社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「所在不明高齢者」と「社会的ネグレクト」副田あけみ 『高齢者虐待防止研究』No.7

2014-08-06 12:58:33 | 社会福祉学
親族による年金不正受給等が発生し、住民票はあれど姿はなし…という高齢者の存在が浮かび上がっている。これを単に親族のみの責任にせず、社会的な問題(社会的ネグレクト)であるという点から論じている。

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(引用)
・家族が行方不明高齢者の捜索を途中であきらめたとか、当初より捜索願を出さなかった、という事実を、家族の無関心、家族絆の衰え、として理解するのではなく、そうした事態が起きる以前から高齢者と同居家族へ届くべき支援が届いていなかった「社会的ネグレクト」の一例として理解し、そうした事態を少しでも防いでいく方法を、援助職は率先して検討すべきではないのか。
‐‐‐
周囲からの支援のニーズをもつ人々の決定(例:迷惑をかけたくないから、世話にはならない)を本人の自己決定だからといって、支援の手をただちに引っ込め、そのまままにしておくのは、援助職による「社会的ネグレクト」といえる。という指摘がある。
もっともである。しかし、個人情報保護の壁に、未だにぶつかる場面がある。まずは危機感の共有…そこからがスタートだと考える。
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「低所得高齢者の生活と尊厳軽視の実態 死にゆきかたを選べない人びと」 大友芳恵

2014-08-04 06:29:38 | 社会福祉学
法律文化社(2013)

所得は、その人の晩年の過ごし方に影響を与える。それは医療や介護サービスの受け方だけではなく、余暇活動や他者との交際等にも影響が及ぶ。これらを量的、質的調査を踏まえて丁寧に分析している。

引用
・食費のやりくり、生活費のやりくりは、年間収入100万円未満の高齢者に顕著にあらわれている。
・切りつめたくとも、なかなか切りつめにくいとの回答が多く聞かれた費目は交際費である。
・(年間収入)150万円が「切りつめるか」「切りつめはしない」かの分岐点となっている。
・(インタビュー調査による語りより)「医療が充実したことで逆に苦しみながら長生きをしているようで苦しい」「切り詰めた生活のなかで、ひとりで暮らしていくという無力感や孤独感とどう向き合っていくべきなのか…これからの大きな課題だと思うよ」
・(年間収入)100万円未満群では民生委員とのかかわりがほとんどみられない高齢者が多いが、200万円未満群では親族や民生委員、近隣とのつながりがみられる。
・低所得の高齢者からは「俺は自分の墓もなにもいらん。川か山にでもまいてくれればいいや」や「後は死ぬのを待つだけ」といった語りが聞かれた。この語りに見られるように、死にゆきかたに多くを望まない姿は禁欲的でもあるが、受動的な忍耐を伴う自尊心が失われていく感情とも思える。


 所得が低いと、人との繋がりを維持しにくくなり、そして生きていくためのサービスも受けにくくなる。
 昔々は、お金がなくとも地縁があり、お互い様の気持ちで過ごしてきたことも多いだろう。
 インタビュー調査の語りは、ひとつひとつが重く、そして自分の今後の生活についても、考えさせられた。


低所得高齢者の生活と尊厳軽視の実態: 死にゆきかたをえらべない人びと
クリエーター情報なし
法律文化社
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