社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ソーシャルワーカーという仕事」宮本節子(2013)ちくまプリマ―新書

2016-06-27 21:38:57 | 社会福祉学
 筆者が現場で経験した事例をもとに、ソーシャルワーカーが活動する領域や職務内容、倫理等について紹介をしている。
ソーシャルワーカーを目指している学生さん、ソーシャルワーカーって何?と素朴な疑問を持っている方などにおすすめ。

引用
・この仕事の特徴は、その人のみならず、その人が暮らしている環境をも視野に入れるという点にあり、ここが患者さん個人に焦点をあてる医療やいわゆる心理カウンセリングと違う点です。
・ソーシャルワーカーには、職業的に自分が聞いてしまった、知ってしまった、見てしまったことについて大きな責任があります。相談に来たその人には直接に返すことができなくても、同じような課題を抱えている次の人に役立てられるように社会の仕組みや制度を変革するのも大切な仕事のうちです。
・ソーシャルワーカーの仕事は他者の人生に介入していくことです。百人いれば百とおりの人生があり、それらの人生に向き合うことにより自分の頭の中の引き出しを一つ一つ増やしていく。そうした蓄積を重ねて、ワーカーとして成長できるのです。
・理屈や理性の入る余地なく、情緒や偏見により判断され、特定の属性を持つ人々が社会から排除される現象を、差別と言います。ソーシャルワーカーはこの差別とも向き合わなくてはなりません。


むかしむかし、母校でソーシャルワーカーの仕事について、「ソーシャルワーカーは、かっこいい仕事でも楽な仕事でもありません。自分自身が試される仕事です」と話したことがあります。本書を読んで、その時の感覚を思い出しました。
本書を読んでいくと、「ソーシャルワーカーはスーパーマン!」という印象を少し持ってしまいますが…。その点については、多くの方々に知ってもらえるためのエッセンスと解釈すればいいのかな?と、個人的には思います。


ソーシャルワーカーという仕事 (ちくまプリマー新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房
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「在宅療養支援診療所におけるソーシャルワークの意義~ソーシャルワークの役割・機能とアプローチの拡大~」木戸宜子・唐木香子

2016-06-20 09:55:18 | 社会福祉学
『社会事業研究』54号(2015年2月)

在宅療養支援診療所におけるソーシャルワーカーの活動について、ソーシャルワーク記録内容の分析を通して、現状と課題をまとめている。

引用
・ソーシャルワーカーが対応すべき課題を認識する機会は2つあり、①ケアプランやサービス提供上に問題や疑問が生じ、支援関係者どうしのやりとりをとおして協議の必要性を認識する場合、②患者や家族からの相談という形で、希望、要望や不満、不安などが聞かれる場合である。

・(さらに上記②については)ソーシャルワーカーの認識や対応のあり方は5つのタイプがあり、a.患者家族の個別の課題として認識して個別対応をとる、b.診療所のサービス課題として組織内で協議する、c.(入院していた)病院と患者家族の課題として病院に連絡をとる、d.支援体制の課題としてカンファレンスを開く、e.患者家族の特性や課題として機関間で連絡をとるに分類することができた。

・地域における療養体制の継続ために、ソーシャルワークが対人支援のみならず、組織や支援体制をも視野に含める。自宅、地域という場だからこそ見えてくるニーズも多い。それを予測予防的な観点から実践を展開していくためには、アセスメントの視点として整理していく必要がある。



在宅を基盤とするソーシャルワーク。それは保健医療の領域のみならず、児童福祉、障碍者福祉、子育て支援、生活困窮者支援…多岐にわたっている。
それは5年前、10年前とは比べようがないほどに広がっている。
ソーシャルワーカーがいなくても、組織運営には支障がなく、法的にも問題がない場面もあるだろう。しかし「いてもらったほうが円滑に進む」「いてもらったほうが何か安心」そう感じてもらえることが、ソーシャルワーク活動の拡大につながるのだと思う。
実践者、研究者、頑張りましょう!!
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