社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「高齢者における感謝の対象-対人関係の中あるいはそれ以外で生起する感謝の検討-」小野真由子ら(2023)

2024-06-22 10:31:45 | 看護学

『応用老年学』第17巻第1号

高齢者の感謝の対象を明らかにするために、半構造化面接を実施。人生の最終段階にある高齢期で、感謝の対象を通してどのよう充足感を覚えか…

などを分析している。読み物としては難しいが、ぜひ高齢者にケアを提供している支援者に読んで欲しい。

 

引用

・感謝は(中略)良好な人間関係にも寄与する心理として位置づけられている。

・(注:文献を引用し)老年的超越は、高齢者がそれまで持っていた物質的で合理的な見方が、宇宙的、超越的な見方へと変化していくことを示

 し、人生満足度を向上させるという。

・感謝は、高齢者の豊かな人生を支える非常に重要な心理であると言える。

・(調査結果より)高齢者の感謝の対象は、自分から他者への利益、また自分に関係する個々の出来事や環境から人生全体へと広がっていること

 がわかった。背景として利他的、心理社会的発達など様々な要因の影響が示唆された。

 

支援者に攻撃的な態度や口調を示す高齢者。いつも「おかげさまで」と口にする高齢者。穏やかな生活を過ごせているのはどちらであろうか?

心穏やかに…という面で考えると、後者であると考える。では、その2者の違いは何であろうか。

生育環境、人とのつながり、財力…きっとたくさんの事柄がその人を形成しているのだと思う。

できればより多くのひとが、心穏やかに晩年を過ごせればと思う。そのために支援者は何ができるのか?

その答えを出すことに、この論文は一助になると感じている。

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「自殺企図後のうつ病患者の企図前・後における感情および状況の分析」長田泰子、長谷川雅美(2013)

2024-04-10 20:19:28 | 看護学

副題:ナラティブ・アプローチによる語りから

『日本精神保健看護学会誌』 Vol.22 No.1

 

自殺企図後のうつ病患者(11名)を対象に、非構造化インタビューを実施。自殺企図前後の感情と状況を丁寧に分析し、まとめている。

 

引用

・本研究における「自殺企図」の定義…「自殺とはどういう行為かを知っている者が、自らの意志で死を求め、致死的な手段・方法を用いて自らの

 命を絶とうとすること」

・インタビュー結果より。自殺に至るまでの感情

  【生への絶望感】<病気がよくならなかった> 

  【自殺の衝動】<死ぬしかないと思った>…死ぬ前に電話しておいでって言う人もいるんだけど、本当にそうなると、携帯電話なんかそこに

    持っていかないですね。相談とかできない。

・分析により明らかになったこと⇒参加者は、自殺が未遂に終わったため、精神科病棟での入院治療を受けていた。しかし入院中、あるいは退院

 後の外来受診の場においても、強い自殺念慮が続いていることや今回の自殺の原因については、主治医をはじめとした医療スタッフに対し、本

 音を語っておらず、【医療者への隠された本音】が存在することが明らかになった。

  ⇒医師や看護師のみでなく臨床心理士やソーシャルワーカーなど多職種が連携して自殺未遂者の評価を行い、それに基づいた支援を包括的に 

   行うことが求められ、組織的介入の必要性が示唆された。

 

最近まで担当していた方は精神疾患があり、季節の変わり目ということもあったのか不安定な時期が長く続いたため、何かの参考になればと本論

文を手にした。

主治医である精神科医は、「傾聴」を重んじ、そのクリニックの精神保健福祉士さんは「医師が本人に伝えたところをカルテで確認すると…」が

常で、誰がその方に向き合っているのだろうか…と愕然とさせられた場面を何度か経験した。その方は複数の内科的疾患を持ち、「治らないのに

薬をたくさん飲まないといけない」という残酷さに、打ちのめされていた。複数の医療機関、複数のサービス事業所が関わることのメリットを見

い出せぬまま、なんともモヤモヤしていた。

包括的に…多面的に…というケアのかじ取りを、だれがどのように行うのか。それは本当に難しい、と実感している。

 

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「独居高齢者の自己決定権に基づいた退院支援の一考察」福田順子、他(2018)『日本看護倫理学会誌』

2023-09-17 10:18:04 | 看護学

1事例を深く掘り下げた実践報告論文。自己決定について、丁寧に説明されている。

引用

・介護に対する思考にはジェンダー差が存在し、女性特有の「介護の現実思考」と男性特有の「家族一体規範」があること、そして、両者の視点がよりよい形での「家族一体」を作り上げ、高齢者の自己決定をサポートする一助となることが示唆された。

 

本論文内には、「傾聴」「自己決定」「尊厳」という言葉がよく登場する。

病棟看護師としての専門性(立場)を退院支援にいかに生かすか、その“もがき”、“迷い”を感じ取れた。

地域でケアマネージャーとして働く立場から読むと、「本人が望んだからと言って、その気持ちだけで送り出すなんて…」と、

モヤモヤする部分もある。おそらく退院支援には、もっとたくさんの院内や地域の専門職が関わっていたであろう。

退院のその1週間後、個人的にはそこがとても気になった。

 

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「人生の最終段階に向けた医療・ケアの話し合い経験の関連要因ー埼玉県A市における横断的調査の結果から―」山口乃生子、他(2023)

2023-06-14 16:18:24 | 看護学

『日本エンドオブライフケア学会誌』Vol.7,No.1

死が間近に迫ったとき、もしくは意思表示ができない状態になったとき。そんな「もしも」の時に備えて、家族間で話し合いをしているのか?

もししているのであれば、何がきっかけとなって話し合いをしたのか等の要因を明確にすることを目的としている。

調査方法は、20代から80代以上の地域住民を対象とした質問紙調査である。

*本研究における「もしも」の時の定義、「例えば事故や病気などで死が近い時、あるいは自分の意思を誰かに伝えることができなくなった時」

 

引用

・(管理者 注「死を考える経験」←身近な人が病気になった、大きなけがをした等 を糸口に)その経験が話し合いの糸口となる可能性がある。

・家族と意見が異なる時、「話に触れない」ことが話し合い経験に負の関連を示した。

・話し合い経験に関連する要因⇒話し合いの必要性の認識、死を考える経験、代理意思決定者の選定、書面への記載、かかりつけ医の決定、

               意見が異なる時でも話ができるよう関わること

 

「痛いのは嫌だから、必要以上の注射とか点滴はしなくていい」「口から食べられなくなったら、自然に任せて欲しい」

…一見あいまいに聞こえる意思表示かもしれないが、こういったささいな事がきっかけで、本腰を入れて話を詰めることにつながることもある。

「子どもたちのいいように」とか「あなたに任せる」といった意思表示が、周りの人を苦しめることも少なくないように思う。

元気なうちに、とは言っても実感がわかないと何を話していいのかすら分からない。

そのため、誕生日にとか、結婚記念日にとか、その人の大きな節目に、

支援者があえて「もしもの時のことを話してみませんか?」と切り出してもいいのでは?と思った。

 

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「自治体の保健師に求められるジェネラリストとしての専門性-チームで対応した事例による考察-」崎村詩織(2018)

2023-05-28 12:57:31 | 看護学

『保健医療科学』2018 Vo.l67 No.4

 

保健師の専門性のひとつとして、ジェネラリストとしての側面があるということを事例を通して考察している。

活動実態が見えにくい、自治体の保健師の活動について、分かりやすく紹介している。

 *管理人 注:ジェネラリストとは?幅広い知識を持つ人のこと。

 

引用

・保健師が事例のケースマネージャーを担った理由を考察すると、保健師は公務員かつ専門職という立場であるため、事例および関係機関から、

 高い信頼性を得られたためではないかと考える。

・保健師は直接支援(個別ケースワーク)において、各分野に精通すると同時に、事例のケースマネージャーとして、医学的かつ予防的な側面か

 ら事例をアセスメントし、事例の問題解決のために、当事者・関係者にとっての最適な状況を見つけ、解決をリードする、つまり、ジェネラリ

 ストとしてのマネジメント能力が求められていると考える。

 

 問題が複雑化し、支援機関が多岐にわたるケースについては、「責任の所在」が見え隠れする。

本論文では、その責任の所在を自治体の保健師さんが受けてくれている、そのように感じた。

でもそれは保健師さんだからなのか?行政の人だからか?このあたりはとてもデリケートで、保健師という資格でなくとも、

精神保健福祉士や社会福祉士であっても、行政の人であれば対応できる部分なのでは?という疑問が拭えない。

保健師さんとしての専門的知見…「医学的かつ予防的な側面から事例をアセスメントする」という部分をもっともっと掘り下げてもらえれば、

他職種からの理解が深まるのではないかと感じた。

 

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「地域包括支援センター保健師の専門性に関する研究ーテキストマイニング分析を用いた内容分析からー」古賀佳代子、他(2020)

2023-05-24 19:53:11 | 看護学

『日農医誌 68巻5号 2020.1』

地域包括支援保健師の専門性を明らかにするため、半構成的面接法を用いて調査している。

 

引用

・地域包括には3つの職種が配置されており、保健師は保健医療、社会福祉士はソーシャルワーク、主任介護支援専門員はケアマネジメント等、

 専門性を発揮することが期待されている。

・今回のインタビューから、住民の生活に入り込み医療的知識を活用しながら予防的に関わり、包括的に保健指導を行うことが求められていた。

・(調査結果から)地域包括保健師の専門性として、「相談を受け、関係性を大事にし。判断する能力」、「認知症高齢者や精神疾患、医学的知

  識、在宅生活を知ることが必要」、「介護予防事業の支援」、「保健師が訪問やサロンに行って皆と一緒に活動」「地域で包括的に保健指導

  等の活動が求められる仕事」の5クラスターが抽出された。

 

 私の勤務している地域包括支援センターには、この4月から新卒の保健師さんが在職している。

本研究で抽出された専門性について、新卒で一人職場にいる彼女がどこまで遂行できるのか?というのが率直な感想である。

専門性として抽出された事柄は、他職種である立場から見るととても曖昧で、保健師さんじゃなくてもやっている/できるのでは?という思いを

抱いてしまう。

「地域で包括的に保健指導等の活動が求められる仕事」がもう少し具体的に表現され、職能教育に応用されれば、

新卒の保健師さんも自信をもって地域で活動できるのではないかと思う。

 

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「終末期がん患者の看取り時に死の文化的特性である ヌジファを取り入れた家族ケア」謝花小百合 、大城真理子ら(2022)

2023-04-08 14:20:36 | 看護学

『沖縄県立看護大学紀要第23号』

終末期がん患者の看取りを経験した看護師を対象に、インタビュー調査を実施。沖縄独自の文化的特性を取り入れた看取り支援について、考察を深めている。死を取り巻くことについて、地域ごとの特性があることをあらためて知らされた。また、インタビュー解答には具体的な様式が紹介されており、大変興味深い。

 

引用

・沖縄では、病院で患者が亡くなると身体を離れたマブイ(霊魂)が、亡くなった病室に残り、成仏できないと 信じられている。民間信仰において、人が自分の家以外の場所で亡くなると、亡くなった人のマブイが迷い、地縛霊となると信じられている。そのため、病院で患者が亡くなると、遺族はユタと呼ばれる霊能者 ( シャーマン)に依頼し、そのユタと共に病院や患者が亡くなった病室等で患者のマブイをあの世に導くヌジファという儀式を行なうことが少なくない(参考文献からの引用として、紹介されている)。

・(研究結果より)看護師は終末期がん患者が入院中および死亡退院後も、亡くなった患者の家族が執り行う死の風習としてのヌジファを容認しており、それが遺族へのグリーフケアにつながるとの認識を持っていることが明らかになった。

 

 地域によって弔いの方法は異なり、その文化が根強く残っていることに感銘を受けた。そしてその文化を肯定的にとらえ、ケアの一環として受け入れ、実施している現場があることを知り、たとえ亡くなった場所が医療機関であっても、「死」が生活のなかにあるのだという、温かみのようなものを感じた。

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「入院児に付き添う母親のスピリチュアルペインについての一考察」今西誠子・伊豆一郎(2014)

2021-03-17 09:49:11 | 看護学

『中京学院大学看護学部紀要 第4巻第1号』

 入院している子供に付き添っている母親の苦しみは、スピリチュアルペインにあたるのではないか?という仮定に基づき、

半構造化インタビューを行い、検証している。インタビューの対象者が2名であり、研究結果を一般化することは難しいであろうが、

スピリチュアルペインを知るためにはたいへん分かりやすいと感じた。

 

引用

・本論文の引用文献として、村田久行の論文等を活用している。村田からの引用より…日常生活において人間存在には時間性、関係性、自律性の3次元に支えれ、存在意義を見出している。

・スピリチュアルペインを時間性、関係性、自律性の3次元から捉え、自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛と定義した場合、終末期患者以外にもスピリチュアルペインを持つ可能性がある。

・母親の苦しみにおける「入院児を失うかもしれない苦しみ」は「関係存在に関わるスピリチュアルペイン」とされ、「母親役割が果たせない苦しみ」は「自律存在に関わるスピリチュアルペイン」、「先が見えない苦しみ」は、「時間存在」に関わるスピリチュアルペイン」と同定された。

・上記3つのスピリチュアルペインは、<入院児の苦痛を緩和しようと関わる看護師>や<付き添う母親を気遣う他者>により和らいでいた。

 

 入院中の子供に付き添う母親は、病院によっては「付き添ってもらって当たり前」という存在であり、労われる機会は少ないと個人的には感じる。床に敷かれた硬いマットレスの簡易ベットで眠り、食事は病院の売店で購入する弁当やパンで済ませることがほとんどである。温かい食事を摂ってもらいたいという思いから、宅配弁当サービスを行うNPOも登場していると聞く。それでも、先が見えないなかで、物理的にも閉鎖された空間で過ごさざるを得ない母親の存在に、多くの人が目を向けてくれればと願う。

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「在宅で生と死をささえる支援ー短い命の赤ちゃん誕生と家族」柳原清子(2019)

2019-05-29 21:17:13 | 看護学
『精神療法』Vol.45 No.2

 染色体異常のために、生前から命が短いと分かっていた赤ちゃんの誕生と、遠くはない死に対する支援について、事例を通して紹介している。

引用
・(事例より)Aちゃんの障害が判明した時点で両親(夫婦)は、健康な子を産み育てるという希望を喪失し、そして我が子の命は短いという事実に直面した(予期悲嘆)。
・近い将来の家族メンバーの死を「家族が共に悲しむ」や、子との死別を「夫婦で哀しみを分かち合う」は、とても難しいことなのである。基本的にグリーフはその人個人のものであることをまずは押さえておきたい。

 子の障害が重篤であったがゆえに、手技をこなせる母親が一手にケアを担ってしまうことになり、結果として家族の中で孤立してしまった…事例ではそのような一幕も紹介されていた。そしてそんな母親を支援することに集中してしまった支援者たちは、父親もまた、孤立させてしまったと紹介している。
 子の誕生、育児支援、看取りの支援…ものすごいスピードで場面が展開するなかで、支援者たちはおそらく、常に次の二手三手先までの支援を模索し、検討し、用意していたのだろう。
 医療技術が発達した近代においては、特別な配慮を必要とする子も多く誕生している。病院で在宅で、もしくは施設で、そういった子と家族の支援はますます重要となり、専門特化していくのだろうと考えさせられた。

 
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「退院支援過程における退院調整看護師とソーシャルワーカーの判断プロセスの特徴」 石橋みゆき、その他9名(2011)

2017-02-13 21:32:54 | 看護学
『千葉看会誌』VOL17. No.2 2011.12

退院調整プロセスにおける両職種の共通点とそれそれの特徴を明らかにし、職種間協働のあり方を検討している。

引用
(退院調整看護師及びソーシャルワーカーへのインタビュー調査結果より)
 ⇒・看護師が語った事例は終末期にある患者の退院支援が多く、SWは複数の課題を抱える慢性疾患の事例を多く挙げた。
  ・とくにSWは、依頼者である院内スタッフが把握した情報に加え家族と本人の関係性を慎重に把握する特徴があった。

(インタビュー調査結果を受け、考察より…)
 ・問題解決へのアプローチにおいては、看護職がまず患者の身体的問題に着目し、医療的観点からの解決策を第一に求め、次に患者を取り巻く環境を整える順で支援を進めるのに対しSWは患者を含む家族員全体の関係性に着目し、問題点を見出し支援策を検討していた。


 退院調整を2職種で行う医療機関の多くは、業務内容を役割分担するのではなく、医療的なニーズが高いケースは看護師、複数の生活課題を抱えているケースはSWと分担しているようだ。
 退院調整に限定せず、チームとして支援を遂行していくなかで、業務を分担するのか。ケースに対する担当制(分担)にするのか。
 業務独占の部分は、もちろん業務分担はできない。しかし連携だったり、コーディネートだったり、社会資源の紹介だったり。どの職種でも対応できると言えばできるけど、質を求めるのであれば、専門に対応するスタッフがいたほうがいい。そう感じる業務もある。
 在宅医療の領域では、新しい認定資格が誕生してきている。多くの人が効果的に支援を受けられるのであれば、それは望ましい傾向だけれど、支援をすることの本質を置き忘れて、単なる話題作りで終わって欲しくないと願う。
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