社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「緩和ケアチームが求める心理士の役割に関する研究-フォーカスグループインタビューを用いて-」

2011-11-14 11:37:10 | 心理学
岩満優美、平井啓、大庭章ら 「Palliative Care Research 2009;4(2)」

緩和ケアチームの医師と看護師は、心理士に何を求めるか。インタビュー調査を通してまとめている。
心理士に対してのみならず、医師や看護師、そしてソーシャルワーカーに対しても他職種が求めているであろう事項もあり、緩和ケアチームの多職種連携を理解する上で役に立つと感じた。

引用
心理士に求めるもの⇒医療者へのサポート(医療者の心のケア)、遺族への心理的支援、心理士として得意な心理療法を1つは持つこと
心理士に望まないもの⇒独自に情報管理すること、自分の能力の限界を示さないこと


情報の共有、他職種への橋渡し…これは心理士のみならず、多くの職種に求められるものであろう。そしてまた、緩和ケアチーム以外のケアチームにおいても求められるものである。
心理士は「心理療法」「カウンセリング」といった武器があると思っていたが、現場では試行錯誤の連続であることが伺える。

遺族への心理的支援を求められているということは、やはり緩和ケア病棟の看護師だけでは、その支援は不十分であるということか?
曖昧であることの裏返しで、様々な可能性と求められる役割のある職種である。ソーシャルワーカーとの役割分担はどうなっているのか?も気になるところである。
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「地域診療所医師の在宅緩和ケアに関する意識調査」 秋山美紀、的場元弘、武林亨ら (2009)

2011-11-12 21:54:15 | 医学
「Palliative Care Research 2009;4 (2)」

 緩和ケア資源が十分でないと考えられる山形県鶴岡地区の診療所医師を対象とした、郵送調査及びインタビュー調査。
知識がない、知識として学習はしたけど実践はない等、医師への教育のあり方等が明らかになっている。
おそらくこの地域だけではないであろう、開業医の苦悩を把握することができると感じた。

引用
・がん患者の精神的サポート、家族の精神的サポートに関して(今後行うことは)「不可能」と回答した施設が半数以上あった。
・在宅での看取りについて、現在「行なっていない」と回答した施設のうち、今後も「不可能」と回答した施設は80%であった。
・(インタビュー調査の回答から)地域の患者家族は、病院の手術をした先生を上にみて、地域の開業医を低くみる…患者・家族との信頼関係をつくるのが難しい
・(インタビュー調査の回答から)困るのは、無くなる直前に家族が動揺して病院に入れたがること。こちらは最期まで診たくても、家族が病院に入れたがることがものすごく多い


地域性の問題なのか、退院調整の問題なのか…。病院と診療所の役割が「分担」ではなく「分断」されている印象を受けた。
開業医は医師と看護師の体制で看取りを支援することが多い。それゆえに、診療行為以外のケアには手が行きにくいのが現状であり、それが明らかになっている。
全国どこにいても、同じ水準で在宅緩和ケアを受けられるようにするには、相当の時間を掛け、その地域に合った方法を見つけ出し根付かせねばならないだろう。
どのくらいかかるんだろうか…。

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「筋萎縮性側索硬化症のホスピスにおける終末期ケア」 加藤修一、小沢英輔、島田宗洋ら

2011-11-10 15:15:36 | 医学
「Palliative Care Research 2010;5(2)」

 都内の緩和ケア病棟での症例報告。
医学系雑誌であるため、薬剤の効果的な使用が苦痛緩和に有効であるという報告が多い。しかしがん患者のみならず、ALSを始めとした神経看病患者にも、ホスピスケアが必要であると実感させられる。

引用
・緩和ケア病棟入院料3,780点は悪性腫瘍とAIDS以外は算定できないので、一般病棟特別入院基本料+難病患者等入院診療加算1,140点を算定した。
・患者が訴える「不眠」の症状緩和に対して…薬剤の効果的な使用以外に、概して就寝前に看護師が話をすることが、睡眠導入に役立った。これは、言葉や非言語でその日1日の喜びや苦しみを共有するためであろう。
・ホスピス・緩和ケア病棟がALSの終末期ケアに役に立つ要因は、①在宅生活と同じように療養ではなく尊厳のある生活を重視している点、②看護介護量が多い疾患だが看護師が多く配置され、他の多職種スタッフが協働している点、③苦痛症状の緩和に積極的でオピオイドの使用に慣れている点、であろう。


 いつも感じていることだが、「ホスピスケア=がん患者のみへのケア」ではない。
どんな疾患であれ、苦痛を抱え、喪失感を持っている。どの職種も、目の前にいる患者さん/利用者さんに、ホスピスケアの理念を持ってケアを提供できるようになれば、本当の意味で「安心して生活ができる社会」になるのだと思う。
 米国のホスピスに見学に行った際、チャプレンの方は「就寝前に、患者さんのそばにただ座っていることがある」と言っていた。話をする訳でもなく、手を握るのでもなく、ただ傍らに座っているだけだという。「そばにいる」ことがケアなのである。この、一見「何もしていない」と考えられがちなケアを、日本の土壌でどのように浸透させていくか。それはとても難しいけれど、とても必要なケアなんだと痛感した。
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「重い障害を生きるということ」谷清

2011-11-01 15:30:19 | 医学
重症心身障害児施設に長年従事してきた医師による書。
後半は、重度の障害を抱えたひとたちの支援に奮闘した小林提樹、草野熊吉、糸賀一雄についても紹介している。
特に後半部分は、先駆者たちの働きについて、教科書で「点」として覚えていたことが「線」となってつながり、障害者福祉の発展について再考できた。

引用
・医療処置でも介護でも、「する人」が「される人」に一方的におこなうということではなく、「する人」「される人」が協力しあって、関係しあって成り立っていくものであろう。
・(医療が)「健康管理」の名目で生活を制限し、その結果「健康増進」が妨げられている。


障害の重いひとたちは、「理解する」ということは困難であっても、「感じている」。-本書ではそのようなメッセージが根本にある印象を受けた。

理解しているからウンヌンではなく、人の感情は「快」か「不快」。それをできる限り「快」にしていくことが専門的なケアであると、あらためて考えさせられた。
筆者も説いているが、「生きているのが辛くないのか」と「生」の存在そのものに着眼するのではなく、より快適に「生」を育めるサポートが必要なのである。


重い障害を生きるということ (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店
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