副題:家族の語りの分析を通して
『社会福祉学』第61巻第4号 2021年
認知症等により、自分で意思決定ができない家族に代わり、胃瘻造設をするか否か、を検討・決定する家族について、聞き取り調査を実施し、
その思いと決定までのプロセスを「揺らぎ」というキーワードで分析している。
引用
・(考察より)家族に共通していたのは、「胃瘻を選ぶべきか否かわからない」という「揺らぎ」であった。
・胃瘻に関する知識と経験が乏しい家族にとって、意思に限らず、看護師、さらには家族や知人などの身近な人から得る胃瘻に関する情報も、胃瘻の理解として取り入れやすいが、取り入れた情報内容によって「揺らぎ」が増減する傾向もみられた。
・(分析から)「揺らぎ」が代理意思決定時のみに限定された感情ではなく、現在に至るまで「患者の利益」を追求し続けている家族の誠実な反応であることを意味している。
新しい知見が得られたという研究ではないが、聞き取り調査からの分析~考察について、丁寧にことばを大切にしている印象を受けた。
医療技術が発達し選択肢が増えすぎることで、家族を苦しめている側面もある。そのことを理解し、適切な情報(過不足のない情報)を提供し、決定までの気持ちの揺らぎ/浮き沈みを受け止めていくことが必要だと、あらためて感じた。