社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

がん闘病とコメディカル・医療最前線からの提言 福原麻希(2007 講談社現代新書)その2

2008-05-30 17:55:30 | その他
~「東札幌病院 MSW田村里子さん」の章から~

東札幌病院では、家族への支援をMSWは積極的に行っている様子。
なかでも、グリーフケアを目的とした「茶話会」は、
MSWが中心となり、企画・運営をしているとのこと。


組織によって、SWが担う役割やその役割の比重は、それぞれだとは思うが、
「家族支援」をSWの役割として位置づけが出来ていることを、羨ましく思う。
教科書的には、その役割もSW業務の一つだと主張していても、
実際的に、それが実現し揺るぎないものになっている組織は、
どのくらいあるのだろうか?

在宅医療の場合、関わる組織や職種が多いため、
どうしてもそれを「リンクする」ことに時間的にも労力的にも費やされてしまい、意図的(意識的)な「家族支援」を十分に行えていなかった…と
私は感じている。
特にグリーフケアについては、その必要性を分かっていても、
「何となくタイミングを逃して…」と中途半端な実践になっていた。

何に重きを置くか…組織からのニーズにも沿わなければならないが、
イチSWとしての意識の中で、それを考えながら実践すべきであったと、
今更ながら反省する。

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がん闘病とコメディカル・医療最前線からの提言 福原麻希(2007 講談社現代新書)

2008-05-26 11:29:11 | その他
がん医療に携わる、医師以外の職種を紹介している。第一線で仕事をしている人へのインタビューがあり、分かりやすい。

・医療ソーシャルワーカーについて、がんセンターのSWが紹介されている。
引用「ソーシャルワーカーとは社会生活上、困っていることや悩みを抱えている人の相談を受けそれを解決に導くアドバイザーだ」

・がん看護専門看護師について
引用患者中心の医療とは、「患者さんがその人らしく生きていけるための医療」

 がん看護専門看護師は、チーム医療の意見調整役も務める

いずれの職種も、患者・家族からの相談に応じること、連携を取ることを業務としている。
対応する相談内容については、重複していることが多いが、筆者はその違いを、「看護師は、医療や看護の側面から詳しく話を聞くことができる」と説明。
連携については、ソーシャルワーカーは、退院調整を含め外部との関わり、看護師は院内でのチーム医療での関わり…を主としているようだ。


インタビューを受けているSWと看護師は、違う組織に所属しているため、一概に職種の違いとは言い切れないと感じた。
がん専門看護師は、医師と患者・家族との調整に入ることもあるそうだが、医療に強い看護師がこの役割を果たすことが当然となってきたら、SWはどういう立ち位置をとるべきか?外部と組織との連携にとどまってしまうのか?

この相談はSWに、この相談は看護師に…と上手に使い分けることができる人はマレであろう。不安の種を整理し、適切な職種につなげることもSWの大切な役割であろうと再認識した。



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がん緩和ケア最前線 坂井かをり(岩波書店 2007)

2008-05-22 11:38:32 | その他
癌研有明病院の取材をもとに、「緩和ケア」の現状と今後のあり方について、レポート。

引用
・(癌研有明病院の緩和ケア病棟は)「看取る病棟」から「前向きに生きる手助けをする病棟」へ脱皮しようとしている(P.84)。
・がんの医療には2つあって、がん自体を攻撃する医療と、がんに伴う苦痛を取り除く治療、つまり緩和ケアがある(P.139)
・緩和ケアは、「苦痛を取り除きながらの、がんとの共存をめざす医療」であって、「死に向かって、することを減らしていく」というマイナスの医療ではない(P.185)。



「緩和ケア」は苦痛を取り除くことは理解していたが、それは楽に息を引き取るためだ…と認識している部分があった。本書を読み、「緩和ケア」も積極的な医療の一形態であることを知り、正直、目からウロコが落ちた感じがした。
本書に登場している患者さんや家族は、癌研病院の前医から「もう手の施しようがない。緩和ケアの対象です」とマイナスの要素を全面に出したムンテラを受けている方が多いようだった。それは恐らく、今の日本では「当たりまえ」のムンテラになっているだろう。

命の期限が病気によってある程度決められてしまっても、「可能性にかけて、やり尽くしたい」と希望する人も多いはず。
診療報酬や法律の絡みで、緩和ケア病棟では受けられる、所謂「積極的な治療」には制限があるとのこと。
様々な可能性を試したうえで、納得して亡くなっていくのも、「スピリチュアルペイン」へのアプローチとも言えるだろう。
「緩和ケア」1つをとっても、まだまだ病院単位で取り組みに違いが大きいと感じた。

本書での「緩和ケア」は、取材先がガン専門病院であったためか、ケアの対象は「ガン患者」に限定されている。老衰であったり、その他の疾患であっても、治療方法の差こそあれ、思想としては同一できるのか?

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病院で死なないという選択 中山あゆみ(集英社新書 2005)

2008-05-18 18:23:40 | その他
「はじめに」 医師・川越厚氏への、在宅ホスピスケアについてのインタビューの記載

在宅ホスピスケアの概要を説明。主にメリットを列挙している。
・病院は治療を行う場であり、死に向かうための医療は行っていない。ホスピスは基本的には集団生活であるため、ある程度の「制限」は生じてしまう。自宅は、患者さんが主役であり、やりたいことの制限を強いられることはない。
引用「自分の家は、してはいけない、しなければならない、ということから一切解放された場所です」

・経済的な負担について、医療保険や介護保険で賄えることも多く、自宅は病院と違って個室代は発生しないし、家族が面会などのために使う交通費も発生しない。

・在宅の場合、家族の負担は多いのでは?
引用「薬の処方や医療的なことは、すべて医療者がやります。(中略)さらに看護師が訪問して体を拭いたり、健康チェックをしたりしますから、家族の方は、日々の食事の支度をしたり、ゆっくり食べられるように介助してあげたり、そばについてあげて、体をさすったり、トイレに行くのを手伝ってあげることなど、身の回りの世話をすればいいのです」


「在宅で看取る」ことの啓蒙としては、とても効果的なものだとは思うが、実際はそんなに甘くないのでは?とも感じた。
経済的な面について、家族は患者さんだけにお金を費やせる方ばかりではなく、「介護保険のサービスを使う」ことも厳しい方もいる。入院費と比較すると全体的には割安になるのかもしれないが…。
また家族によっては、「距離を置く」ほうが「穏やかに接することができる」という人もいるだろう。

病院などの機関を最期の場とするか、自宅を選ぶかは、本当にその人次第。
「こちらがいい。あちらがいい。」と医療者や施策が勧めるのは、本末転倒のような気もする…
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がん終末期患者の退院をコーディネートする-救急病院におけるソーシャルワーカーの役割- 渡辺姿保子

2008-05-15 21:45:38 | 社会福祉学
『ターミナルケア Vol.11 No.4 JULY 2001』

ソーシャルワーカーによる論文。在宅ケア部門に所属し、院内から在宅への退院調整を中心に業務を行っている。

・医師から退院の話が出る前から介入し、治療と並行して退院調整を念頭に関わっていく。
・在宅への退院→どのようなサービスが受けられるのか、転院→受け入れ可能は医療機関はどのようなところか…など、具体的に現状を提示し、検討を促進する。

ソーシャルワーカーが退院に向けての話し合いを進める中で、患者や家族の力を以下の観点から評価している。
引用「①これまで問題が起きたときどのように対処してきた家族なのか、②特に老いや死についてどのような経験や理解を持つのか、③患者の家族内の位置づけはどうだったか、④家族の患者に対する思い:予後、回復に対する期待をどれほどもっているか、⑤家族内の関係:誰が誰と相談して決定する家族なのか、⑥介護者は介護の経験や関心を持つ人か、⑦介護にどのような形で携わることを望んでいるか、その計画は妥当なものか、⑧外部からの援助を活用する力、交渉力はどの程度か、など。
 →大学時代に、同様のことを聞いたことがある。引用文献ないし参考文献についの記載はないが、福山和女氏からの引用か?


引用について…「評価の目」が職種によって異なってくるであろうから、この視点を組み込むことで、より厚いケアや調整を施すことが可能になるだろう。それは、よりその人のニーズを具体化し、「納得のいく」ものに近付けられるものにつながると思う。それゆえに、多くの視点から援助していくことは、大切であろう。

退院調整について、訪問看護の導入や介護用ベットの導入など、いわゆる社会資源の調整や導入は、「2~3日で可能」と記してある。しかしこれは、自前の病院から自前のケアマネに調整を依頼したり、自前の訪問看護ステーションにつなげるから可能なんだろう、と感じた。
実際は、「がん末期」というだけで、「かかわったことがないので、先生(主治医のいる医療機関)のほうで、ある程度決めてください。それに従います。」と言うケアマネもいる。それは経験がないことや、医療的なニーズが多いために、一歩下がってしまうからではないか。そういう姿勢のケアマネさんのモチベーションをあげつつ、必要なサービスを「指示」ではなく「アドバイス」することは容易ではない。
サービス調整は、同一法人でパッケージ化しない場合は、1週間くらいはかかるような…。
そえゆえに、そこに時間と労力を費やせるソーシャルワーカーは、必要になるのではないだろうか。
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誰のための在宅?!

2008-05-13 18:29:48 | あたまの整理
「笑顔の選択」(5月12日 深夜放送 日テレ)というタイトルで、在宅医療が取り上げられた。
主に、在宅専門のクリニックを開業している医師を通して、医療や介護の現状を報告。

医師は「在宅では患者も自立していかないといけない。自分でできることをやっていく。その姿勢も大切。」というようなことを話していた。

確かに…受け身だけではやっていけない。「こうしたい。ああしたい」と主体的に生活をしていかないと、サービスから切り捨てられてしまうこともあるだろう。
医師は、このような世知辛いことを念頭にして発言したかどうかは分からないが、私は瞬時にそう思ってしまった。

そして厚労省職員のコメント
「2040年には死亡者数が今の数倍になり、とてもじゃないが、このまま病院で死を看取ることは不可能。そのためにも、診療報酬を改定するなど、在宅での看取りの推進をしている。」

在宅医療の推進…ニーズを引き合いに出し、声高に説いてはいるが、それは何のため?積極的に在宅を選択する人ばかりではないということも、十分に踏まえて考えていきたいと痛感した。

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在宅医療におけるソーシャルワークの可能性

2008-05-12 11:40:17 | あたまの整理
友人からの依頼で、自身の修士論文を報告する機会を得た。
「ソーシャルワークに対する他職種からの理解」をテーマに
論文を整理した。

論文を提出したのは4年前。それ以降の文献を見ても、
在宅医療でのソーシャルワークは未だにマイノリティで、
看護学が専ら強い(このいブログでも顕著に表れているが…)。

論文執筆に際して、他職種へのインタビュー調査を行ったが、
求められている役割は、「患者さんへの援助」ももちろんだが、
それと同じくらいに「組織内の調整援助」「他機関との調整援助」
も多くあった。
なかには、生粋の医療者同士(医師と医師、看護師と看護師など)だと
感情論になってしまい、スムーズな連携が取れない…という声もあった。

援助者同士がしっくりこないと、そのひずみは必ず患者さんや家族に向かう。
スタッフ間の調整は、時には板挟みになり、損なことも多いが、
「患者さんへの間接援助」と見れば、その効果はあるのかもしれない…
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緩和医療の現場から-がんとともに生きる 東嶋和子(日本実業出版社 1997)

2008-05-09 07:19:26 | 社会福祉学
『第6章 あるソーシャルワーカーの物語』
 東札幌病院のソーシャルワーカー、田村里子さんを追ったレポート。事例を通して、その業務内容と専門性を紹介している。

・看護婦による痛みの評価、痛み緩和の専門医による薬物療法、ソーシャルワーカーによる社会的痛みに対するアプローチ。
・東札幌病院のMSW課→「コミュニティとの窓口」
・東札幌病院におけるソーシャルワーカー業務の柱→「積極的傾聴」
 引用「聴くことで支える、という面と、心理的、社会的な背景を理解し、状況に合わせて社会的な介入-利用できる制度の紹介や手続き、家族関係の調整など-をおこなう」
・田村氏が学生時代に実習をした緩和ケア病棟のソーシャルワーカー→チーム医療の一員ではなく、看護婦が問い合わせてきたときなどに部分的に活用されている


 いまや、東札幌病院のソーシャルワーカーはその地位が確立している印象を受けるが、その過程には『ソーシャルワーカーとしては何が考えられるか、どんな方策を立てられるか』を常に意識し、実践したきたことの積み重ねであると感じた。またグリーフワークも実践されていて、家族も含めた全人的なケアに重要な役割をはたしている。ここまでの地位を確立するまでには、他職種からの理解もあったであろうが、何よりも貪欲にその専門性を模索し、取り入れ、実践をしてきたからだと実感した。その前向きな姿勢をぜひ見習いたい!
 私が実践してきた在宅医療でのソーシャルワークは、田村氏が実習先で感じた「部分的に活用されている」ことに近いと感じた。
予定が組まれ、定期的に患者さん宅に行く医師や看護師と比べ、ソーシャルワーカーは「何かがないと訪問しにくい」と感じていた。でもそうではなく、「何かクリアにすべきものはないか」という姿勢が必要ではなかったか?と自問自答させられた。
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看る診る看取る 井尾和雄 (けやき出版 2005)

2008-05-08 12:16:30 | 医学
著者は、立川市で訪問診療専門のクリニックを開業している麻酔科医。
自身の訪問診療の模様がドキュメンタリーチックに記されていたり、訪問診療にかかる医療費や、ターミナルケア・緩和ケア…などの言葉の定義が整理されている。「在宅で医療を受ける」ことをイメージするのに適している、と感じた。

・末期ガン患者に対する全人的ケアの考え方(哲学)
 →ホスピス
・上記のホスピスという哲学に基づいて行われる具体的なケア
 →ホスピスケア
・ホスピスケアを行う場所や施設を広くまとめて
 →ホスピス
・緩和ケア=ホスピスケア *ターミナルケアも同意語だが、使われなくなってきている


 連携を順位立てて説明
  ①訪問看護ステーション
  ②調剤薬局
  ③ケアマネージャー
   IVH供給会社
   在宅酸素供給会社
ケアマネが供給会社と同位に扱われているのは、とても残念
法人としてサービスを提供していないのであれば尚のこと。疾患としてガンばかりを対象とはしていない、と記してあったが、ケアマネが下位にあるのを考えると、やはりガン患者が中心となっているのかな…と思った。

事例紹介の中でALSの患者さんのケースで、在宅療養が決まった際に、家族が社協や在センを巡り歩き、支援体制を作った。難病に対する理解が十分に得られていないため、大変苦労した…とあった。
この時にソーシャルワーカーがいれば、病院とのやり取りや地域での体制作りをフォローできたのではないか…と感じた。
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「生」「命」

2008-05-07 22:41:46 | あたまの整理
この数日間で、命についてのドキュメンタリーが2本テレビで放送された。
1本はJR福知山線の事故で、最後の生存者となった方のもの。もう1本は24歳でガンによって他界された方のものである。

「生かされている」「一日一日が奇跡である」…自分の足元をもう一度きちんと踏みしめなければ、と考えさせられた。

私が初めて「生きること」のバトンを渡されたのは高校生の時だった。
その後福祉関係の職につき、多くの人から「生きること」の意義を教えてもらい、
そして問題を投げかけられた。

たくさんの人に渡されたバトンを、私はきちんと次につなげているのだろうか…。
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