社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

第4回 グリーフ&ビリーブメントカンファレンス

2013-01-28 05:09:26 | その他
1月26日に関西学院大学 大阪梅田キャンパスで開催され、参加しました。
2つの演目からの引用とその感想。

1.「遺族のリスクアセスメント」座長:坂口幸弘先生、演者:廣岡佳代先生
 カナダで活用されている「Bereavement Risk Assessment (BRAT)」の日本に向けての応用化の報告。
 引用
 ・BRAT開発の目的⇒遺族のビリーブメント状態を根拠に基づきアセスメントし、早期から遺族が抱える問題を予測する。
 ・(使用するにあたっての)前提条件⇒「全ての人がグリーフ体験をして苦悩するわけではない」「グリーフは、一生のプロセスである」
 ・BRATの特徴(それまでのツールにはなかったこと)⇒リスクを軽減する要因には、本人が持つ強さや回復力も含まれる
 ・BRATの限界⇒(感情/気持ちの変化に対するチェック項目はあるが)身体にあらわれる症状には対応していない 例:睡眠パターン、食欲の変化

2.「遺族とどう向きあえばいいのか」座長:大西秀樹先生 演者:岩本喜久子先生
 事例を通して、子どものグリーフ反応と関係機関との連携等について検討。さらに対人援助の専門家として、遺族と向きあうということについて言及。
 引用
 ・子どもは、自ら支援関係を作れない/作りにくい。だからこそ、大人同士のネットワーク(支援の目)が大切
 ・子どもが発する「わかんない」「知らない」は、「ちょっと待って(今、考えているよ)」のサインかもしれない⇒焦らない対応が必要
 ・対人援助の専門家として、遺族と向き合うとは?
  ⇒精神疾患であるか見極められること、その人の性格/特性を正しく知ること、(援助を受ける人の)防衛的な心理作用を知ること、(援助者側の)陰性反応を理解していること、何かしてあげたい!しなければ!という気持ちで行動しない、相手が自分の言動に責任を持つという姿勢(一線を守る)


様々な職種の人達が、共通のテーマで議論を交わすということは、その理念/思想を広げていくことにつながると実感した。
また地域を問わず、「死」がタブー視されていること、「死」が遠い存在であり援助に苦慮している専門家たちが多いことをあらためて認識した。


 
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「葬儀と墓の現在-民俗の変容ー」国立歴史民俗博物館編(2002)

2013-01-07 13:04:12 | 民俗学
葬祭儀式の変容を民俗学の観点から考察。地域特有の葬祭儀式の紹介とその移り変わりも紹介している。
在宅死から病院死への移行は、葬祭儀式へも大きな影響を与えていることが分かる。

引用
・(先行研究結果より)湯灌については、1960年代には血縁的関係者が行うとするのが最も多く49例、無縁的関係者(僧侶など葬儀の職能者)は2例であったが、1990年代には前者が30例、後者が20例となっている。この無縁的関係者は病院側がアルコールで清拭したものなどを表す(p.204)。
・死の現場が病院となったことや葬祭業者の関与の増大と公営火葬場の利用による遺体処理の迅速化が、近親縁者と死者との密着の時間と空間との縮小化、つまり、生と死の中間領域の縮小化をもたらし、伝統的儀式の消滅は、霊魂観念においても死霊畏怖の観念の希薄化を進めていることが指摘された。死者とは遺骸と死霊とみなされていた伝統的観念に変化がみられ、死者は親愛なる個人として記憶される存在へと意識されるように変わってきていることが指摘されている(後略)。



葬祭の儀式は、人々の霊魂に対する認識へも影響を与えている。
キレイな顔で、キレイな姿でおさめられていくことは遺族にとっては「癒し」になることもある。しかし一方で、「死」への距離を遠くさせ、自分とは別のところで起こっていることとして認識されることも、あるのかもしれない。
大きな悲しみの中で、「死」と向き合うことは遺族にとってはとてもしんどいことである。遺族が「死」という現象をどのようにとらえているのか。それは人それぞれである。そのことに意識を向け、個別の援助をしていくことが、遺族ケアには必要であろうと強く感じた。

葬儀と墓の現在―民俗の変容
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吉川弘文館
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