社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅で生と死をささえる支援ー短い命の赤ちゃん誕生と家族」柳原清子(2019)

2019-05-29 21:17:13 | 看護学
『精神療法』Vol.45 No.2

 染色体異常のために、生前から命が短いと分かっていた赤ちゃんの誕生と、遠くはない死に対する支援について、事例を通して紹介している。

引用
・(事例より)Aちゃんの障害が判明した時点で両親(夫婦)は、健康な子を産み育てるという希望を喪失し、そして我が子の命は短いという事実に直面した(予期悲嘆)。
・近い将来の家族メンバーの死を「家族が共に悲しむ」や、子との死別を「夫婦で哀しみを分かち合う」は、とても難しいことなのである。基本的にグリーフはその人個人のものであることをまずは押さえておきたい。

 子の障害が重篤であったがゆえに、手技をこなせる母親が一手にケアを担ってしまうことになり、結果として家族の中で孤立してしまった…事例ではそのような一幕も紹介されていた。そしてそんな母親を支援することに集中してしまった支援者たちは、父親もまた、孤立させてしまったと紹介している。
 子の誕生、育児支援、看取りの支援…ものすごいスピードで場面が展開するなかで、支援者たちはおそらく、常に次の二手三手先までの支援を模索し、検討し、用意していたのだろう。
 医療技術が発達した近代においては、特別な配慮を必要とする子も多く誕生している。病院で在宅で、もしくは施設で、そういった子と家族の支援はますます重要となり、専門特化していくのだろうと考えさせられた。

 
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「三次救急病院における救急認定ソーシャルワーカーの役割」澤井彰、畠山稔

2019-05-11 14:57:47 | 社会福祉学
『医療と福祉』No.105 Vol.53-No.1 2019-5

救急医療の最前線で実践をしているソーシャルワーカーによる報告。

引用
・救急認定ソーシャルワーカー介入事例をソーシャルハイリスク別に分析した結果、「地域とのつながりが不安定であり、医療同意が取得しにくい症例」や「入院適用はないが、在宅療養が困難な症例」に対する介入比率が高い傾向になった。
・(調査結果から、筆者の所属する三次救急病院における)救急認定ソーシャルワーカーの役割は、①救急外来におけるメディカルマネージメントを図る役割②救急外来から地域の開業医・二次救急病院・介護施設と橋渡しを行う役割の二つが大きな①を占めると考察した。


 「散在している業務をどのようにして専門的なものであると位置づけるか」・・・その作業を試行錯誤で行っている様子が伺える論文であった。
 私は10年ほど前に、在宅療養支援診療所に所属するソーシャルワーカーの役割に関する調査を何度が行ったが、「雑務」と片付けられてしまう業務を、「ソーシャルワーカーだからこそ」という位置に整理することに、大変苦労した。しかしここ数年で在宅医療を活動の場とするソーシャルワーカーが増加し、その専門性も認められている。
 
 ひとつひとつに意味をもたせ、専門性があると位置づける作業は、その先のソーシャルワーカーたちの活動の場を広げることにもなる。そしてそれこそが、実践と研究を並行して行う醍醐味なのだと思う。
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