社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「遺族のリスク評価法の開発 死別後の不適応を予測する因子の探索」坂口幸弘ら

2012-10-29 20:42:28 | その他
『死の臨床』Vol.28 No.1 2005

遺族のリスク評価法の開発に向けて、遺族自身及び看護師によるリスク評価と、遺族の精神健康との関連を検討し、高リスク遺族を予測する因子を探索している。遺族自身、看護師に対し、郵送による質問紙調査を実施している。

引用
・遺族リスク評価法とは、死別体験を遺族自身だけでうまく乗り越えられず、第三者からの援助を必要とする可能性が高い、いわゆる高リスク遺族を予測することである。
・リスク評価は限られた資源の中でのサポートの配分に注目しており、低リスクと評価された遺族に対して、サポートを行わないということではない。
・遺族自身のリスク評価の結果から見出された、リスク評価因子⇒「過去の喪失をうまく乗り越えられていなかった」「不安が強かった」など


どんな状況にある人が、グリーフケアをより必要とするのか?この研究はこれを導き出す、根っこの根っこになっている研究であろう。今となっては「そうだろうね」とうなずける結論ではあるが、およそ7年前の論文発表時には、臨床家たちにとっては救いの研究であっただろう。
しかし逆に、7年経った今でもなお、グリーフケアは十分には行き届いていない。具体的な危険因子が提示されているにもかかわらず、現場では生かしきれていない…いや、情報へのアクセスがしにくいのかもしれない。
現場の人たちが使いやすいツール…札幌医科大の岩本先生たちが、開発を進めている。多くの選択肢、多くの引き出しが用意されるといい。
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「ルポ 仏教、貧困・自殺に挑む」 磯村健太郎 岩波書店(2011)

2012-10-09 08:06:10 | その他
 僧侶が葬祭以外にできることはないか?貧困や自殺問題を「死と生に向き合う問題」として捉え、僧侶だからこそできることを実践している方々のルポ。

引用
・死にたい人は死ねばいい、と言う人がいる。でも、それはちがうと伝えたい。「死にたい」人なんていない、ほんとうは「生きたい」んだよ、と。生きたいと思う力がよわっているだけだと知ってもらいたい。


寺の裏に、路上生活者のシャワールームと診療所を設けている人、炊き出しを通して路上生活者のニーズを汲み取ろうとする人、誰でも身軽で泊まれるように寺を開放している人。僧侶と言っても、取り組み方は様々である。
「生」と「死」にまつわる精神的な支援に、古くから携わっている専門家(専門家というと誤解を招くかもしれないが…)に、社会がもっと頼ってもいいと思った。


ルポ 仏教、貧困・自殺に挑む
クリエーター情報なし
岩波書店
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「在宅における死後の処置に関する調査ー訪問看護ステーションを対象にしてー」滝下幸栄、岩脇陽子等

2012-10-01 11:22:37 | 看護学
『京府医大医短紀要,9』1999

 訪問看護ステーションを対象に、死後の処置の方法、家族への声かけ、今後の課題等を調査している。
14年前の論文であるため、現状とはことなる現象もあるが、死後の処置を巡る歴史的プロセスをしるためには大変役に立つ。

引用
・(病院死が一般的になり)死は次第に家族から遠のき、湯灌のもっていた社会的、文化的な意味が看護者に十分理解されないまま、死後の「処置}として看護業務に組み込まれ、家族が手出しできにくいものとしてとらえられるようになっていった。

・調査結果より⇒「自宅での死後の処置はどうすればよいか」について、「葬儀社に委ねたほうがよい」という意見が2番めに多かった。その理由は、訪問看護ではコストがかかる、葬儀社のほうが上手、入浴までしてくれる、夜間も対応してくれる…など。

・調査結果より⇒「死後の処置は単なる処置の一つ、医療側の援助は死亡前のケアに絞るべき、訪問看護で必ずしもしなくて良い」という意見もあった。

・死後の処置は物理的なリアリティと別れの手続きを確認する場であると位置づけるならば、家族に死後の処置の主導権を返していくことも今後は必要なのではないかと考える。



今でこそ、家族と一緒に着替えをさせる、清拭をするということは死後のケアとして浸透しているが、過去には看護師サイドでも疑問視している声があった…ということに驚いた。
グリーフケアの側面としての死後の処置。それはここ数年で急速に広まった認識なのかもしれない。先駆者たちの取り組みを整理することで、その必要性と普及の鍵を見いだせるだろうと思った。
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