社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「カツオが磯野家を片づける日 後悔しない『親の家』の片づけ入門」渡部亜矢(2016)

2016-05-19 09:49:07 | その他
老親が住む実家の片づけ方法、遺産相続の手続きなど、親しみのあるキャラクターを用いて分かりやすく解説している。

引用
・物がなかった大変な時代を過ごし、物のあることが豊かさの象徴だった高度成長期を過ごした世代は、物を捨てることに罪悪感を抱きます。
・親世代は学校や職場で協調性を求められた世代です。(中略)特に女性は、「自分がどうしたいか」よりも「家族のため」を優先して生きてきている方が多いので、高齢になってからいきなり、どんな暮らしがしたいかとか、自分らしくとか言われても、戸惑う人が多いのです。


終活という言葉がブームとなり、空き家対策や相続に関する法律も整備されてきている。
分かってはいるものの、うまく伝えられないのが実の親子関係で、親世代を客観的に理解するうえで大いに役に立つように思える。

また相続に関する事柄については、高齢者へのケアを提供する専門家として、ここは知っておいたほうが自分の知識の引き出しが増えるだろうな、ということについて、
分かりやすくまとめてあった。

カツオが磯野家を片づける日 後悔しない「親の家」片づけ入門 (SB新書)
クリエーター情報なし
SBクリエイティブ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「日本人遺族における宗教性と悲嘆、抑うつとの関連」坂口幸弘(2016)

2016-05-06 14:18:55 | 心理学
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究 J-HOPE3』付帯研究9

 日本人遺族における宗教活動や死後観を明らかにするとともに、死別後の悲嘆や抑うつとの関連を検討することを目的に、質問紙調査を実施している。

引用
・20~40歳代の比較的若い世代において、特定の宗教をもたず、宗教活動をしていない人の割合が、上の世代に比べて相対的に大きいことを示された。
・死後観に関しては、各世代を通じて7割前後の遺族が肉体は死んでも魂は残ると考えており、特定の宗教をもたない遺族においても約6割がそのような考えをもっていた。
・回答者全体において、複雑性悲嘆の可能性が高いと評定された遺族は13.9%であり、大うつ病性障害の疑いがあると判断された遺族は17.2%であった。
 *大うつ病性障害→一般的に、うつ病と呼ばれているもの。


 特定の宗教をもたない世代が増えている中で、「死別をどのように感じているのか?」「どのような悲嘆ケアが有効か?」そんな疑問から本論を読んだ。
宗教によって弔いの儀式は様々で、それを十分に理解したうえでケアを提供することは、決して容易ではない。
よかれと思った声掛けが、「的がずれている」と受け取られてしまうこともありうる。
特定の宗教を持たないからといって、悲嘆に暮れるとは限らず、一方で信仰する宗教があるから救われるとは限らない。
その人がいま、別れの状況をどう感じ、何に痛みを感じているか。まずはそこに耳を傾ける必要があるのだろう…当たり前のことだが、難しい…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ホスピス・緩和ケア病棟の遺族ケアに関する研究」 北得美佐子(2016)

2016-05-02 09:58:37 | これまでの活動
『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究3 J‐HOPE3』(公財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団

共同研究者という立場で、分析等の作業にかかわらせていただきました

ホスピス・緩和ケア病棟で家族を亡くされたご遺族1021名に対し調査を実施し、707名から回答を得た。
「死別後の入浴ケア」「カードや手紙の送付」「追悼会」に対するケアについて、ご遺族からの評価と今後の課題を提起している。

引用
・『死別後の入浴ケア』の経験者は9.0%であったが、85.7%は参加への満足を「そう思う」と示した。
・『カードや手紙』は56.7%が受け取り、「家族の悲しみを癒す心遣いであった」と61.6%感じ、「気にかけてくれる」と42.2%が良い反応を示した。
・『追悼会」は6.9%が参加し、看護師や他の遺族との会話を90.0%が「よかったこと」と示した。

・改善点として、遺族ケアの実施時期や連絡方法、家族への目的や方法の説明、医療者の関わり方について、より明確な指標を明らかにする必要があると示された。


よかれと思って提供したケアであっても、それは「押しつけ」であっては決してならないし、かといって「待ち」の姿勢だけではいけない。
各々の家族の生活形態や気持ちのリズムを感じ、良いタイミングで提供しないと、それはケア提供者の自己満足にとどまってしまう。
本当に難しい…でも必要としてる人は多くいる。
試行錯誤、手探り。ケア提供者も研究者も、逃げ出さずに取り組むことが本当に大切。そう思う。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする