社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「死にゆく親を看取る子どもを支える」久野美智子、石田智美、三浦絵莉子、小澤美和(2016)

2017-06-30 09:54:34 | その他
『保健の科学』第58巻第8号

 死にゆく方、その周辺にいる方々へのケアをしている実践者たちの報告。特に子どもに焦点をあて、年齢別の死の捉え方、悲嘆の表出について整理している。

引用
・(子どもへの対応がわからないがゆえに、ケアの対象とは見られにくい現状に対して→)周囲の大人が勘違いをして子どもに伝える情報を操作することなく、子どもの力を正しく理解した上で子どもが自分の意志を持ち、それが尊重されるような対応であれば孤立感はなくなる。
・まずは子どもの気持ちを受容、尊重し「驚いたね、困ったり聞きたいことがあれば声をかけてね」と、突然に非日常が始まり、病院という慣れない場所での緊張感と混乱に寄り添う。
・自立前の子どもにとってもっとも辛いことは、孤立することである。子どもの側にいる誰かが、子どもの存在を意識する行動をしていただければ、まずは十分なのである。


方法が分からない、自分には出来ないのではないかと自信がないケアに対しては、とかく消極的で「あえて注目しない」策をとる専門家も少なくないだろう。
でも本論文では、まずはその存在を認識してあげることが大切と説いている。何かをしてあげよう、わかりやすい形で提供してあげようとかまえる必要はないのだろう。
以前、米国のホスピスに見学に行った際にチャプレンにその役割を尋ねたら、「一緒にいる」という答えが返ってきた。話さなくとも、触れなくとも、ただ側に座っている。時間を共有するだけの時もあると言っていた。
そこまでたどり着けるのは、もしかしたら究極のスキルが必要なのかもしれないが、まずは認識する、そして声を掛ける。それはすぐにでもできそうなことだと思った。
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「生まれてくるはずだった命の死を受け止める‐「お空の天使パパ&ママの会」の試み‐」石井慶子(2016)

2017-06-27 07:04:32 | その他
『保健の科学』第58巻第8号

 流産、死産、新生児死を経験した親を支援する団体の活動報告と、それらの死を経験した人たちのグリーフの概況を報告している。

引用
・体験者たちが不快に思う言葉に、「お気の毒」や「かわいそう」がある。こららの言葉から、憐れみを感じ、「見下された感覚」を味わうという。子どもを亡くす喪失では、「ちゃんと産めなかった」「育てられなかった」「他者にあるもの(=命)が、自分にはない」という不全感とスティグマが根底に存在することが多い。


 本論文で報告されていたように、医療技術が進歩し、救われる命が多くなった。故に、それを防ぐことができなかったという無力さが、当事者を襲うのだろう。
亡くしたことそのものへの悲しみに加え、自責の念が特に強いのが、この死(喪失)の特徴なのかもしれないと思った。
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「医療福祉連携における相談支援‐連携の中核となる病院の立場から‐」榊原次郎 『保健の科学』第59巻第3号(2017)

2017-06-21 06:04:20 | 社会福祉学
 地域包括ケアシステムを特集している雑誌の中のひとつ。
病院に所属するソーシャルワーカーが、自身が所属する組織のソーシャルワーカーを対象としたアンケート調査を交え、論じている。

引用
・ソーシャルワーカーとしては、フォーマルなステークホルダーだけでなく、地域住民やインフォーマルサービスを含めケアシステムこそ、地域包括であると考え、行政に働きかけているところである。
・病院の中で医療職と協働しながら、患者・家族が安心して治療が受けられ、在宅や社会に復帰する権利を守り、支援していくことがソーシャルワーカーの責務である。
・医療福祉連携の中核となす病院のソーシャルワーカーは、医療SWだけでなく、地域SWの実践も重ね、医学モデルと生活モデルの両方から考えられる視野を身に付けることが、クライエントだけでなく、病院組織、地域社会に貢献できることになるであろう。…引用①


上記引用①について、筆者の組織では、病院以外にも、在宅サービスを実施する事業所を持っているため、SWは異動という形で病院と在宅の事業所の両方を経験できるという。
これはSWのスキルアップとしてもとても魅力的であるが、多くの事業所はなかなか実現が困難であろう。
そこで、在宅のSWと病院のSWがまずは同じ職種として交流を持ち、互いの組織の役割を理解することで、組織間連携の円滑な遂行に有効であることは言うまでもないだろう。
在宅療養支援診療所にもSWは存在する(数は少ないが…)。医師と話しをするよりも、同職種であるSWと話しをするほうがスムーズという病院のSWも多いと聞く。私は在宅療養支援診療所のSWもまた、医療福祉連携の中核にいると思う。
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「ソーシャルワークにおける協働とその技法」福山和女 『ソーシャルワーク研究』Vol.34 No.4(2009)

2017-06-19 05:47:50 | 社会福祉学
今はどの領域においても、多職種連携、多機関連携が当たり前となっている。
協働という言葉の捉え方が統一されていないことを指摘し、まずはその定義を整理している。
協働、協働体制、コラボレーション、連携など、同一と考えられている言葉についての説明は、何度か読み込むうちに、「ストン」と理解できる感じがした。

引用
・(対面でのカンファレンスは)その場で各機関の方針を一同に提示して、交渉をし、方針決定や計画をするプロセスを共有すること、それが協働であろう。
・現場では同質を望みながらも、他の職種に教えてもらうことを期待し、他の職種に依存したいと欲する。専門職の自律性が確立されない限り、効果的な協働体制は形成できないだろう。
・ネットワーキングとは、専門家同士および利用者本人と家族との交互作用から産まれる産物である。
・協働体制は、異なる専門職がそれぞれ専門性を活用し、自律性をもった役割や責任遂行が求められる。


 効果的な協働体制を構築するためには、己の組織を理解し、そして己の職種を理解していること。それが始まりである。
職種への理解は、養成課程でも教わるため、そう難しくないのかもしれないが、組織を理解することは意外と難しい、それが私の実感である。
 組織ができること、できないこと。検討の余地があることを、絶対にできないこと。まずは己の組織に所属している職種、各々を理解していないと、組織そのものは理解できない。そう実感する。
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