社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「緩和ケアにおける臨床心理士-心理士に出来ること、求められること」 垂見明子(2009)

2010-01-27 06:58:44 | その他
『現代のエスプリ498 臨床心理士の仕事』

病院に勤務する臨床心理士による、実践報告。
進行期にあるがん患者、終末期にあるがん患者、各々のかかわりについて報告している。

引用
進行期がん患者への関わり…社会的サポートや精神的サポートが必要だと思われる人が、医師や看護師から紹介されてくる。
緩和・腫瘍治療病棟において週に1回、「気持のつらさ」を患者さんに評価してもらうための質問紙を配布し、評価が高い人には必ず一度は会うようにしている。

終末期がん患者への関わり…ホスピス病棟に入院中の患者さん、ご家族が対象。基本的には病棟全室に週に1回、話を伺うことにしている。患者さん本人に関われることは進行期ほど多くなく、ご家族への関わりが主体となることもある。


筆者は、緩和ケアチームの一員として、入院患者・外来患者に関わっているとのこと。同チームにはSWもいるとのことだが、どのような役割分担をされているのかは不明。特に「社会的ニーズへの対応」も心理士さんがされているとのことで、ではSWは?と余計に気になった。
外来患者さんへは、次回通院日までに日が空いてしまう場合、電話連絡で気持ちのつらさを評価し、必要に応じて精神科医につなげる…という事例紹介があった。
外来患者へのサポートをどのように行うかが、専門病院や急性期病院の課題となっているとよく聞くが、このようなやりかたが定着できれば、「退院後の孤独感」「見放された感」は少なくなるだろうと感じた。それにはやはり、人員の確保が前提。問題解決の根底には、人員の問題が絡んでいることを痛感した。



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「医療ソーシャルワーカーの職務に対する評価」楠本順子、川崎浩二、高山巌

2010-01-23 21:01:28 | 社会福祉学
『日本医療マネジメント学会雑誌』VOL.9,No.3,2008

病院における医療ソーシャルワーカーの職務に対する、医療職(医師、看護師)、事務職による他職種評価。ならびに医療ソーシャルワーカー自身の評価についての調査論文。
事務職を隣接職種ととらえ、調査対象に加えた点が興味深かった。

【調査結果】
医療職と比較し、事務職は医療ソーシャルワーカーへの評価は低い
⇒筆者は、協働の場面が少なく、職務への理解が低いことが一因ではないかと分析。

「心理・社会的問題解決調整援助」について、医療ソーシャルワーカー自らの評価と、医療職、事務職の評価に差があった。

「退院援助」について、医療ソーシャルワーカー自らと医療職の評価は、近いものであった(高評価であった)。

医療ソーシャルワーカーに対する「理想と現実」に関する調査結果
⇒・関連学会に所属している
 ・実践をもとにして論文を書くこともある
-上記2点が、「理想」と「現実」の差がもっとも大きかった(本当はそうしたいけど、できていないということ)

引用
アメリカ病院協会
「退院援助とは、患者とその家族が退院後の適切なケア・プランをつくるのを助けるために利用可能でなくてはならない部門を超えた病院全体のプロセスである」



ソーシャルワーカーの専門性の看板とも言うべき「心理社会的問題への対応」は、他職種に浸透していないことがあらためて分かった。
同時に、研究活動等への参加が現実的には「したくてもできない」ということが、他職種に職務を示す機会を失っていることにつながっているように感じる。
実践と研究がうまくかみ合っていない、とても残念な現状があらわになってしまった。

実践者は「社会福祉援助」を日々重ねており、本来は研究の先端にあるべき存在であろう。
言葉にするのはたやすいことではなく、「科学的根拠に基づいて発信する」ことは本当に難しい。
でも、「いま、求められていること」「いま、しなければならないこと」を一番に分かっているのは、現場の実践者たちだと思う。
実践者たちを後押しできる体制をつくる…それが今の社会福祉全体の大きな課題なのかもしれない。




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「地域連携パスで開業医が果たす役割-疾患を地域で診るために-」 岡田晋吾

2010-01-20 20:38:51 | 医学
『がん医療マネジメント研究会』NEWS LETTER 10(2008年4月)

青森県の開業医に対するインタビューをもとに、地域連携パスの有用性を説明。
開業医という立場からどのように活用し、そして普及させていくかを述べている。

引用
・大都市圏を除けば、地域にそう多くの専門医がいるわけではない。そのため、どこがどの部分を担うのか、というネットワークつくりのツールとして、地域連携パスが有効である。
・連携パスの作成・運用にあたって重要となるのは、「顔の見える関係を築くこと」である。


「疾患を地域で診る」というサブタイトルに少し違和感があったが、「疾患を悪化させない」「うまくコントロールしていく」ために、地域の医療機関が情報を共有する…ということであると解釈できた。
「地域連携パス」「地域連携クリニカルパス」は、自治体レベルで、職能団体レベルで、医療機関レベルで、様々な形態で開発され普及し始めている。

単に必要項目を「埋める」のではなく、それをどのように活かし、地域住民(患者さん、ご家族)に反映させていくかが大切だと感じた。

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『要介護高齢者のケアプロセスにおける役割-「ケアを受ける側」の視点からの質的データ分析』 稲葉美由紀

2010-01-15 06:42:09 | 社会福祉学
『社会福祉学』第49巻第4号 2009

高齢者がケアを受ける立場になった時に、それをどのように受け入れ、対処しているのか。
15人の要介護高齢者及び、5人の家族介護者に対するインタビュー調査を行っている。

高齢者の「生の声」を通じて、いかにして「やりくりしているか」を知ることができ、高齢者の「気持ち」に寄り添う時の参考になる点が多い。

引用
・老後に対して、15人中12人が「考えたことがない」と回答。「家族に任せる」という言葉もあった。
・ケアを受ける要介護高齢者が取り組める役割
①ケアを受ける側として精神的に前向きの姿勢をもつこと
②セルフケアに関する取り組み
③ケアプロセスにおける要介護者から介護者への支援



「世話をしてもらっているかわりに、外食に行った時には支払いをする」、「伝えたいことを忘れないように、前もってメモをしておく」などなど、要介護高齢者の言動にはきちんと意図がある。それを「当たり前」と受けとるか、「その人なりのコミュニケーション方法」と受けとるかで、支援者の声かけにも変化が出るだろう。

筆者は研究結果を踏まえて、「ケアを受けるための教室」「ケアをする人・受ける人のコミュニケーション技法」などの勉強会の開催が必要と提案しているが、「どのように最期を迎えたいか」という心構えを提案していくことも必要だろう。
医療処置や生活の場の選択を「家族に任せる」ことは、「家族に負担を課す」ことにつながることもある。そして何よりも、「どのように最期を迎えたいか」を意識づけることは、自分の人生、最期の最期まで、自分らしく生き続けてもらうための支援につながると思う。
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