社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「医療ソーシャルワーカーの役割のあいまい化からみる専門職性についての検討‐役割理論と組織システム論の観点から‐」大賀有記

2017-02-28 11:24:04 | 社会福祉学
『社会福祉学評論』第14号 2014

 医療機関に所属するソーシャルワーカーの役割は、常にその存在意義が問われている。本論文は文献研究を通して、医療ソーシャルワーカーの専門職性を検討している。
他職種との連携のなかで悶えるソーシャルワーカーにとって、どこが「すっきり」することができる、そんな論文だと感じた。

引用
・より高度な専門性を有したソーシャルワークの担い手として組織や社会から認められ、ソーシャルワーカー自身も自認するための、他職種との違いは何だろうか、それは視点の相違ではないかと考える。
・個人の尊厳を保った生活を社会的に保証するところにソーシャルワークの礎があるといえ、それを担う適任者は歴史的に見てもソーシャルワーカーであるといえるのではないだろうか。
・ソーシャルワーカーの役割の構成要素の中の規範において、個々の人権を守ることなどのミクロ的な要素が強いものの一部は他職種とも共有可能なものであるが、社会変革や社会改良、社会的結束までのマクロレベルの規範は他の対人援助職と異なるといえる。
・病院組織の一構成員であるソーシャルワーカーが社会全体を志向していることは、病院組織の社会貢献にもつながるため、病院組織はミクロからマクロまで循環するジェネラル・ソーシャルワークを専門的に担うソーシャルワーカーの独自の役割を認めることができるのではないだろうか。


 組織間連携や生活相談等について、他職種が担うことでソーシャルワーカーの役割がぼやけてしまう。そして「必要ないのでは?」という思考に陥ってしまう。そういった経験は多くのソーシャルワーカーが一度は経験しているだろうと思う。
 「視点が違う」「相談技術が長けてる」と他職種との違いを述べてみても、それはどこか虚しく、説得力がないと返されてしまうこともあるだろう。
しかし本論文が指摘しているように、ソーシャルワーカーは対個人の援助にとどまらず、組織全体や地域社会、そして社会全体を見据えて個人と向き合うこともある。そこに専門性があり、力量が発揮できるのだろうと改めて考えさせられた
 ソーシャルワーカーは、もっと自信をもっていい。そして自分たちの活動について、もっともっと広く知らせていくことも必要だと思った。
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「退院支援過程における退院調整看護師とソーシャルワーカーの判断プロセスの特徴」 石橋みゆき、その他9名(2011)

2017-02-13 21:32:54 | 看護学
『千葉看会誌』VOL17. No.2 2011.12

退院調整プロセスにおける両職種の共通点とそれそれの特徴を明らかにし、職種間協働のあり方を検討している。

引用
(退院調整看護師及びソーシャルワーカーへのインタビュー調査結果より)
 ⇒・看護師が語った事例は終末期にある患者の退院支援が多く、SWは複数の課題を抱える慢性疾患の事例を多く挙げた。
  ・とくにSWは、依頼者である院内スタッフが把握した情報に加え家族と本人の関係性を慎重に把握する特徴があった。

(インタビュー調査結果を受け、考察より…)
 ・問題解決へのアプローチにおいては、看護職がまず患者の身体的問題に着目し、医療的観点からの解決策を第一に求め、次に患者を取り巻く環境を整える順で支援を進めるのに対しSWは患者を含む家族員全体の関係性に着目し、問題点を見出し支援策を検討していた。


 退院調整を2職種で行う医療機関の多くは、業務内容を役割分担するのではなく、医療的なニーズが高いケースは看護師、複数の生活課題を抱えているケースはSWと分担しているようだ。
 退院調整に限定せず、チームとして支援を遂行していくなかで、業務を分担するのか。ケースに対する担当制(分担)にするのか。
 業務独占の部分は、もちろん業務分担はできない。しかし連携だったり、コーディネートだったり、社会資源の紹介だったり。どの職種でも対応できると言えばできるけど、質を求めるのであれば、専門に対応するスタッフがいたほうがいい。そう感じる業務もある。
 在宅医療の領域では、新しい認定資格が誕生してきている。多くの人が効果的に支援を受けられるのであれば、それは望ましい傾向だけれど、支援をすることの本質を置き忘れて、単なる話題作りで終わって欲しくないと願う。
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