社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

急性期医療におけるソーシャルワーカーの介入方法の検討-介入期間の確保による援助の向上に向けて-

2009-05-29 15:36:57 | 社会福祉学
萬谷和広(2009)『ソーシャルワーク研究』Vol.35 No.1

急性期病院のSWによる論文。
在院日数の短縮化がはかられるなか、SWに援助の依頼が入ってから退院までの期間は短くなる一方だが、援助そのものを手薄にする訳にはいかない。
いかに介入の時期を「適切」にし、そして限られた期間に「適切」なアセスメントや支援を行えるか…事例を提示しながら論じられている。

医師や看護師から相談依頼(介入依頼)が入ることが多く、また「この患者さんは大丈夫かしら?」と感じた時に、SWにつなげよう!と思ってもらえるように、外来医師や外来看護師サイドに向けたチェックリストを作成。この作成に際しては、過去の相談内容や生活問題に陥る原因となった要因を分析している。


「医療はチームで行うもの」はどの領域でも言えることだが、患者さんと接する期間が短い医療機関ほど、これを定着させ、そして「共有」し合うことが日常的になされていないと、限られた期間で適切な援助を行うことは難しいだろう。
医療者は科学的な根拠が身についている職種(だと私は思う)であるため、「何かあったらSWにつなげて下さい」とあいまいに伝えるよりも、本論文で紹介されたようなチェックリストを渡すほうが効果的だと思った。

医療法の改正によって、患者さんはいろんな機能の病院を渡り歩くことになる。
たとえ短い期間であっても、そこで適切な援助を受けていれば、次につながる援助(他機関での入院や入所など)も、その現状に合った適切な場所となりうるだろう。
自分たちのいる組織の機能を十分に理解し、その機能に適したSW援助の展開方法を整備していくことも、より一層大切になってきていると痛感した。


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「介護の町内化とエロス化を」 三好春樹(2005)

2009-05-19 12:17:05 | その他
『ケアの社会倫理学』有斐閣選書 収録

「なに?!」と思わされるタイトルで、思わず読み入ってしまった。
介護がより理論的に、そして体系的に…と整備されていることについて、斜めからの視点で、持論を投げかけている。

介護職を増やして手厚い介護を。そして施設の個室化を進めて、個人の尊重を。といった、当たり前に進められている改革を、「本当にそれでよいのか?」「その策の根拠は?」「その策で間違っていないか?」と、意見を投じている。

引用
利用者の正面に座り、目と目を合わせて会話をすること(専門教育を受けた人はこれをよくやるそうだ)。一方で、横に並んで腰かけるということについて、意見を投じている⇒「並んで座ると同じ景色を見ることになる。(中略)並んで座っていると言葉がいらない。一緒にいるという感覚が最初からあるのだ。向き合っているとそうはいかない。何か言葉が必要になる。(中略)向き合っていると二人だけの閉じた世界になるのに対し、並んでいると、世界に二人がいるという感じなのだ」

「介護は介護力ではなくて介護関係である。その基本と最後は母子関係に代表されるエロス的関係である。」


エロス…明鏡国語辞典によると「プラトン哲学で、美と善の理想を求める、純粋に精神的な愛。」という意味だそうだ。
本書で著者が言うところの「エロス化」が何を指すのか、少し分かりにくかったが、専門的知識や、専門職としての技術うんぬんの前に、「人間同士としての関係/愛」を、もっともっと意識していくことが大切!!というかな…と解釈した。

エロスの一つに、客観的な視点を無視し、わが子が一番かわいいと言う母親(母性)があるらしい。それよりも「産んでしまったものは仕方がない」と良い意味での「諦め」が根底にあるような…愛だけじゃ、母性も疲れるよ…と少し思ってしまった
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コミュニティと在宅ホスピス-看取りの文化の崩壊と再生- 矢津剛(2005)

2009-05-09 21:19:07 | 医学
『在宅ホスピスのススメ』-看取りの場を通したコミュニティの再生へ- ニノ坂保喜/監修 木星社

九州を拠点に、在宅ケア/在宅ホスピスに取り組んでいる医師等で書かれた書物。「在宅ホスピスに関するHOW TOもの」は最近よく見かけるようになり、本書もその一つにとどまるかと思っていたが、ホスピスの歴史から実際に活用できるアセスメント方法まで、幅広く丁寧に解説している。

特に、自宅で看取ることは、地域の資源なしでは実現ができないため、いかにして地域にその理念を浸透させ、そして資源を作り上げていくか…に取り組まれている姿勢が、単に「医療サービス」を提供することにとどまらないと、感銘を受けた。
しかし連携に関する記述はどの章においても、「医師、看護師、ケアマネージャーなど」にとどまっており、ソーシャルワーカーの存在が感じられなかったのが残念だ。

引用「終末期ということを、がんの終末期を代表するきわめて医学的なイベントとして捉えずに、誰もが経験する人生の中でも最も価値のある有意義な時間と捉え、その生命の質をコミュニティの中で大事に育むケアを創造していく必要がある」


ともすると、「在宅ホスピス/在宅緩和ケア」は、非常に特化された由々しきもの…と考えられがちだが、50年くらい前は自宅で最期を迎えるのが「あたり前」で、医学的なイベントではなく、その人の集大成を皆で見守るというものであっただろう。
医療技術が進歩し、社会構造も変化し、家族形態も変化し…そのようななかで、「自宅での看取り」再来である。かつての知恵をどのようにとらえ、そして新しい風をどのように馴染ませていくのか…。10年後の日本の「終末期」はどのようなものか?
「ホスピス」や「在宅での死」という言葉が死語となり、そしてソーシャルワーカーの位置づけも明確になっていることを期待する。



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