社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「図書館員の世代交代と非専門職化の影響」松本ゆかり(2022)

2023-02-16 12:43:41 | 図書館学

『薬学図書館』67(3)

 大学図書館の司書による論文。専門職員が継続して雇用されなくなることを危惧し、そのメリットとデメリットを提示している。

 司書のみならず、他の専門職種にも通じる点が多くあると感じた。

 

引用

・世代交代のメリット:業務の見直しが進む、新しい取組が生まれる、マニュアル化が進む

・世代交代のデメリット:昔のことが分からなくなる(図書館業務のスパンは長い!)、目録作成等基本的な経験が抜けてしまう、

            非常勤・委託職員への指導力が不足する

・非専門職化のメリット:大学全体の業務の流れが見える・視野が広がる他部署のやり方を学べる(業務の見直し、効率化)、

            学内の繋がりができる

・非専門職化のデメリット:研修が終わったころに異動、キャリア形成が難しい、倫理的・法的な知識不足の恐れ、将来像を考える人材の不足

・専門職というのは学び続けることを前提とした職種であり、図書館員は常に情報収集をしていることを前提とされている

 

 財政的に維持が困難であるから、安価の対応で人材を確保する。この流れはどの業界でも起こっている(起こりうる)ことである。

その対応はもたらす弊害は、長期的に見れば取り返しのつかないことにもなりかねない。専門職者が誇りをもってキャリアを積んでいけるよう、

自身の努力ももちろんであるが、組織(環境)の整備も必須であると考えさせられた。現役の大学職員がよくぞここまで書き切ったと、

その勇気に敬意を表したい。

 

 

 

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「病院の図書室‐病院図書室と患者図書室、そしてその先へ」山口直比古(2016)

2022-09-29 14:56:10 | 図書館学

『情報の科学と技術』66巻9号

病院に配置されている図書室の役割について、対象者別ある2種類に概説している。地域にある「公共図書館」とは異なる図書館の、その役割を知ることができる。

 

引用

・病院には医学情報を提供する図書室が二種類ある。一つは医学図書室とでもいうべき性格のもので、医師や看護師などの医療関係者や病院職員のための、医学・医療情報を提供する図書室である。もう一つは患者図書室と呼ばれるもので、病院内の外来受付などの近くにあり、患者やその家族、一般市民向けに医療・健康情報を提供する図書室である。

・患者図書室の役割は、患者の知る権利を保障し、情報の面から患者の自己決定を支援することである。

・病院や図書館には様々な人々が集まるが、病院(病気)と図書館という二つのキーワードの交わるところに、司書という仕事の新しい姿が見えてくる。

 

 私は産前に長期間入院をしていたが、そこでは隔週でワゴンを本に入れ、病室を訪問してくれる「図書貸し出しサービス」があった。おそらくボランティアさんが担っていたと思われるが、本を探している時間、担当の人と話している時間は、「患者」ではない日常を感じられるとても大切な時間であった。とても退屈で不安な入院生活を支えてくれた、欠かせないサービスであった。本はいわゆる「学習」のためのツールにとどまらず、「娯楽」をもたらしてくれるツールでもある。まちの中にある「公共図書館」のみならず、病院内にある図書室(もしくは移動図書サービス)にも、もっともっと期待できることがあると感じている。

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