副題:傷害事件・暴行事件についての裁判調書の事例分析から
『社会福祉学』第62巻第2号
施設内虐待事件の裁判調書をもとに、事件を詳細に分析し、虐待予防について考察を深めている。
日ごろはニュースなどで概要を知ることにとどまっているが、裁判調書は場面を詳細に記録しているため、
その残酷さと身勝手さに、目を覆いたくなった。
引用
・(分析結果から)「職員が職員として働き続けられる」ように、「業務をこなすという作業人ではなく、対人援助の専門職として働き続けられる」ように、施設・法人、そして行政機関が職員へのフォロー体制を整えることが必要である。
・(事件の要因・背景を分析した結果として)①施設の人材育成の問題が虐待行為と関連していること、②職員間コミュニケーションの不足が虐待行為の慢性化に影響していたこと、③施設・法人の虐待問題を隠蔽しようとする考え方は職員間に広がり、職員の退職にも影響を及ぼしていたことが明らかになった。
残念なことではあるが、勤務先の特養でも不適切ケアが後を絶たない。その都度、市に報告し、第三者機関の弁護士さんに相談をし、「意識を高めてもらう」という目的で研修をし…。それでも半年過ぎると、同じことが繰り返される。市は事故報告を義務付けるだけではなく、虐待予防のための講師を派遣したり、人員不足の部分について真剣に向き合ってくれないかと、憤りを感じることもある。
最初から、自分が虐待をする側になると思っている人はいない。本論文でも指摘していたが、「人員不足→未経験であっても充足のためであれば採用→経験者が少ないために教育が行き届かない→燃え尽きて(疲弊して)仕事を辞める→人員不足…」という負のループから抜け出すためには、一組織の情熱だけでは不可能である。今後、介護職の増員が不可避である現実をみると、自治体が本腰を入れないと、どうにもならない域に達してしまうだろうと恐怖すら感じる。