社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ソーシャルワーカーの立場から-がん患者・家族が、自らのベストサポーティブケアを語るために」

2009-12-30 11:29:18 | 社会福祉学
池山晴人 『がん患者と対症療法』Vol.20 No.1 2009

国立病院に勤務するSWさんの論文。
急性期病院ゆえに、「積極的治療の中断」そして「療養の場の選択」を患者・家族と取り組む必要がある。その場面でSWとして何ができるのか。
ベストサポーティブケアという概念を用いて、SWの役割を再考している。

引用
①「BSC=ベストサポーティブケア」…がんに対する積極的な治療は行わず、症状などを和らげる治療に徹すること。効果的な治療が残されていない場合などに、あるいは患者さんの希望に応じて、積極的ながんの治療は行わず、痛みをとったり、QOLを高めたりすることを目的にしたケアを徹することを指す」
≒緩和ケア

上記のような定義であるが、実際には積極的がん病変治療を担当する医療スタッフにとっては、「治療終了の告知」「終末期の療養場所の選定を促す意味合い」も含んでいることが多い、とのこと。

②心理社会的問題・課題⇒こころ(心理)と暮らし(社会)


①について…「痛み」のケアは、「がん患者」が対象ということが前提となっている。これはきっと、我が国ではしばらくは続く現象なのだと思う。
「痛み」は誰にでもあって、その痛みを軽くするため(緩和ケア)に支援するということが、当たり前になって欲しいと願う。

②について…「SWはチームでどんな役割があるのか?」と問われると、「心理社会的側面のケア」と言ってきた。でもそれが具体的に何を指すのかとなると、「経済的な問題とか、介護問題かな」と、とてもあいまいな言い方をしてきたように思う。
この「こころ」と「暮らし」という表現はとても明解で、私としてはスッキリとした。
臨床心理士さんや退院調整看護師さん、地域の保健師さんやケアマネージャーさん。いろんな職種との役割分担をするうえで、「こころ」と「暮らし」をみつめる職種という説明は、私にとっては嬉しい表現だ。




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「特養待機42万人超」 読売新聞・朝刊(12月23日付)

2009-12-24 15:03:51 | その他
特養の入居待機が全国で42万1259人になっていることが厚生労働省の調査であきらかになった。
そのうち、在宅生活を送っている人が47.2%、病院や老人保健施設など施設で暮らす人は52.8%。


衝撃的な数字に、とても驚いた。
政権交代後は、保育所待機、こども手当など、児童関連の事柄が話題となっていたが、高齢者施策も切羽つまっているとあらためて感じた。

2011年には療養型病床が減床し、あと数十年は高齢者層は増加の一途である。
この数字はあと数年で、倍増しているかもしれない。

在宅生活がベストと考える人。身内よりも他人に世話になったほうが気が楽だからと、施設を希望する人。身内に負担をかけるのがいやだからと、施設を選ぶ人…。
様々な選択肢に対して、いつになったら「第一希望」が実現する社会になるのだろうか。
コメント (2)
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「パリアティヴ・ケアとソーシャルワーク」ヘネシー・澄子(2006)

2009-12-14 14:50:28 | 社会福祉学
『死の臨床』Vol.29 No.1

☆パリアティヴ⇒日本では「緩和」と訳されることが多い

アメリカでは一般的になっているパリアティヴ・ケアにおけるソーシャルワーカーの役割について、「NASWパリアティヴと人生終焉期ケアにおけるソーシャルワーク実践基準」を交えながら、紹介している。

引用
①「パリアティヴ・ケアは英語のパリエート(治療をせずに病気や疾患の症状を軽減または取り除く)という動詞からきて、病気そのものに対する治療が効果を失ったとき、病からくる痛みの軽減と患者を悩ませる他の症状(精神的・社会的問題を含めて)を取り除いて、患者の死に至るまでの生活の質を向上させることを目的としたケア」

②パリアティヴ・ケアでソーシャルワーカーに求められる能力
・家族に(死が迫っていることについて)心の準備をさせる能力
・死、死にゆくこと、悲嘆などの理論を実践に使える能力

③アメリカの高齢者長期入所施設では、入居担当のソーシャルワーカーが、医療に関する遺書の有無などをあらかじめ聞いておく。またその人の好きな色や匂いや音楽など、五感を喜ばせることを記録しておき、後のパリアティヴ・ケアの実践に役立てている。


さすが、ホスピス緩和ケアの先進国!!とうなづいてしまうくらいに、ソーシャルワーカーの役割(責任も含む)が明示されている。そして何よりも、「死」に対してオープンであり、健康なうちから「どのように死を迎えたいか」をきちんと聞いている。
筆者も指摘しているが、日本は「死」がタブー視されており、サービスの導入時に確認することはほとんどないと思う。しかし、いずれはやってくる「死」について、それをきちんと「自分のもの」として考えてもらえるように、援助者側も働きかけていかねばならないだろう。

引用②について、「うわ~」と驚かされた。しかし「死」はデリケートであり、ハードなもの。専門家として向き合うには、これくらいのことは求められて当然だろう。
日本では、緩和ケアについての「概論」的な講習は多く開催されているが、理論を実践に活かせるための(その専門家を養成するための)継続的な開催は見受けられない。
単発での学習も啓蒙的には効果はあるが、養成には限界がある。日本もきちんと取り組みを始める時期にきていると思う。

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「ソーシャルワーク感覚」(2008)横山登志子

2009-12-02 15:40:12 | 社会福祉学
筆者のPSW経験時に疑問に感じたことが、本論の基礎となっている。
「ソーシャルワークって何?」「ソーシャルワーカーとは…そもそも援助するって何?」ということについて、インタビュー調査を実施し、考察、結果をまとめている。調査分析には、グラウンデットセオリーを用いている。

博士論文に追記、修正を加えたものなので、理論や歴史的背景などの記述も丁寧。
「ソーシャルワーカーが考えるソーシャルワーク」を「科学的に分析」しようと試みる姿勢に共感した。

引用(主にインタビュー調査の回答結果から)
・『知識の窓を開いておく』とは、知識や理論、技術や情報を積極的に吸収し、理解のために枠組みを得ることで自分の実践の方向性を得たり、振り返ったりすることである。
・外在化とは、出来事そのものや、ものの見方から少し距離をおいて、もういちど吟味し直すことである。
・『生活の場にその人らしさを見出す』とはどういうことか…というインタビューに対する回答:
①「生きているっていうことは、何らかの価値があるんだろうなと思う。その価値を感じるところに、一緒にいられればいいなと思います」
②「その人のあたりまえさというのを保持しようとする、守り抜こうとするひとつの態度」


感覚を声に出し、そして言語化するのはとても難しい。でもその声が多くなればなるほど、単なる「感想」や「意見」にとどまらず、何かを動かすチカラになる。
ソーシャルワーカーの仕事は、未だに一般の人には十分に知られていない。
だからこそ、どのような仕事か問われた時に、自分なりの答えを持っていたいと思う。
その答えを見つけるのに、本書はとても役に立つように思う。
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