社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ヤングケアラー-介護を担う子ども・若者の現実」 澁谷智子(2018)中公新書

2019-01-30 14:45:42 | その他
 介護を担う子ども・若者に焦点をあて、先進国のイギリスの取り組みを紹介。また、日本での現状と課題について詳細にまとめている。
 福祉職以外にも、もちろんのこと、教育を専門とする方にもおおいに役に立つ本。

引用
・ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」と定義。
・(日本における調査結果から。学校生活との両立について)ヤングケアラーたちは、最初のうちはがんばっていても、ケアが長期化するうちに、これ以上は無理だと学校生活を諦めていく場合が少なくない。
・子どものサポートにあたっては、何かを見るちう視線が重要になるといる。ヤングケアラーではない、被虐待児ではないか、障がい児ではないか、貧困問題を抱えていないか、といった視線である。
・ヤングケアラーや若者ケアラーは、その知識や経験や人間関係がまだ限られているために、自分の状況を言葉として認識すること自体、難しくなっている面もある。
・(イギリスヤングケアラー支援者のコメントより)私が福祉専門職に対してよく問うのは、「もし、ケアを要するその人が一人暮らしだったらどうするの?」という質問。もし一人暮らしだったら、ありとあらゆるサービスをつぎ込むはず。子どもがいるというそれだけの理由で、未成年の子どもを「ケア・パッケージ」のなかに入れて考えるのはおかしい。

・多様な介護者をひとくくりにして、介護にかける時間が長い人を優先的にサポートしていくシステムでは、いつまで経ってもヤングケアラーにサポートは届かない。ケアを担う子どもや若者の置かれている状況を、中高年や高齢者のケアラーを基準に測ってしまうことには、注意が必要になってくると思われる。


 介護離職ゼロを掲げ、国は介護支援体制の整備に躍起になっているが、現場から見ると全く状況は変わっておらず、「まずは介護職離職ゼロだろう」と言いたくなる。
 高齢者が増え、必然的に介護の担い手が必要となる。そしてそれが学齢期に子どもにまで影響が出てしまっていることに、本当に唖然としてしまう。
 限りなく広がる可能性を持つ子どもたちの未来をどのように保障してあげられるのか。いろいろと考えさせられた。


ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社
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「ソーシャルワーク実践研究の目的」 副田あけみ(2018)

2019-01-07 14:08:13 | 社会福祉学
『福祉社会学研究 15』

 主にご自身のこれまでの研究活動をまとめ、報告している。
 近年は高齢者虐待防止のためのプログラム開発に尽力されているが、今後は「クライエント・バイオレンス」に関する研究をされる予定との報告。


引用
・クライエント・バイオレンスは、クライエントやその家族による、言葉の暴力、脅し、物理的攻撃、器物損傷(職場の備品やワーカー個人の所有物の損傷)を指す。
・支援者の安全が守られて、安心して仕事に携わることができてこそ、クライエント/利用者やその家族と関係をつくり、支援を行っていくことができる。


 支援者が守られてこそ、支援は継続でき、質も保障されるのだとあらためて考えさせられた。
 社会福祉の実践者は、研究と実践の両輪がうまく噛み合ってこそ、両者の質が維持できると個人的に思っている。私は実践者を経て大学院で研究(方法)を学び、再び実践の場にいる。
そのため、大学院時代の友人は実践者→研究→実践者+研究者というスタイルをとっている人も多い。中には研究活動を否定され、実践の場である福祉の現場で、援助活動を阻害されているという話も聞く。
福祉サービスの質の向上には振り返りが必要不可欠であり、研究活動は大いに有効な手段である。その必要性と意義を、より多くの人に感じてもらいたいと思っている。
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