社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ホスピスボランティア活動における継続要因と関連要因の検討」鈴木聖子ら(2012)

2012-03-13 21:53:51 | 社会福祉学
『社会福祉学 第52号第4号』

ホスピスボランティア継続の評価尺度の開発とその関連要因を明らかにすることを目的としている。
継続要因は4因子抽出され、関連要因として採用した「生き方尺度」との関連があることが示唆された。
*「生き方尺度」…泊真児らによる先行研究(「心理測定尺度集Ⅱ」サイエンス社 2008)を採用。「個人の自律的側面、周囲の他者を尊重し協調関係を築くような社会的側面について肯定的生活態度を測定し、生き方の好悪や賛否ではなく、生き方そのものをありのままとらえようとする点に特徴があり、28項目で構成されている。

引用
・ホスピスボランティア継続を構成する4因子
第1因子:自己成長への報酬
第2因子:自己能力活用の実感
第3因子:自己能力活用の期待
第4因子:環境条件の肯定的認識

・ホスピスボランティアコーディネーターの存在は、ホスピスボランティア継続に関与しており、ボランティアを継続するうえで重要な役割をもっているという結果が出た。


なぜその人たちは、「ホスピスでのボランティアを選択したのか?」…このような根本的な問いは、本研究では対象とならないのかもしれないが、個人的に大変興味がある。
「緩和ケアチームの一員としての活動をしている」と回答した人は約半数いたそうだ。
この位置づけは、活動の継続に影響があることを考察で触れているが、それが「緩和ケアチーム」であるからなのか。それとも所属組織(チーム)が明確であるからなのか、否か。

以前見学をした米国のホスピスでは、ボランティアを希望する人の多くは、その施設を利用した経験のあるいわゆる「遺族」であるそうだ。他ではない、「その施設で」「ホスピスで」という強い思いが前提にあるそうだ。

本研究結果は、「ホスピス」でのボランティアに限定されない結果である印象が拭えない。
なぜ「ホスピス」を選択し、継続しているのか。その部分をより深く知りたいと思った。



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「<大切なものを>を失ったあなたに 喪失をのりこえるガイド」R.ニーメヤー/鈴木剛子 訳

2012-03-08 15:45:32 | その他
グリーフを『大きな喪失体験により、身体、感情、認知、精神、行動面に影響をきたし、そのことで一身上にあらわれるあらゆる「反応」』と定義。
臨床家、研究者、そして一般人への啓蒙書(実践書)として書かれている。
訳者がグリーフケアに精通している方のせいか、訳書特有の「読みにくさ」や「変な日本語の表現」がない。
ニーメヤーを知るための入門書として購入したが、それ以外の研究者についても広く紹介されており、とても読みやすかった。

ニーメヤーは、伝統的なグリーフ理論(段階理論)を批判し、「意味再構築」の立場からあらたな理論を提言している。
引用
構成主義に基づく新しい理論の特徴
①グリーフ体験者それぞれの反応の違いや、ちょっとしたニュアンスの違いを見逃さない
②人間は、自分の現象世界を構築する者であり、文化、ジェンダー、精神性について、他者と幅広くかかわりながら自分の立場を決定していると考える
(グリーフ行為を一つの尺度では比較できないと主張)
③大きな喪失は常にふいにやってくるものだとしても、グリーフ行為自体は能動的な過程であるという信念
④グリーフは私的なものには違いないが、周囲の人の反応にも必然的に影響を受け、その相手によってグリーフは抑制されたり肯定されたりする


今現在、日本の医療機関や研究所、そして企業等がプログラム化しているグリーフケアの理念は、おそらくこのあたりのものを参考にしているのだと思う。
グリーフ反応を受身的にとらえ、静かに時を待つのではなく、自らが取り組み、喪失以前の現象世界を構築し直すという過程を経るものだという主張。まさに「あなたの人生の主役はアナタである」というナラティブの精神が行き渡っている。
その取り組みを支援者はどのように行うか。ひとつ間違えると、「病的」と烙印を押しかねない。やはりグリーフケアは奥が深く、難しい…


「大切なもの」を失ったあなたに―喪失をのりこえるガイド
クリエーター情報なし
春秋社
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