社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「喪失と家族のきずな」日本家族研究・家族療法学会 阪神・淡路大震災支援委員会 編

2011-03-28 07:15:08 | その他
金剛出版 1998年


阪神・淡路大震災の被災者支援について、家族という側面から報告している。
法律家、精神科医、ソーシャルワーカー等、様々な職種からの事例を交えた報告は、心に響く。
被災者に限定せず、喪失体験者に対する支援としても、参考になる点が多い。

引用
・もろく傷つきやすい家族の特徴→
1.夫婦間あるいは家族としての機能に既存の問題がある家族
2.災害が「とどめの一撃」になるほど、すでに多くの問題を抱えていた困窮家族
3.自立できないほど正常状態がずれている家族
4.圧倒的な喪失と心傷を受けたり、構成員が離ればなれになっている家族
5.生き残り罪悪感に深刻に影響されている家族
6.災害によって分裂・解体し機能を失っている家族

・(遺族への訪問活動を通して)家族の喪失体験から生じる悲嘆を始めとするさまざまな感情を癒す基礎となるのも、「共感的つながり」であるといえよう(→スタッフが遺族の近くに存在し続けることの価値を見出だした)


未曾有の被害をもたらした東日本大震災。被災者の心のケアの必要性が叫ばれ、少しづつ始められているようだ。
それらは、今すぐに始められる必要があり、同時に継続的に行われる必要がある。
何をどこまで、何をどの組織・職種が担うか、混乱のなかでの取り組みに、本書は頭の整理になった。


喪失と家族のきずな
クリエーター情報なし
金剛出版
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高齢者ショートステイにおける相談援助に関するカテゴリの生成

2011-03-19 11:32:28 | 社会福祉学
副題:ケース記録の分析を手がかりとして

口村淳 『社会福祉学』第51巻第4号 2011


高齢者ショートステイにおける生活相談員の援助内容について、ケース記録をもとに分析している。

引用〓
・業務は、「利用期間中」の業務と「利用期間外」の業務に分けられる。
・分析結果として、最終的に上位8つのカテゴリが生成された。
1.援助困難ケースへの対応
2.施設での生活支援
3.外部機関への情報提供
4.施設利用に関する相談
5.家族との連絡・調整
6.利用者に関する情報収集
7.円滑な在宅介護の支援
8.苦情対応

・質的研究法は、未開分野の探索的研究において有効である(先行研究からの引用)。


―――――

私は個人的に、この方の論文が好きである。というのも、現場での疑問を研究という作業にのせ、理論的に立証していくという過程が、とても丁寧に書かれているからだ。
大学や研究所で、研究活動そのものが仕事である方々の論文は、とても理路整然としている。それはもちろん熟練されたものとして、学べるものが多い。しかし現場の人間が、現場で起こっている何とも言えない疑問を「ことば」や「かたち」にする時には、この方の論文を参考にすると、整理しやすいのではないかと思う。
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震災から一週間…

2011-03-18 10:22:11 | その他
東北関東大震災から、一週間が経ちました。

地震、津波、原発事故そして計画停電など…まだまだ困難は続くと思います。


被災地の岩手で、被災者でありながらも炊き出しのボランティアをされている友人のお母様がいます。都内の居宅支援事業所では、ネットで計画停電を確認し、独居世帯1軒1軒に訪問し、安全確認をする業務に追われています。また計画停電に合わせ、人工呼吸器を装着している患者さん宅に訪問をしている訪問看護ステーションも多くあります。

皆さんの活動に頭が下がる一方です。
長期間続くであろうこの対策に、支える側が倒れないことを願います。そして今だけではなく、いつも、いつまでも、この事態を記憶に残していくことが、今の私にできる精一杯のことだと思っています。
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「介護支援専門員の高齢者虐待事例への対応プロセスとその促進・阻害要因に関する研究」

2011-03-13 05:57:38 | 社会福祉学
大塚理加、菊地和則、野中久美子、高橋龍太郎『社会福祉学』第51号第4号(2011)

介護者から高齢者への対応について、介護支援専門員が虐待であると判断する事柄と、それを把握したあとの対応とその種類について、どのような要因が絡んでいるのか、郵送調査→分析している。

引用
・在宅高齢者の養護者による虐待は、2008年度には、21,692件(厚生労働省)。
・被虐待高齢者の7割が要介護認定を受けており、8割以上は同居の養護者からの虐待であった(厚生労働省)。
・介護支援専門員の虐待プロセスでは、虐待に関する情報量・源が多いこと、阻害要因として養護者の事情への過度の配慮等が示された。


 「医師により、“明らかに介護者が与えたあざでしょう”と診断され」、最終的にそれが決定打となり虐待として対応した介護支援専門員もいるという。果たして、すべての医師にそれを見極める目があるのだろうか?
 開業医として、患者さん・ご家族に密着した姿勢で診療活動をしている方もいる一方、週に1回のパート勤務の方もいる。問題は、医師が患者さん・ご家族と接する頻度ではなく、「問題視できる姿勢」であろう。医療的な判断は、介護支援専門員では限界がある。それゆえに、筆者が述べているように、介護支援専門員のみならず関係職種に対する徹底した研修が必要であろう。研修はどのように行われるべきか?
 年に数回の「啓蒙活動」では意味がない。米国では、エビデンスに基づいたチェックリストが存在し、どの職種も同じように判断できる材料が用意されている。そしてそれに基づき、指導するスーパーバイザーが組織に配置されている。「養護者を疑いの目でみる」のではなく、養護者もケアを必要としている対象者であるとあらためて認識し、対応を検討していく必要があるだろう。
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「米国ホスピスのすべて 訪問ケアの新しいアプローチ」黒田輝政・服部洋一(2003)

2011-03-07 11:38:42 | その他
 米国のホスピスについて、現場での研修を通した得た情報をもとに、具体的な取り組みのレポートが中心となっている。米国の医療政策・制度については、わかりやすく説明がされており、少し古い文献ではあるが、実態を知るためには有効な文献である。

引用
・ホスピスを含め、米国のソーシャルワーカーは、専門の大学院でソーシャルワークの修士号を得てから実践に当たるのが普通である。(中略)わが国のホスピスが、医療の枠を越え、全人的な支援を提供するためには、この分野の発展に一層の力を込める必要がある。
・「悲嘆」(grief)を自然な過程と見ることが、ホスピスの遺族ケアの大きな特徴だ。積極的な介入を控え、一種のセーフティー・ネットとして、距離を置いて見守る。

・米国ホスピスは、壇上に立つ教師が行うものではなく、親の役割に近い(一部省略)。主役である病人と家族を支え、「病人と家族だけでできること」の周りに、「専門職が手を貸すことでできること」という、可能性の領域を広げるのだ。



 いまでこそ、日本におけるソーシャルワーク援助は、「自立支援」や「当事者主体」といったように、あくまでも援助者は黒子であり、側面から見守り/支援する、というものになってきた。しかしどうしても、「明確な役割を表現したい」と、多く手を貸し過ぎることがあるように思う。
「見守る」というのは、時間もかかり、手間もかかる。しかし、援助者はいつも、いつまでも、患者や家族に寄り添えている訳ではない。いつか自分たちで、色んな困難を把握し、解決できるようになってもらうために、援助者は存在しているのだと、あらためて感じた。


米国ホスピスのすべて―訪問ケアの新しいアプローチ (シリーズ・生と死を考える (7))
服部 洋一
ミネルヴァ書房
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