ひきこもり生活をしている人たちへの支援活動をしてる筆者の、2冊目の活動録。
事例を通して、当事者やその家族とのやりとりが具体的に紹介されている。
スムーズにいく(支援者にとって困難とは感じない…)ことが少ないのが、ソーシャルワーク実践ではあるが、
そのプロセスにおいて、支援者側も変わっていく必要があることを気づかせてくれる。
平たい文章で書かれており、とても読みやすい印象を受けた。
引用
・相談を受けると、もっと早く相談に来れば良かったと話す家族に出会います。相談行動を早く取らなかった自身の行動を責めるように話す家族がいます。私はそのような家族に、①相談に至るまでの期間は家族が本人と向き合い、格闘した大事な期間であること、②今回、相談行動を取れたのはそれが家族にとっての良いタイミングだったことを話し、③家族が相談行動を取ってくれたことで本人と出会う機会を持てることへの感謝を伝えることにしています。
・私は本人が将来の不安を話した時、「大丈夫」と返すことにしています。「根拠は?」と聞かれたら、「根拠はありません。でも、私は大丈夫だと思います。」と答えています。根拠がないのに、なぜ大丈夫と言えるのか?無責任ではないのか?そんな疑問も出てくると思います。ただ、私はこう思います。大丈夫だという根拠なんて、そもそもない。それを根拠だと言っても、本当にそれが根拠になるのかは時間が経ってみないと分からない。大丈夫という根拠がなければ、大丈夫ではないという根拠もない。根拠が両方ないのであれば、無責任でも大丈夫と思っていた方が良いと。
「相談を中断させない」ことの重要性を前書でも記していたが、それに加え本書では、「ゴールをつくらない」「ひきこもった原因をわかろうとしない」ということも記している。そして「根拠のない大丈夫」という声かけは、筆者が実践から得た(体得した/体感した)、もしくはソーシャルワーク実践のもがきから生まれた、当事者への最大級のエールを表現した「言葉」であると、感じた。