社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅緩和医療のパス」下妻晃二郎・斎藤信也(2007)

2010-09-27 20:31:06 | 医学
在宅緩和医療におけるパスについて、欧米と日本における開発状況、利用状況について概説している。それを踏まえ、在宅緩和医療のパスに盛り込まれると望ましい項目を紹介している。
在宅緩和医療に関する基礎情報については紹介されているが、クリティカルパスについての詳細の説明はない。そのため、クリティカルパスの知識を整理した上で読むと、より分かりやすいと思われる。

引用
・医療の質の評価に必要な3要素(Donabedianのモデルを紹介)*Donabedian⇒レバノン出身の医学博士。
「構造(ストラクチャー)」「過程(プロセス)」「結果・成果(アウトカム」

・在宅緩和医療に求められる最終的なアウトカムは、患者の症状緩和やQOLなどの健康アウトカムの改善、スピリチュアリティへの配慮であると考えられる。


昨今は、地域連携クリティカルパスの開発が積極的に行われており、介護との連携を試みている医療機関や自治体もある。
パスによって医療機関同士の連携がスムーズになったことは、どの論文を読んでもメリットとしてあげられている。連携の一手段としてパスが存在するのであれば、それはもっと包括的な内容に作りあげられていくべきであろう。
そんな理解を助けてくれる論文である。


緩和医療学 vol.9no.2(2007.4)

先端医学社

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「スピリチュアルケア学概説」窪寺俊之(2008)三輪書店

2010-09-23 09:51:48 | その他
前回に引き続き、3章~5章を紹介。
ところどころ、内容が重複していたり、定義が一定されていない印象を受けるため、全体としては、一気に読み進めないと理解が難しいと感じた。

引用
「いのち」へのケアでは、生きようとする「いのち」の流れを支えることになる。いのちは目に見えることができないが、「いのち」は生への内在的力である。この内在的力を支えて、いのちの目的の実現に向かう援助がスピリチュアルケアである。

スピリチュアルアセスメントについて
⇒アセスメントの対象はペインである。「ペインの認知⇒ペインの評価⇒解釈⇒ケア計画⇒ケアの実施⇒ケアの評価」


筆者も説いているように、スピリチュアルケアは、極めて個別性が重要視される。それゆえに援助者は、自身の「癖」や「価値観」等を十分に認識し、援助にのぞまないとならない。究極の「受容」であり「寄り添い」であると感じた。
本来であれば、十分なトレーニングを受けた者がそのケアにあたるのが望ましいのだが、現実問題として、それを叶えるのは相当の期間が必要であろう。
しかし患者/家族は「いま」そこにいる。待てないのである。必要なひとに、早い段階で提供するためには、現在緩和ケアに従事しているひとが、その役割を担えるよう、アセスメントシートの開発や、職能団体レベルでの教育機会の確保等が必要である。


スピリチュアルケア学概説 (関西学院大学論文叢書)
窪寺 俊之
三輪書店

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「スピリチュアルケア学概説」窪寺俊之(2008)三輪書店

2010-09-19 20:19:19 | その他
スピリチュアリティ、そしてその部分に痛みを感じたときのケア(スピリチュアルケア)について論じている。
教科書を彷彿とさせる章立てで、難しい学問でありながら、平易な言葉で論じられているため読みやすく、分かりやすい。
スピリチュアルケアの入門書として、臨床の場で活用しやすい印象を受けた。

とても濃い内容であるため、今回はまず1章と2章のみを紹介。

引用
宗教的ケアとスピリチュアルケアの相違点。
宗教的ケア⇒既存の宗教がもつ教えや制度をケアの資源として用いる。(特定の宗教を信仰しているひとには有効なケアである)
スピリチュアルケア⇒特定の宗教には属さず、患者中心にケアが行われる。特に患者の心理的・文化的・歴史的背景が重視され、そこにケアの資源を求める。

患者がもつスピリチュアルな苦痛や問題は、身体的苦痛の緩和と同じ質の問題ではないという点を忘れてはならない。スピリチュアルな苦痛は医療者が苦痛を取り去り、和らげるという作為的行為によってなくなるものではない⇒寄り添い、患者自身が自分の人生に納得できるように支えることが重要である。

スピリチュアリティは人間に備わっている資質である。生きることが脅かされる危機に直面して、生きる土台・意味・目的が失われたとき、危機を生き抜く機能としてスピリチュアリティを人間の生得的資質として進化させたと考えられる。(中略)スピリチュアリティは特定の人にだけ関わる資質ではなく、すべての人に備わっている。特に生命の危機に直面し、生きる土台・意味・目的が失われた時には、スピリチュアリティが顕著に覚醒し、ペインが発生し、スピリチュアルケアを必要とする事態になる。


これまでの私の理解が浅はかだっただけであるが、「スピリチュアリティは誰にでも備わっている資質である」ということに、ハッとさせられた。
終末期に置かれたから、余命告知を受けたからといって突然芽生えるものではなく、本来あったものが変化をしているということなのだ。

本書では、スピリチュアリティが諸学問からどのように理解をされているのか、とても詳しく紹介している。自身の専門領域ではどのような理解をし、そしてどういったアプローチをしているのか/できるのか…それを知ることもとても大切だと感じた。






スピリチュアルケア学概説 (関西学院大学論文叢書)
窪寺 俊之
三輪書店

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「ソーシャルワークのスーパービジョン-人の理解の研究-」福山和女(2005)

2010-09-18 20:55:09 | 社会福祉学
筆者は、学生時代の恩師である。
昨今話題となっている「スピリチュアルペイン/ケア」を考えるとき、ゼミで取り組んだ「人間の立体的な理解」が頭をよぎる。そのため、あらためて読み返した。
本書はスーパービジョンがメインとなっているが、ソーシャルワーカーとしての姿勢、視点についても紹介されている。

引用
・人は、社会のなかで生活をしているが、その生活は多くのしがらみや限界のなかで展開されている。しがらみには重みがあり、大きく幾重にも人々に影響を与える。そのしがらみは、心理的、精神的、物理的、身体的、社会的、霊的の六側面から生活に枠をはめる。

・人の理解というものは平面的、断面的ではその存在を認めていることにはならない。問題点ばかりを列挙することでなく、その問題点の背後に埋もれているこの人たちの努力を何とか認めていくことが必要であろう。


スピリチュアルペインの根底は、「自身の存在が脅かされていることにある」と、多くの学者、実践者が説いている。
ひとは、多くの側面をもって存在しているものであり、何が欠けても「自分らしくない自分」「本来の自分ではない自分」と理解するであろう。
そう考えたとき、ひとを「いま」だけではなく、「過去から未来へ生き続ける/存在し続ける」という視点で支援をするソーシャルワーカーは、スピリチュアルケアを実践しているといえるのではないだろうか。
今夏、米国のホスピスを見学をする機会に恵まれた。そこのチャプレンの話を聞けば聞くほど、「ソーシャルワーカーとの役割分担は???」と疑問がよぎるばかりであった。
そのチャプレンの答えは「明確ではない。双方は複雑に絡み合っているが、とてもうまく分担/協働できている」ということであった。しかし「葬儀の手配や(入院患者の)礼拝への出席の手配など、宗教と密接に関わっていることについては、唯一チャプレンの業務として確立している」ということであった。

日本では、「スピリチュアルペイン=霊的な痛み=宗教的なもの/超越しているもの」と理解されていることが多いように感じるが、もしかしたらとても身近で、終末期に限らず、いま・誰にでも起こっているものではないかと考える。


ソーシャルワークのスーパービジョン―人の理解の研究 (MINERVA福祉専門職セミナー)
福山 和女
ミネルヴァ書房

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「在宅医療におけるホスピスケア-実現に向けての教育とシステム構築の提案-」大西奈保子(2010)

2010-09-13 19:30:05 | 看護学
『死別の悲しみかた立ち直るために』聖学院出版会

在宅ケア、在宅医療、在宅ホスピス緩和ケアの歴史的経緯を盛り込みながら、今後の発展に向けての課題提示をしている。
目新しい視点や論点は見当たらないが、これまでの歴史的経過については、分かりやすく頭の整理に大変役に立った。

引用
在宅で生活を支えるためのケア(先行研究を引用している)
デイリーケア:毎日数回日常生活上で必要なケアであり、モーニングケア、食事ケア、排泄ケア、移動ケアなど
ウイークリーケア:週単位で必要にあるケアであり、洗濯、掃除、買い物、生活習慣の違いにもよるが入や清拭などの清潔ケアなど
クオリティーケア:遊びや生きがいを保障するケアであり、具体的には散歩や趣味や旅行などへの援助


現代は、死が医療のなかで行われており、生活のなかで「看取り」を経験する人が激減している。それは福祉従事者にも言えることで、在宅ケアには不可欠である介護職員にも「看取り」に関する教育が不可欠であると指摘している。
この指摘はもっともである。こういった場面にも携わり、そして不可欠構成員であるという認識がもっともっと浸透すれば、介護職員の待遇も良くなるのかもしれない。
お金がすべてではないが、「緩和ケア」をプロの仕事としてシステム化していくのであれば、それ相応の保障が必要である。
「家族介護の社会化」という認識から脱却し、専門職としての地位の向上とそれに伴ったプロとしての意識・技術向上が、在宅ケアを推進するための不可欠要因であると考える。

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「闘病記とグリーフワーク-遺族が書くことの意味-」門林道子(2010)

2010-09-13 11:32:58 | 看護学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

遺族が書く闘病記を通して、グリーフワークとはなにかを分かりやすく言及している。
多くの遺族が闘病記を書き始める時期は、グリーフワークの「再生」の時期と一致する…など、興味深い分析が多くあった。

引用
・悲嘆作業すなわちグリーフワークとは、故人の死を再確認し、追悼する作業である。そして、同時に遺されたものが、再生し、また新たな人生に向かって一歩を踏み出すための心理的成長の変容過程だといえる。
・「遺志の社会化」…故人の残された意志を聞きとって、それを社会にいこうとする遺族の行為。


書くこと、描くことは、遺されたものの感情表出の大切な一方法であると、ある洋書で読んだことがある。
健康なときでも、悩みやストレスがたまったときに、書きなぐったり、喋りたおすことは、頭の整理につながることもある。
遺されたものにとって、書く/描く行為は、頭の整理にとどまらず、感情の整理にもつながるのだろう。
援助者には、書かれた/描かれたものは何を意味するのか。それを追求できる、それに寄り添う技術が求められるのだと思う。




死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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「がん患者を親にもつ子どもへの病状説明と予期悲嘆」小島ひで子(2010)

2010-09-11 10:05:12 | 看護学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

がん患者の親をもつ子どもに対する、病名の告知、余命の告知、そしてグリーフケアの在り方について言及している。事例を通してその取り組みの実際、課題が提起されている。
子どもに対して告知を決めた親の気持ち、子どもに親の病気の説明を行った医師の気持ち、様々な立場からの声を知ることができた。

引用
・先行研究(バーンズ)を引用している
⇒「ほとんどの母親は、確定診断後、子どもに病名は出さずに話し始めたことろ、子どもの質問、とくに死に関する質問への返答が難しいと述べている。母親は、主治医と病気や治療について、コミュニケーションが良好な場合でさえ、子どもへの病状説明を依頼することは少なかった」

・わが国では、親ががん告知を受けた場合、子どもたちに親の病状説明をすることは、医療従事者の意識も含め、まだ一般的ではないのが現状である。

・筆者の行った調査研究を踏まえ、「がん患者が子どもへの病状説明をする場合、医療機関がどのような支援をするか」
①がん患者の入院時、もしくはかかわる際に、家族の状況をアセスメントすることである。その際に親ががんにかかったときの子どものリスク要因を十分に考慮する必要がある。ひとり親、一人っ子、年長児であることなどの家族背景や、親の身体機能低下や精神的苦悩が生じたとき、治療の副作用が増強したとき、とくに6~10歳に問題行動の危険性が高いこと、女子、とくに再発し苦悩する親をもつ女子にストレスと抑圧する傾向が生じ危機に陥りやすいことなどを把握しておくことが非常に重要である。
②多数のリスク要因をもつ子どもがいる家族の場合、看護領域を超えて対応できる流動的立場の小児看護師などの医療従事者が必要となる。


子どもは、年齢によって、さらには個人によって、言葉の習得や理解の範囲も異なってくる。それでも「いつもと違う」「なにかが違う」という“感覚”的なことにはとても敏感である。
病状の告知、余命の告知は、最終的な親の判断になるのだと思うが、親の体やこころの変化に子どもが不安を抱き、亡き後に「負の印象」を抱き続けないためには、適切な支援が必要である。
グリーフケアの範囲の広さ、そして重要さを痛感した。

予期悲嘆:死別を予期した時に起こる悲嘆反応



死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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「特別支援教育の推進と、現状における問題点」武田鉄郎(2010)

2010-09-09 08:05:43 | その他
『教育と医学』2010.2

障がいや疾患を抱えている児童に対する、特別支援教育の現状と課題について概観している。

引用
教育と医療機関との連携は、単なる連絡会であってはならない。(中略)お互いによりより関係性を保ちながら、問題解決をしていくことが求められる。そのためには、協働(コラボレーション)という概念が大切になってくる。


多職種連携…これはどの分野においても共通している課題である。
本稿で、「学校と医療機関との連携を図るために医療機関側からもコーディネーター的役割を担うキーパーソンが必要である」と指摘されている。ここにソーシャルワーカーは該当しないのか?と少し残念に思った。

小児専門病院のソーシャルワーカーは、虐待ケースへの対応、長期入院児・家族への精神的サポート、自宅退院/施設や他院への転院調整…多岐に渡る実践をしている。
自宅への退院が実現し、復学が実現できるまでの回復を遂げた児童/家族へは、支援の手が差し伸べられないのが実情なのかもしれない。

人手不足か…とまたもやさみしく思った。
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「遺族外来からみえてきたもの」大西秀樹(2010)

2010-09-08 12:11:55 | 医学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

埼玉医科大学において、「遺族外来」を担当している医師による論文。
「遺族外来」で出会った遺された家族を通して、喪の作業とはどのようなものか?等を紹介している。

引用
・がん患者家族の10~30%に何らかの精神医学的な疾患が認められ、抑うつの程度は患者と同等ないしそれ以上である。
・遺族は死別後にストレスを受け、心身に影響を及ぼすことから介入が必要であるが、このような場面で行われる介入はPostvention(後治療)という概念で表される。後治療は「つらい出来事の後になされる適切な援助」を意味し、シュナイドマンによりはじめて導入された(p.20)。
・社会も医学も「生」の側面を中心にして命をみているのが現状なのだろう。多くの場合、社会は成長を求め、われわれはそれに応えようとする。愛する人を失った遺族すら、その成長に応えようとし、つらい思いを必死で耐えようとする。そのような人にまで十分な援助が行き届くほどに、まだ社会は発展していない(p.37)。


「死別」は特別なことではなく、当たり前のことではあるが、その当たり前が「なんでもないもの」と解釈されているのが、現在の大方の傾向であると感じる。
悲しみを抱え、いつもと同じように振舞おうともがいている遺族に対して、社会ができること、医学ができることは何か。その根本を垣間見たように思う。



死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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「重度要介護高齢者の在宅サービスの利用実態と利用要因-長期在宅者と施設入所者の比較-」

2010-09-07 21:25:32 | 社会福祉学
石附敬、和気純子:『社会福祉学』第51巻第2号 2010

3年以上の在宅介護を受けている人と、過去3カ月以内に施設に入所した人について、在宅時のサービス利用状態と利用要因の分析を行っている(郵送及び事前ヒヤリングは、担当ケアマネージャーに行っている)。
何が原因となって施設入所に至るのか、在宅での長期療養を可能としている要因は何か等について、報告している。
現場で多くの利用者と対面している人にとっては、「それはそうだ」と納得のいく…けれども少し物足りない報告になっている印象を受けた。

引用
・長期在宅重度者のサービス利用について
⇒主介護者の年齢が65歳以上である場合に過少利用されている、介護者が勤めに出ている場合と介護支援専門員の経験年数が長い場合に利用率が高い。

・施設入所重度者群は長期在宅重度者群と比べ、年齢が高く、認知症者の割合が高く、家庭内の支援体制が弱いという特徴があった。


調査によって明らかになった両者の違いは、現場の人たちが実感していることを数値で表し、根拠をもって明示している…そんな印象を受けた。
長い期間、そして膨大なデータの分析を重ね、この結果につながったのだと思う。決して目新しいとは言い難いが、社会福祉学は他の学問と比較し、実態を科学的に分析するという作業が遅れをとっている。
こういう地道な作業が、社会福祉学そして社会福祉援助の積み重ねになっていくのだと感じた。


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