社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「死別の悲しみに向き合う」トーマス・アティッグ/林大・訳/平山正実・解説

2012-04-26 10:00:45 | 哲学
筆者は、死別、悲嘆研究に20年以上取り組んでいる哲学者。
「悲しむ営みを、世界を学びなおす営みと捉える」をベースとし、死、死別、悲しむことについて論じている。
本書は解説が秀逸で、本編では読み取りにくかったことを中心に、理解を深めることができた。解説だけでも、一読の価値があると感じた。

引用
・悲しむ営み(grieving)と悼む営み(morning)という用語で、死別に適応しようとする過程をさす。
・悲しむ営みと悼む営みは、誰かを亡くしたとき人生に起こる喪失と混乱に対処する反応である。
・悲しむ営みは、重大な喪失体験への対処反応をさすこともあるが、悼む営みは誰かに死なれたときの反応だけをさす。

解説より…
・本書では、死別は「死による喪失がひきおこす状態」をさすと定義されている。
・この本では悲しみの現象の記述や悲しみの経過分析、あるいは、悲しむ人々の心理の解明を目的とするのではなく、死別の苦しみにどう対処し、どうのりこえてゆくかということが、メイン・テーマとなっている。



死別、喪失、悲嘆…日本でグリーフと言われている言葉は、学者によって定義が少し異なり、そして視点も異なる。どれがよくてどれが間違えで…ということではなく、「どの捉え方が自分たちらしいのか」という着目の仕方が良いのかもしれない。

アティッグは、まずは人間の弱さを認めるところからはじめなければ、喪の作業は始まらないと説いている。
弱くていい、悲しんでいい、泣いていい、取り乱していい。そういうメッセージを支援者が伝えていくことが、グリーフケアの始まりだと感じた。


死別の悲しみに向きあう
クリエーター情報なし
大月書店
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今日のノート 「役に立てる」(読売新聞 4月17日朝刊)

2012-04-17 10:16:58 | その他
一般紙のコラム。
社会福祉士を目指す大学生向けに、現場を知るためのプロジェクトが被災地で行われた。その紹介。

プロジェクトに参加した大学生のコメント…(病院で働く社会福祉士から、在宅療養の人や独居老人などへの支援を続けたという話を聞き)「住民の生活歴などを知っていればこそ。無くてはならない仕事だと実感しました」


ソーシャルワーカー(社会福祉士)は無くてはならない仕事…米国やドイツに住む友人からは言われたことがあるが、日本では未だによく知られていないであろう職種。しかしこの記事から、日本における認識も変わっていくのかもしれないと思い、嬉しくなった。

先の診療報酬改定でも、社会福祉士の働きが認められ、加算の対象となった。
声を出していくことが、評価の対象になるのだと、あらためて思う。
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「バトンタッチ方式で行った福祉避難所の災害支援活動の報告」山田美代子

2012-04-16 20:43:48 | 社会福祉学
『医療と福祉』No.91 Vol.45-2

東日本大震災後に、宮城県石巻市に置かれた福祉避難所でのソーシャルワーク援助の報告。
多くのソーシャルワーカーがバトンタッチで役割を果たした記録であり、災害支援におけるソーシャルワークのあり方をも示している。

引用
・ソーシャルワーカーは、災害に学び、前に進まねばならない。なぜならば、ソーシャルワーカーには、人の尊厳の尊重と社会正義を拠り所とした社会的機能があり、その役割を果たさねばならないからだ。
・福祉避難所の医療ソーシャルワーカーの業務
 ⇒1.入所者のインテーク面接
  2.個別ニーズに対するケースワーク
  3.対処を含めた今後の生活再建に対する支援
  4.各種災害救助法上の手続き支援
  5.災害に特化したグリーフワーク的支援
  6.福祉避難所の運営への参画
  7.ケースカンファレンス訪問
  8.地域連携
  9.その他
・ソーシャルワーカーが行うグリーフケアは、クライエントが社会関係の中で具体的な課題取り組みができるようにさまざまなきっかけ作りを支援することである


被災地では、今もなお、様々な専門職が支援を継続している。ソーシャルワーカーもその一職種であるが、医師や看護師、保健師などと比べ、認知度は低く、活動実態も紹介される頻度が少ない。
この論文を読み、継続的にそして具体的に(…表現が稚拙だが)支援を展開していることに驚き、そして同じ職種であることを誇りに思った。

今後も支援は続けられる。ありきたりの言葉であるが、他職種と協働し、多くの被災者に向きあう姿勢は、今後の災害支援、災害時ソーシャルワークに必ず活かされると思う。

東日本大震災被災者数:死者15,856人、行方不明者3,070人(4月11日現在) 避難・転居者344,477人(4月5日現在)

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弔いの共同体 人つなぐ(読売新聞 2012年4月6日 朝刊)

2012-04-09 09:45:47 | その他
葬送の本来のあり方が、東日本大震災をきっかけに見直されているという。
その現状を取り上げている記事。

引用
・(石巻市で合同葬儀を行った住職の言葉)「葬儀は亡くなった事実を認め、弔い、残された者が生きていくきっかけになった。一緒に弔うことで葬儀が地域をつなげる役割を果たしていることも実感した。」



葬儀は「死」の事実を周りの人に知らせ、そして残された家族もそれを受け入れるためのひとつの節目になるものだと、多くのグリーフケアの先駆者も指摘している。
葬祭業者任せではなく、僧侶主導で行い、地域でそして家族で死者を送り出すことに重きを置いている地域もあるそうだ。

母方の祖母が亡くなった時、自宅で葬儀を行い、弔問客の相手は、いわゆる隣組の方々がおこなっていた。
女手ひとつで3人の子を育て上げ、60歳を過ぎてからようやく建てたマイホームでの葬儀は、
家族のみならず、地域をあげての「お見送り」であった。

弔いの共同体とは、そういうことを指すのだと、実感した。



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6年目に入ります

2012-04-09 09:37:29 | ごあいさつ
育児と家事の合間に、自分の頭を整理しようという気持ちから始めたこのブログですが、
早いもので丸5年が過ぎました!

当初は一日2~3件のアクセスでしたが、
ここ最近は70件以上のアクセスをしていただき、
トータル87000アクセスを越えました

このブログを通して、
とある事業所のプロジェクトにも参加することができ、
学生さんの卒業論文のほんの少しのお手伝いもでき、
さまざまな職種の方との意見交換もできました。

私の関心は、在宅医療という幅をこえ、
ホスピス緩和、そしてグリーフケアにもなりましたが、
根っこにあるのは「在宅でSWやってます!」と大きな声で言える社会にしたい。
そして、生きたい場所で、最期を迎えたい場所で、誰もが心地良く暮らせる社会にしたい。
という思いです。

いつもアクセスしてくださって、ありがとうございます。
そしてはじめてアクセスしてくださったかたも、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします
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