社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅医療現場におけるソーシャルワーク実践」上田まゆら(2019)『ソーシャルワーク研究 Vol.45 No.3』

2019-11-10 16:16:44 | 社会福祉学
在宅療養支援診療所で活動するソーシャルワーカーさんの事例報告。
展開別に何例かの事例を紹介しており、未だ十分には理解されていない在宅医療領域でのソーシャルワーク活動について、具体的に知ることができる。

引用⇒
・2018年度の改定において、社会福祉士が退院時共同指導加算を算定できる職種として位置づけられるなど、在宅医療の現場において公的にもMSWが求められつつある。
・厚生労働省は在宅医療機関に対して、在宅医療提供体制の中で果たすことを期待している役割として①退院支援、②日常の療養支援、③急変時の対応、④看取りの4点を示している。

😄 😥 
 本論文は、私が2006年に執筆した論文「在宅医療におけるソーシャルワークの実践報告」(このブログでは、「これまでの活動」の中で紹介)を参考にしてくださった様子。
 その上で、今後の期待も込めて・・・事例紹介という面ではとても具体的で、在宅医療のSWって何?という方たちにはとても新鮮で、目から鱗が出るものかもしれない。しかし同じ領域で活動してきた者として、物足りなさを感じた。学術的に攻めなければ学問としての発展はなく、また実践者を増やすことにもつながらない。パンチの効いた研究をぜひ続けていただきたいと願う。

 2019年8月時点で、MSWの職能団体では、在宅療養支援診療所に所属するSWの実態調査をしたとのこと。かつて私が行った実態把握調査(『在宅療養支援診療所におけるソーシャルワーク援助の現状ーアンケート調査からの実態把握ー』(2010)同じく「これまでの活動」で紹介)では、わずか19の在宅療養支援診療所にしかSWがいないことが分かった。それから約10年。どのくらいのSWが活躍しているのか、とても楽しみである。
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『過去でも未来でもない「いま」と向き合う-ソーシャルワークの現場から』芦澤茂喜(2019) 月刊自治研

2019-11-09 21:23:26 | 社会福祉学
ひきこもり支援を実践しているソーシャルワーカーのインタビュー記事。
伴走支援というスタイルを獲得したプロセス、ひきこもり支援の面白さ(失礼な言い方ですが・・・)を知ることができ、とても読みやすい。

引用⇒
・よく、ひきこもりの方は家でゲームばかりしていると思われていますが、多くの当事者は一日中、ただひたすら考え続けています。(中略)今の状況でいいのか、どうすればいいんだ、どうしようもない、ということをただ繰り返し考えています。
・彼らにとっては一回のつまづきが全てです。彼らは過去に止まっています。自分がつまづいた時に何があったのか、ということをずっと言い続けます。一方、ご家族は「私たちが死んだらどうするのか」といった未来の話をします。話が噛み合うはずがない。私がするのは、過去と未来の真ん中にある「今の時間をどうするのか」という話をひたすら続けていくことです。彼らがどこでつまづいているのかを確認した上で、時計の針を再び動かせるかどうかがポイントになってきます。
・よく「ひきこもりは甘えている」と言う方がいますが、彼らが甘えられるのは家族だけ、しかも母親だけにしか甘えられない場合が多いです。逆に言えば、母親以外の人間に甘えることができれば、事は動いてきます。そうなれば、後は早いです。
・彼らが「困った」と言えば、「困ったね。じゃ、どうする?」と言う。それだけです。最終的には、彼らがどうにかすることなので。

😊 😊 
 おそらくこのスタイルに行き着くまでは、たやすい道のりではなかったのだろうとは思うのだが、「こんなにシンプルな方法で、支援が円滑にいくんだ」と目から鱗が出る。
 公的な職場であるため、おそらくいろんな意見のなかでの業務だとは思う。しかし、当事者には「支援者」ではなく「芦澤さん」という存在と見られている、というくだりについては、ものすごくナチュラルで羨ましいと思った。
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「生活現場の活動者たち 地域をつなぐ10の物語」金早雪ほか(2019)

2019-11-03 09:04:25 | その他
 信州大学大学院からの報告。
地域を活動基盤として実践をされていきた方々の研究報告をまとめている。
発達障害、うつ病者の復職支援、ひきこもり、死別、多文化共生など、多方面の「いま」を知ることができる。

引用⇒
・ひきこもり支援の章より
 私は「ひきこもり」を解決し、私との関係を終結させることを目指すのではなく、関係の継続を目指すことにした。また、過去に原因を求め、彼らの未来を考えるのではなく、今に目に向けることにした。戻ってこない過去でも、分からない未来でもなく、大事なことは今であり、今の繰り返しが未来につながると考えることにした。

・多文化共生の章より
 日本国籍の子どもの場合、保護者には、就学させる義務がある。しかし、外国籍の子どもの場合は保護者に日本の学校へ就学させるかどうかの選択肢があるため、不就学という選択もありうる。

😲 😊 
 知っているようで、内情をしらないことはよくある。
社会福祉領域では特に、自分の実践領域と重なり合う他領域については、知っている気持ちでいるが、実は違う内情があったと気付かされることがある。
本書はそんなことを気付かせてくれ、そして見地を広げてくれる。
 多くの実践者たちが、自分の実践領域に誇りをもち、そして客観的にみれる機会を持てればと願う。
 
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