社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「宮城県の在宅ホスピスケア~モデル事業から施策へ~」三上幸恵・南條啓子など(2001)

2009-10-21 14:25:42 | その他
『緩和医療学』vol.3 no.4 2001

在宅ホスピスケアの取り組みについて、事前準備、実践、振り返り、今後の課題について、県職員がまとめている。
これまでは、医師会や一医療法人が行政を巻き込み、結果として地域ケアが実現している…という論文を多く目にした。
行政が主導となって行ったものとして、興味深く読んだ。

引用
①「保健所は、直接に在宅ホスピスケアを実施するのではなく、チームづくりやその支援、調整をするコーディネーターとしてうってつけの機関である」
②『保健所は地域のコーディネーターとして広域での調整などの役割を担い、市町村は「生活の場」で直接患者・家族を支える役割を果たす』


2001年と少し古い論文であるため、現状はどうか、宮城県のHPを検索してみた。最終更新が平成16年ないし18年となっているところが気になったが、県のHPに「在宅ホスピスケア」と明示し、詳細の説明や実施について書かれているのは、取り組みの証ではないかと感じた。
宮城県には、臨床と研究に積極的に取り組んでいる在宅療養支援診療所もある。
「自宅で最期を」という意識を、日本全体が強く意識し始める少し前から取り組んでいるところに、何らかの地域性があるのだろうを感じた。

他県は、行政が主導となって取り組んでいるのだろうか?
東京都は昨年、都民を対象に「在宅医療」についてのアンケートを実施した。また、平成20年3月には、専門職向けの「在宅医療実践マニュアル」を発行した(HPからもダウンロード可能)。

民間だけでは限界がある。引用①のように、行政が後方支援をしてくれたら大変心強い
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「権利擁護で暮らしを支える 地域をつないだネットワーク」

2009-10-07 15:05:05 | 社会福祉学
PASネット・編 ミネルヴァ書房(2009)

成年後見制度の実践を中心とした権利擁護事業を展開しているNPOの活動記録。
単なる実践報告にとどまらず、「権利擁護」という切り口から地域生活をどのように支援していくか。また、そもそも「支援」とは何か?を言及し、とても刺激的であった。

引用
・失敗を避けることが大切なのではなく、失敗を確認していきAさん(文中では固有名詞)に分かってもらえるようにするのが、本当の支援
・権利擁護におけ財産銭管理は、ご本人の「自分らしい暮らし」を支えるという基本的な役割における方法のひとつである


社会福祉士のみならず、法律の専門家、障がいを持つ当事者が支援者となり、その人の呼吸にあわせた支援を展開している様子がとてもよく分かった。
そこまで寄り添えるチカラを素直に「すごい」と感じ、そしてそれこそが「対人援助」なのだと実感した。

私は実践をしていた際に、「予測を踏まえた援助」をしていた。平たくいうと「同じようなケースをこれまでにも見てきたから、この類の問題を抱えたケースは、この先はきっとこうなるハズだ。だから、早めに手をうっておこう」というものだ。
多くのケースを抱え、そのなかでいかにリスクを回避するか…それは大きく間違っていた行為ではないと思う。がしかし、あくまでも支援者側の都合によってたてられた「予測に基づいたリスク管理」であって、利用者の呼吸に合わせたものではなかったと痛感させられた。


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「高齢者の在宅ターミナルケアと訪問看護サービスの現状-福井県の訪問看護事業所調査から-

2009-10-02 12:56:02 | 看護学
安岡文子・春見静子『福井県立大学論集』第27号 2006.2

高齢者の在宅ターミナルケアの現状を、訪問看護ステーションに対する郵送調査で把握している。
訪問看護という事業について、そしてそれを取り巻く施策等についても触れられており、基礎知識を整理するために活用できると感じた。

引用
・ターミナルケアを実施したことがなく、また実施予定もない事業所の理由⇒人材不足と社会的支援不足、採算が合わない
・単独型訪問看護ステーションよりも、病院が併設している訪問看護ステーションのほうが、ターミナルケアを実施しやすい⇒急変時の入院先が確保しやすいから


福井県という地域限定の調査ではあるが、実施上の悩みや取り組みが円滑に行えない理由については、地域差はないのではないかと感じた。

調査結果として、高齢者の在宅ターミナルケアが困難な要因として、「福祉関係者の技術不足」があった。高齢者や家族を支える、ショートステイやデイサービスなどは別の項目で論じられているため、おそらくこれは、福祉従事者のみに限定しているのだと思う。しかし、詳細がなく、何がどう技術不足なのかが分からず、改善をしめす論述も見受けられない。
一方的な批判を受けているようで、少し残念だった。
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