社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅の緩和ケア普及 国のがん患者療養プロジェクト」(読売新聞・2011年6月29日 朝刊)

2011-06-29 11:02:55 | その他
在宅療養を望む人たちをサポートするため、国が取り組んでいる「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)」について紹介。具体的な取り組みについて、長崎市を取材している。

引用
・プロジェクトに取り組んだ結果、緩和ケアチームがかかわった患者のうち、在宅に移行できた割合は、実施前の2%から昨年は22%に急増した。
・09年に自宅で死亡した人の割合は全国で12.4%。だが、がん患者に限ると7.4%と低く、病院と在宅医療・ケアの連携不足や、緩和ケア体制の不十分さが指摘されている。


記事のなかで、ある医師のコメントに『以前は、患者の意向より、医療的処置の必要度の高さや独居かどうかで「在宅は無理」と頭から決めつけることも多かった』というのがあった。これはまさに私も経験したことで、今でもこのような姿勢でケアに従事する人も少なくないと思う。これはケア従事者の考え方うんぬん…ではなく、まずは、そう考えざるを得ない環境(制度やサービス等)が存在していることに問題があるのだろう。

ハード面での改善がすぐに難しいのであれば、まずはソフト面での改善から。それには、この記事内にも指摘があったが、「病院と在宅の顔の見える多職種連携」が必要であろう。

患者の意向を実現するために…という姿勢は、結果としてケア従事者の「充足感」にもつながるのではないだろうか。
試行錯誤しながら話し合い、どうにかして患者の意向を実現できないか…というプロセスとそれが達成できた時の想いは、なんとも言えない味わいがある。
国のプロジェクトとしてだけではなく、まずは町の中での小さな連携からでもいい。多くの事業所、多くのケア従事者の線がつながっていくことを願う。
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「世帯の経済水準による終末期ケア格差-在宅療養高齢者を対象とした全国調査から-」

2011-06-20 15:12:34 | 社会福祉学
杉本浩章、近藤克則、樋口京子『社会福祉学』第52巻第1号 2011

 全国の訪問看護ステーションを対象とした、ステーションを利用した後に死亡した高齢者の調査研究。調査自体は1999年のものである。経済格差は、終末期ケアにどのような格差を生み出すかを分析している。

引用
・利用者世帯の経済水準を5群に設定…生活保護世帯レベルの経済力を「低い」として、担当看護師が判断
・看取り場所の家族の希望は、経済水準が「普通」以上の3群では、「自宅での看取りの意思表示あり」の割合が6~7割程度であったが、経済水準が低い2群では、共に5割台と少なかった。
・経済水準が「やや低い」世帯と「低い」世帯では、より多くの福祉等サービスを利用していた。
・考察より⇒「終末期ケア格差」解消に向けたソーシャルワーカーの取り組み…不利な条件にある患者への支援をよりていねいに立案・実施することが求められるだろう。


 「お金がなければ、死にたいところでは死ねない」…これは現場にいたときに、多くの利用者さんから身を持って教えられた現実である。これを科学的に立証したのが、本研究であると感じた。

 なぜ経済水準が低いのか。この裏付けが提示されていないのが残念であるが、経済水準が低いほどサービスの利用率が高いということから推測すると、主介護者等に「定職につきにくい」何らかの事情(障がいや疾病)があるのかもしれない。そうであれば、より多くの関係機関と協働し、意思表示を表明してもらうように努めたり、共倒れにならないより手厚い支援が必要となってくるだろう。
 
 本研究は、経済格差と終末期ケアの関係性について取り上げた、貴重な研究であると思う。しかし、調査そのものは12年前のものであり、介護保険以前のものである。
 調査研究は時間も費用もかかり、とても困難な作業である。しかし、12年前の材料を再分析するのは少し無理があるのではないか?という疑問はどうしても払拭できない。


 
コメント (2)
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「緩和ケアにおけるナラティブ医療倫理」宮坂道夫 『緩和ケア』Vol.21 No.3 MAY 2011

2011-06-07 09:56:41 | 医学
「緩和ケアを拓くナラティブ」という特集の一論文。
ナラティブは、その人の物語を聞き、その人らしさに寄り添う…という意味だったのでは?と思い、
緩和ケアと組み合わせることに違和感があった。
この論文を読んで、少しだけ違和感を取り除くことができた。

引用
ナラティブ医療倫理とは?
⇒・臨床実践の中で倫理的問題をどうやって見出し、対処すべきなのかという方法論の1つである。
 ・1980年代後半に、シャロンによって提唱された。それまでの自律尊重、無危害、恩恵、正義などの倫理原則によって、
  倫理問題の論点を整理する方法である原則主義を批判しながら登場した。
 ・医療従事者と患者との関係を、対立的・契約的なものではなく、対話的・ケア的なものとして捉え直そうとする。つまり、
  医療従事者が「外部」から突きつけてきた「契約」のような医療倫理を、個々の医療従事者の「内面」から発する「対話
  へのコミットメント」に転換しようとしてきたといってようかもしれない。



 「いまさら」感、「とってつけた」感が払拭された訳ではないが、これからの理想的な医師:患者の関係をよりクリアに説明しようとする一方法だと解釈すれば、、こういう理解もあるのかもしれない。
 しかし、医師と患者の「契約」のもとの関係は、在宅医療ではそれほど強固に感じられないように思う。医療サービスの提供の場が医師、患者のどちらの土俵にあるのか…によるのかもしれない。
 

緩和ケア 2011年 05月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
青海社
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