社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「医療ソーシャルワーカーの死別体験後の成長の測定とその関連要因」嶋野朱乃など(2014)

2014-04-28 09:56:26 | 社会福祉学
『医療と福祉』No.95 Vol.47-2

 医療機関に所属するソーシャルワーカーは、患者との死別後にどのような体験をするのか。
死別後も職務を遂行し、そして成熟した専門職者であるためには、どのような要因が影響しているのかを明らかにするため、医療ソーシャルワーカーの成長を測定する尺度を作成し、成長に影響を与える要因を検討している。

引用
・成長を測定する尺度として、先行研究(宅香菜子:2010年「がんサバイバーのPosttraumatic Growth)を参考とした。そこでいう成長とは、「他者との関係」「新たな可能性」「人間としての強さ」「精神性的変容および人生に対する感謝」の4つの領域において生じる新鋭的な成長を含んでいる。
・「調査結果と考察」⇒「医療ソーシャルワーカ(MSW)ー経験年数」の影響はみられなかった。つまり、MSWとしての年数をただ経ていくだけでは成長へと繋がらないということが考えられる。(中略)MSWとしての経験をどのように自らの「経験知」とするのかが、成長に与える重要な要因であると考えられた。


調査結果には、項目に対する回答分布が報告されているのだが、何かが突出して高値を示していることはなかった。
これが意味するところは、「死に往くプロセスに積極的に関与しているMSWが少ない」、「日々の業務に追われ、あえてその場面を振り返る余裕が無い」ということなのではないかと勝手に想像した。
また質問項目に「精神性(魂)や、神秘的な事柄についての理解が深まった」というものがあったが、この回答は「まあまあ経験した」が14.3%、「強く経験した」が7.9%であったとのこと。調査対象が医療機関であるものの診療所は対象外となっていることから、在宅での看取り経験をしたMSWは含まれていないと予想される。もしこれに在宅ケアの従事者が含まれたら、きっと回答比率は違うであろうと感じた。
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「トラウマ臨床とソーシャルワーク」大岡由佳、前田正治、丸岡隆之、松真里(2013)

2014-04-21 10:01:47 | 社会福祉学
『トラウマティック・ストレス』第11巻第1号 2013.6

精神科ソーシャルワーカーとして現場における、トラウマケアの現状について、ソーシャルワーカーの視点から報告している。
事例については一部加工をしているとはいえ、こんなにも苦しんでいる人が社会には存在しているということが、
痛々しく、そしてリアルに感じられた。

引用
・(ソーシャルワーカーの関わりについて)
 第一期:危機対応⇒職種ごとに役割分担をし、SWは情報提供や相談窓口の開設等、窓口の一本化を行った
 第二期:ケアの実際⇒家庭状況等のソーシャルサポートが不十分な状態や経済的問題が症状に関連していると考えられた対象者について、カウンセリングや相談、助言をソーシャルワーカーが中心に引き受けた
 第三期:一周忌の対応(事故から一年後)⇒トラウマ症状は異常な事態での正常な反応であることを伝える心理教育を行った
 第四期:ケアの終結:(ケアの継続が必要な対象者は減少したが)医療が必要と判断された対象者について相談を受け、必要に応じて診察(精神医療)の打診をした
 第五期:アフターフォロー:チームとしてのケアが終了した後も数年後まで定期訪問をし、相談に対応をした

・犯罪被害者の日常の立て直しで必要になることが多いホームヘルプサービスは、一部の市区町を除いて、介護保険や障害者自立支援法の範疇に入らない限り適用されない。



長期間に渡るケアが必要なトラウマを抱えた人への対応は、社会資源の開発、他職種への働きかけ、対象者へのカウンセリング等、本当に多岐に渡っている。
ここまでのケアを提供するためには、相当のスキルが求められるであろうし、援助者側もタフでいなければ務まらないであろうと感じた。
筆者はトラウマケアにおいてはソーシャルワーカーは不可欠な職種であると提言しつつ、その身分保障が不確立であることが問題であると述べている。

どの領域においてもソーシャルワーカーの身分保障は不十分で、それを証明することの難しさを抱えている。
根気強く、そして堂々と実践を積み重ねて欲しいと切に願う。
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