社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「学校教育における慢性疾患や障害のある子どものきょうだい支援の課題」滝島真優(2021)

2022-06-13 16:16:52 | 社会福祉学

【副題】教員によるきょうだい児の認識とかかわりの現状分析から 『社会福祉学』第62巻第4号

きょうだい児に対する教員の認識を明らかにし、学校教育における組織的なきょうだい児支援の在り方について検討することを目的としている。

方法として、教員に対する質問紙調査を実施している。自由記述では、苦悩しながらもきょうだい児と向き合おうとされている教員の姿を知ることができ、現状を丁寧に取り上げている印象を受けた。

 

引用

・学校生活における影響については、3割弱のきょうだい児に行動面や学習面などに関する影響がみられると教員は感じており、(中略)きょうだい児が必要以上に努力する様子や常に周囲に気を遣うなど学校生活上の過剰適応と捉える記述も示された。

・調査を通じて、教員が家庭の事情を詳細に把握することの困難さがあることが分かった。(中略)教員はきょうだい児の生活背景の一部を捉えることは可能であるとしても、(中略)きょうだい児の生活状況に応じて個別に直接的な支援を提供するには制約がある現状が想定される。

・今回の調査では、きょうだい児への対応については教員個々の努力による解決が図られており、学校専門職との連携を踏まえた組織的な対応事例は限られていることがわかった。

 

領域を問わず、支援の一番最初の最初は「有志」や「熱い想いのある人」など、個人の裁量(力量?)によって担われている。きょうだい児支援はようやく学術的にも注目をされるようになり、「専門的に」「組織的に」の取り組みの第一歩になり始めているのだと思う。

医学が発達し、一命をとりとめることが可能になった新生児が増え、医療的ケア児への支援が進んでいる。医療的ケア児には、きょうだいがいるかもしれない。そのきょうだいが支援の一端を担うことも少なくないであろう。それを考えると、医学、社会福祉学、教育学、心理学などなど、横断的な支援の検討がより一層、重要になってくるのだと思う。

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「在宅療養支援診療所の医療ソーシャルワーカー自身のスピリチュアリティに関する考察」大賀有記・他

2022-06-11 09:24:23 | 社会福祉学

副題:「人が人を支援する意義」『社会福祉研究』第23巻

スピリチュアリティを研究の視点とし、ソーシャルワーク分野におけるスピリチュアリティについて考察を深めている。

その方法として、在宅療養支援診療所の医療ソーシャルワーカー(MSW)を対象にインタビュー調査を実施しているため、在宅医療を活動領域としているMSWの実践活動を知ることもできる。

引用

・スピリチュアリティは人間の革新であり、それは自己・他者・超越的存在との関係において見出されていくものといえるだろう。

・在宅療養支援診療所の在宅MSWは、【多様な最後の受け入れ難さ】が社会的背景としてあるなかで、本人の意思を実現できないことが少なくはなく【意思決定支援の意義の再検討】という課題に直面している。その一方で在宅MSWとしての役割・機能が十分に発揮できないことや患者の死という【喪失体験を収めていく】過程を通して、【生と死の関係性を考える】ことが分かった。

・通常のソーシャルワーク支援の中にはスピリチュアリティの要素が十分入っている(ことが見いだされた)。

・スピリチュアリティの動きを認識することにより、在宅MSWとクライエントとの間でつながりと責任の感覚が共有され、それがより豊かな支援につながる可能性がある。

 

「スピリチュアルケアをしよう」と構えて、形を整えて、あらたまった時間を設けて…という方法でなくても、支援者がその意識を持ち、かかわりの中で重んじていくことで、自然と実践はされている。というようなことは、他の書物等でも述べられている。

しかし現実には、その言葉を知らず、本当は適切なケアができているのに、「自分たちは何もできなかった」と肯定できていない支援者が多くいる。支援者の実践を整理し、肯定し、豊かにしていくためにも、スピリチュアルケアという言葉は活用できると、本論文を通して知ることができた。

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「在宅医療ソーシャルワークの意義に関する考察」大賀有記『社会福祉研究 第22巻』

2022-06-03 16:47:21 | 社会福祉学

副題:-スピリチュアリティに配慮したソーシャルワークの観点を参考にー

 

在宅診療を行う在宅療養支援診療所のソーシャルワーカーの活動についての文献から、その役割や機能についての記述を整理することを目的としている。

数少ない先行研究を丁寧にまとめ、分かりやすく分類している。在宅医療におけるソーシャルワークを知るためには、とても有効な論文である。

 

引用

・ソーシャルワークは生きている人全体を対象とし、彼らが生を全うするまで支援を継続する責任をもつ。

・(先行研究を整理した結果として)在宅医療ソーシャルワーカーの専門性は、①クライエントの主体性を尊重した医療実践に影響を与えること、②クライエントを包括的に理解し、その日常生活を脅かさないような医療と看護のあり方を提案すること、③人(ミクロ)と環境(メゾ・マクロ)の双方に働きかけ、その関係性を調和させるソーシャルワーク実践を行うこと、④生活の場における積極的なニーズの把握とその継続的対応を行うこと、⑤メゾ・マクロレベルに偏重することなくミクロレベルの実践をすることにより個々人が尊重された生活を送ることができること、といえる。

 

この論文が発表されたいま現在、「在宅医療ソーシャルワーカー」「在宅医療ソーシャルワーク」という言葉が、戸惑いもなく用いられ、そして受容されていることにとても感銘を受けた。

私が現場で実践をしていた頃そして、初めて調査をした頃(1999年~2010年)、とてもあいまいでフワフワとした存在であったものが、

この論文のようにひとつにまとめられるほどに、量的にも質的にも蓄積されていることが本当に本当に嬉しい!!

 

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