『人間福祉学会誌』 第20巻
介護福祉現場における介護支援機器について、その導入の促進要因・阻害要因を明らかにするため、インタビュー調査を実施し、
結果をまとめている。国が導入を推奨する目的と、施設や職員が介護支援機器に求める役割に違いがあることが確認できた。
引用
・本研究における介護支援機器の定義:厚生労働省が示している介護ロボットの定義(中略)を参考に、そこに移乗支援系を加えた 4つ
(A:移乗リフト、B:スライディングシート・ボード、C:見守りセンサー、D:重量センサー)に
分類。また「介護ロボット」を含む、利用者の自立支援や介護者の負担軽減につながる介護機器も
対象。
・本来、介護福祉現場での業務はサービス業であるため、生産性や効率性を重視するのでは無く、ホスピタリティを最も大切にする場所のはず
である。介護保険導入やユニットケアの推奨などにより、個別性を尊重した生活支援の考えが浸透しつつあるが、多くの現場では、限られ
た時間や職員数の中で業務をこなす状況となり、その結果、「おむつ交換が早く行える」「限られた時間の中で一人でも多くの人が入浴でき
る」など、素早さや効率化が優先されている状況が根強いと思われる。
・(調査結果より)介護支援機器導入を促進する要因は《職員の課題改善》《事故防止》などが多いことから、介護福祉職員の業務に焦点が
置かれて割合が高いといえる。(中略)。導入の阻害している要因として《非効率》《金銭的理由》が挙げられている。
私が20数年前に障害者施設で介護をしていた時は、移乗リフトがトイレ、共有スペースなどに置かれており、使用することに抵抗はなかった。
そして入居されていた方も、抵抗なく受け入れていたように思う。「よっこらしょ」という言葉ではなく、他愛のない話をしながら、車いすから
便座に移ったり、車いすからベットに移ったり、目線が変わる瞬間に窓の外を一緒に見ながら「雨だね」とか「日差しがまぶしい」とか、そう
いった言葉があったと記憶している。
しかし一方で、すべての入居者に使うものではないから、使わない時の置き場所や、いざ使うときに適切な場所に運んでくるときの
手間を考えると、結局無いものとして介助した方が楽…これも率直な意見であろう。
介護支援機器の本来の目的はそうではないのかもしれないが、介護職に健康な身体で長く従事してもらうための策として、
よりよく活用してもらいたいと願う。