーピングスタイル、精神疾患歴、認知・知的しょう害の有無、トラウマや暴力の有無、故人との関係性、死に対する意識



以前見学をさせていただいた米国のホスピスでも、遺族支援のアセスメントツールは当然の如く存在し、患者本人への支援と同等の扱いであった。
日本では特に、一般病院で亡くなった場合は、遺族となった家族の存在は忘れ去られてしまう。
遺族はそれから何年も、生きていかなくてはいけない。生きていくための支援をきちんと実践していくことが、今後の緩和ケアの課題の中心であろう。
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「ホスピスで家族を亡くした遺族の心残りに関する探索的検討」坂口幸弘、池永昌之、田村恵子、恒藤暁

2012-11-02 14:08:46 | その他
『死の臨床』Vol.No.1 2008

ホスピスにてがんで家族を亡くした人たちは、どのような心残りを抱いているのかについて、郵送による調査を実施。共通項とより個人的な事柄を導き出している。

引用
・心残りとは?⇒(広辞苑で引用)「あとに心に残ること。思いきれないこと。残念に思うこと。未練」
・約9割が何らかの心残りを感じており、遺族にとっては心残りは一般的な心情であることが明確に示された。
・比較的共通した内容として、15のカテゴリーが分類され(中略)そのうちの11カテゴリーは、医療場面に関係する内容であり、終末期医療のありようが遺族の心残りの有無や程度に大きく関係することが推察される。
・(管理人・解釈)自責の念を感じている遺族は少なくない。家族が納得のいく介護ができるよう心理社会的にサポートすることが必要。
・(どのような選択をしたとしても)最終的な選択を支持することが大切。


人は悔いを残す。これが看取りであれば、やり直しがきかない。
医療場面で、少しでも医療者がその悔いを減らせる働きかけができれば…そのような思いが伝わった論文であった。

援助方針になかなか賛同しない家族に対して援助者は、「困難事例」「理解力不足」という烙印を押してしまうことがある。本当にそうなのか?
その人の考える力、思う力を、その人を取り巻く環境が脅かしているのかもしれない。心理社会的なサポートはそういった環境を整えることを指しているのだと痛感した。
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