社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

終末期医療 全国病院アンケート (7月27日 読売新聞・朝刊)

2008-07-28 22:01:02 | その他
読売新聞社と立命館大学が共同で実施した調査結果の記事。

全国の300床以上の病院のうち、精神病床が過半数の施設を除いた1191病院を対象にアンケート少調査を実施。

興味深い結果を一部紹介
・緩和ケアの実施が「不十分」…8割近い施設が回答
・日本の終末期医療全般に関して「大いに問題がある」「問題がある」…9割を超えた
 →どこが問題なのか?「在宅や福祉施設でのサポートが不十分」76%「看護や介護などのケアが不十分」59%⇒福祉やケアの不備が最大の課題であることが分かった
・長野県の病院…「身寄りのない終末期患者の栄養・輸液の中止・不開始を決定できる人がおらず、苦慮した」


調査対象が有床医療機関であり、「在宅」をベースとしている医療機関は、対象外であったようだ。そして終末期医療の問題点として、「在宅での受け皿が不十分」が挙げられている。「在宅医療」でも終末期医療を提供しているのに、まだまだ有床医療機関の受け皿的存在のようだ。その位置づけが、とても残念。

長野県の病院の回答内容、これは今後ますます顕著になってくる問題であろう。法的にも整備されず、行政機関も管轄外。関わった医療機関や施設が、手探り状態…という表現では物足りないくらいの苦労をしながら、対応しているのが現状だろう。この「その場任せ」の姿勢を、国はどうしていくのだろうか?
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ホームビジティング 訪問型福祉の理論と実際 杉本敏夫/監訳(2006)

2008-07-24 11:47:06 | 社会福祉学
ミネルヴァ書房からの出版

アメリカで展開されている、「家庭訪問員」の活動を紹介。
アメリカであるがゆえに、児童虐待や薬物依存などのケースに対するプログラムなども紹介されている。

家庭訪問の原則としてある、援助者の役割について(P.46)
①クライエントが日々の生活をスムーズに送れる状況をクライエント自身が作れるように援助すること
②クライエントが援助の過程で獲得したスキルを、将来にわたって有効なスキルとして一般化できるように援助すること


在宅医療は、自宅を舞台に展開されているが、「訪問によるサービスの実際」をアカデミックにとらえている書物が少ない。そのような中で本書を読んだ。
ソーシャルワークというよりも、カウンセリングに近い形で援助が展開されている。「訪問」というスタイルに限らず、「援助者」一般に対するスキル本としても活用できる印象を受けた。しかし一方で、「援助者たるやの専門性」を「訪問先でどのように展開させていくか」も分かりやすく述べている。
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「生活支援の社会福祉学」 古川孝順・編 有斐閣ブックス(2007)

2008-07-21 10:17:24 | 社会福祉学
在宅医療に関する書物ばかりを読んでいたせいか、「そういえば、ソーシャルワークとは、根本的に何だったっけ?」と思い、整理をする意味でこの本を読んだ。

保健医療や障害者関連、政策、雇用など…多分野に渡って「生活を支援するための社会福祉のとらえ方」が述べられている。
ソーシャルワークの歴史、今日的な問題に対するソーシャルワークのあり方など、所謂「教科書的」ではあるが、全体的に読みやすく、頭の整理をするのには持ってこいであった。


医師や看護師による研究や実践では、「患者を疾患からのみ見るのではなく、疾患を持つ人である…という視点から見るべきだ」と語られることが多くなった。
一方社会福祉(ソーシャルワーク含む)は、「生活をしていく上で、何らかの問題を抱えている人に対して、生活がしやすくなるように問題の解決を支援したり、何らかの働きかけをする」ということが、整理できた。

すなわち…医療者とソーシャルワーカーは、そもそも、ひとを捉える出発点が異なっている。ソーシャルワーカーは、あえて「生活者としてその人を見ていこう」と言わなくても、「ひと」として見ることから出発し、疾患や障害、雇用、金銭などの問題は、その「ひと」についてくる「付加的なもの」ととらえている。それゆえに保健医療の場で、ソーシャルワーカーがいることの意味は、そこにある!と自分なりに改めて整理ができた。
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「家庭医の現状と展望 ・家庭医に期待される五つの機能」 酒井忠明 (2004)

2008-07-16 10:50:34 | 医学
「医療改革時代の在宅ケア 死ぬも生きるも我が家がいちばん』 
                        佐藤智/編 日本評論社

ライフケアシステムのシンポジウムをまとめたもの。
他に、柳田邦男氏、日野原重明氏の発言録も収録されているが、目新しさは感じなかった。

・家庭医に期待される機能
①継続性…医師が患者さんに対して、診察をしたその時だけではなく、患者さんの健康について、継続的に関心を持つこと

②包括性…病気毎に診るのではなく、その人に健康上の問題があるんだという観点から、患者さんを全体として診る。

③常時性…24時間での電話対応がその一つの方法。継続性と包括性があってこそ、常時性も実現できる。

④人間関係…患者と医師との人間関係。お互いに「普通の人」として認め合うことが必要。

⑤調整能力…医師が専門家とのネットワークを自分で持っていて、さらにそれを自分で統制する力を持っているべきだ。


④について…「普通の人」とはどういう人か?おそらく、医師と患者という垣根を取り払うべきだという趣旨だとは思うが、あまりに垣根がなさ過ぎて、専門家たる信頼性が無くなってはいけないと感じた。

⑤医師個人のいわゆる人脈のことか、はたまたネットワーキング(能力)のことか?「統制する」というのは何についてか?何もかもを医師がやる必要はないと思うし、できていないのが現状ではないだろうか。「できていないこと」を整理し、他職種に振ることも、大切な「機能」だと思う。


副題となっている「死ぬも生きるも我が家がいちばん」…家で過ごすのは心地よいことではあるが、万人がそうとは限らないだろう。この言葉(理念)でつぶされている患者さん本人やご家族がいることを、援助者は見落としてはいけないと思う。
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「在宅医療の実際」 田島正孝 (2000) 風媒社出版

2008-07-15 18:05:18 | 医学
「…実際」というよりも、自身の「体験談」で、目新しいものは見受けられない。

興味深い記述(p.35):(筆者が訪問診療に行った先の)介護者が(自分は)「鎖につながれた犬」のようだと語っていたことがある。とのこと。


家で要介護者と生活をすると、大なり小なり、上記のような状況になってしまうだろう。しかしその鎖を少しでも長く、もしくはその鎖を感じさせないような働きかけを、援助者は行っていかねばならないと思う。
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『開業医革命 「在宅医療」の現場から』 結城榮一 (1999) あき書房 

2008-07-15 12:15:56 | 医学
練馬区で開業をしている医師による、主に在宅医療の立ち上げ自伝。
約10年前の書物のため、法に関する提起は、情報としての活用は難しい。

興味深いエピソード(P.148):著者が主治医として訪問診療に行っていた患者さんについてのもの。ある日、他の医師(Aさん)が代診したところ、「今後もAさんに来てほしい」という希望があった。「本来の主治医は年齢が高いから、質問をしにくい」というのがその理由であったとのこと。
このエピソードについて著者は、外来であれば医師が複数いるため、患者自身が「行かない」ことで「変更」できる。しかし訪問診療は、複数の医師が関わるとこが少ないため、実際には変更してもらいたくても、言い出せないもしくは、言い出せたとしても希望に沿えないこともあるだろう…と指摘している。


上記のエピソードを踏まえ…医療者への不満や不安は、どの領域でも起こりうるだろう。問題は、その解決を行える体制ができているかどうか。
特に在宅は、「家に入ってもらう」ことになるため、「何となく構えてしまう」人もいるだろう。

「自宅」というプライベートな空間で、お互いに心地よく診察をする/してもらう環境作りに、ソーシャルワーカーはどのように関わっているのか?もしくは、関わっていく必要があるのか?
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「これからのターミナルケアと在宅ケア」 広井良典 (1999)

2008-07-14 15:44:44 | その他
「介護保険時代の在宅ケア~在宅ケアの真髄を求めて」
             佐藤智・大熊由紀子/編著 日本評論社

在宅ケアを行っている会員制組織「ライフケアシステム」が主催したシンポジウムの内容がまとめられている。

「在宅」の意味について・・・
物理的なもののみを意味するのではなく、英語で在宅という意味で用いられる
「feel at home」を参考に、「本当に自分が安心できる」ということを指すのでは…と提唱。


上記の意味で「在宅」をとらえると、生活の場が施設であっても、その人にとっての「在宅」になるのだろう。施策面などはこの意味を用いて論議をするとややこしくなるが、援助論や思想としてはもっともな意味の取り方だろうと思う。

山崎章郎氏は、ターミナルケアと在宅ケアは分けられるものではないと説いている。こ
の十年近くで、色々な定義、意見などなど…が出てきたんだなぁ…と感じた。
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「在宅療養支援診療所の連携 <2>連携で埋められないもの」 2007.5.5 病院経営

2008-07-11 11:58:38 | 医学
医療法人拓海会 大阪北ホームケアクリニック 藤田拓司

在宅療養を支え切れなかった事例を通して、医療・福祉の連携の問題点を指摘。
事例ではALSの患者を取り巻く、社会資源の不足やケアマネージャーの資質について述べている。

①悪性腫瘍終末期や神経難病患者のケアマネは、前職が医療職であることが望ましい。それは、進行する症状に対する予見を持つことが可能であることと、医療機関(特に医師)との連携に対して心理的ハードルが低く、連携を密に行うことが可能であるからだ。

②医師・ケアマネ双方が連携・情報共有に積極的に取り組まなかった点も、自宅療養継続を困難にした原因の一つであった。


①…医療職=医療的知識が万全とは限らず、福祉職=医療知識に乏しい…とも限らないと、私は自身の経験から感じる。要は、その患者さんを取り巻くものに対して、自身は専門職としてどのような知識を身につける必要があるか…だと思う。
医療職のほうが医師との連携がしやすいと指摘しているが、「医療職同士だと話がしにくい」と仲介役を依頼されたことが多々ある。互いの歩み寄りが一番大切だと思うが…。

②…医師は診察が治療などなど、時間を費やし、その専門性を発揮すべきところがとても多い。そのため、「連携」に時間を費やせないのは当然だと思う。だからこそ、「連携」に時間も労力も費やせ、「仲介」「コーディネート」といった専門性を含めて業務を行える職種が必要であろう。
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新潟県内の在宅医療のサービス基盤に関する研究  武田誠一(2007)

2008-07-10 11:44:11 | 社会福祉学
サブタイトル:新潟県における「在宅療養支援診療所」の開設状況
新潟青陵大学紀要 第7号 2007年3月

新潟県における、「在宅療養支援診療所」「在宅時医学総合管理料」「在宅末期医療総合診療料」の開設(届け出)状況を調査し、課題を提起。

・在宅療養支援診療所のない(少ない)地域には、訪問看護ステーションもない(少ない)という現状があった。
 →在宅医療は、単独の診療所では実現できず、連携が大切であることの裏付けとなった
・人口が少なく、在宅療養支援診療所が存在しない地域ほど、全人口に占める75歳以上の高齢者の比率が高い、という現状があった。


地域別に詳細に調査されており、地域格差が一目瞭然であった。
「不便」「過疎」「高齢社会」と思われる地域ほど、「在宅医療」の実現からはほど遠い…という印象を受けた。
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