社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「How To Go On Living When Someone You Love Dies」その4

2011-04-30 10:53:31 | 洋書
第8項では、家族構成員を亡くした後の家族の再編成について述べている。

※( )内は管理人による解釈
引用→
・家族構成員を失った後、その喪失に対応しながら健康的に生きていく…このプロセスを「役割の再編成」と呼んでいる。

・家族システムには、重要な2つの原理がある。①家族(という集合体)は、個々の家族構成員に影響を与え、個々の家族構成員は家族(という集合体)に影響を与える。
②(家族内)のバランスを意識する。
…家族がその機能を果たし続けるためには、家族構成員各々が、(家族内の)コミュニケーションの取り方、(どのように生きていきたいか等の)期待、新しいルールを創造し、発展させていく。それらはその家族の信念、価値観、対処方法、家族内の関係性によって決められる。

-----
喪失が家族にどのような影響を与えるのかについては、すでに多く報告されている。にも関わらず、本書を読めば読むほどに、グリーフケアは個人を対象とするだけでは完結せず、家族や地域社会にも視野を広げ対応していかねばならないということを、痛感させられた。 家族システムや人と社会との関係性について教育を受けているソーシャルワーカーには、グリーフケアに貢献できる可能
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「How To Go On Living When Someone You Love Dies」その3

2011-04-29 09:31:15 | 洋書
6項では「突然の死と予期された死」の悲嘆について述べられている。

※( )内は管理人による解釈
引用→
①なぜ予期悲嘆が大切か?
…何かを言うこと(伝えること)、行うことを可能にする。それは愛する人を失う人だけではなく、病気の中にいる人(死にゆく人)にも言えることである。さらに、愛する人を失ったその後の人生を、より積極的(肯定的)に想像することにつながる。
②予期された死は、実際には突然の死である時(ということもあり得る)
…人の「死」の予測は、(受け入れる)その人の考え方や状況によるものである。周囲の人や社会が「死は予測されていた」と認識するものではない。死が突然のものであったか、予測されたものであったかは、愛する人を失った人がそれを知った時間の長さによって決まるのではない。その人自身の気持ちや状況によるものである。


-----
引用②に沿って考えると、今の日本では余命の告知は浸透しつつあるものの、「言いっぱなし」にとどまっていると感じる。援助者が伝える、イコール予期悲嘆の準備に入れるというものではないだろう。その後に寄り添い 、その人なりの予期 悲嘆が認識できる支援が大切である。
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「How To Go On Living When Someone You Love Dies」その2

2011-04-26 10:24:59 | 洋書
1章5項では、性差における悲嘆感情の表出の違い、必要とするケアの違いについて述べている。

引用→
・(男性は分析的な思考を有し、女性は感情的な側面を多く有している。それらは社会的役割から発した各々の特徴である)-という説明を踏まえて…
グリーフにおいて、男性は問題を解決することを望み、女性は「グリーフとは何か?」という感情を探究することを期待する。そして他者によって、自身が抱く感情は正しいと認識されることを望む。
例として)子供を失った時、夫は妻に対して、パートを始めたり新しい趣味を持つことをすすめる。 しかし妻は、「痛みを聞いて欲しい」と望み、夫に対して「子供を失ったという感情はないのか」と感じてしまう。
-----
男性は頭で、女性は心で物事を考えるということは、体験的に理解しているが、理論立ててケアに結びつけるという試みは少ないと思う。男性は仕事があり、そのために「悲しんではいられない」もしくは「悲しんでいない」と認識されることもあるが、表出の仕方が女性と異なるだけであって、決して「悲しんでいない」訳ではない。グリーフケアに関わる看護師、臨床心理士、ソーシャルワーは女性が多い。性差をきちんと認識する必要がある。
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「How To Go On living When Someone You Love Dies」(大切な誰かを亡くした時、どのように生き続け...

2011-04-25 11:06:51 | 洋書
Theres A.Rando,Ph.D. 1991


筆者は精神科医。
専門家向けというよりもむしろ、広く社会一般に対する啓蒙書という印象を受けた。

※管理人による訳。一部意訳や補足説明
あり。

【本書の構成】
第1章 グリーフについて学ぶ(グリーフとは何か)
第2章 グリーフは死の形態によって異なる (死の形態別のグリーフ反応について)
第3章 グリーフと家族
第4章 グリーフが解決すること(グリーフが解決するということは、どのようなことか)
第5章 援助をしていくこと(援助形態について)

引用
・グリーフとは?を説明する5つの重要項目
①グリーフは、精神的(感情、思考、態度)、社会的(他者との触れ合い方)、身体的(健康状態や身体的反応)によって経験される。
②グリーフは、時間を超えて、様々な変化を含みながら、展開し続ける。
③グリーフは、自然な反応で予期できる反応である。グリーフが見られないことのほうが異常である。
④グリーフは死に限らず、あらゆる種類の喪失にみられる。
⑤グリーフは、喪失に対するその人の理解に基づいて表出される。他者によって認識づけをされる必要はない。



グリーフケアの定義は、日本においても定着しつつある。
しかし原文を読むことで、解釈が改められたりする。特に④については、日本では「死別=グリーフ」と解釈されがちで、
死別者のみのケアが注目を集めていることも少なくない。
今一度理解を深めるために、役に立った。


How To Go On Living When Someone You Love Dies
クリエーター情報なし
Bantam

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「家族を支え続けたい!ナースが寄り添うグリーフケア」

2011-04-22 14:58:09 | 看護学
宮林幸子 『コミュニティケア 2010年 6月臨時増刊号』

グリーフケアの成り立ち、定義、現状と課題など、丁寧に簡潔にまとめられている。
臨床での取り入れ方についても触れられており、参考になる点が多い。

引用
・残された人々の悲嘆と、個人の悲嘆の消化作業とその過程を含めて悲嘆の作業(グリーフワーク)と言う。
・日本人の悲嘆の心的反応は、①思慕、②疎外感、③うつ的不調、④適応対処の努力、の4要素が中核になる。
・悲嘆相談時の介入方法は、情報的・情緒的・道具的・治療的介入の4つにまとめることができる。
・(グリーフケアにおける)医療ソーシャルワーカーの役割:人間関係図やジェノグラム(家族構成図)のほかにエコマップ(ソーシャルサポートに有効)を用意できる大きな強みがある。〈中略〉看護師との連携による情緒的・情報的な援助のほかに、道具的な援助の手を差し伸べることもできる。



緩和ケア病棟や高齢者施設において、終末期加算が認められたが、それはあくまでも「本人が亡くなるまで」のケアに対してであり、家族の予期悲嘆~死別後の悲嘆は含まれていない。
終末期加算があることで、看取りの姿勢の取り組みが促進されつつあるが、場所も時間軸も制限されている。
ソーシャルワーカーの配置がない組織も多いが、医師や看護師による取り組みに限界があるのであれば、今こそソーシャルワーカーがその機能を発揮できるということを示していく必要があると考える。


ナースが寄り添うグリーフケア―家族を支え続けたい!
クリエーター情報なし
日本看護協会出版会
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「生命・生活の両面から捉える 訪問看護アセスメント・プロトコル」

2011-04-21 16:18:04 | 看護学
山内豊明 監修/岡本茂雄・編集 中央法規 2009


看護診断→看護計画についてのフローチャートを提示。これを活用することで、看護師によってアセスメントが偏るという問題を回避できるとのこと。
看護師にとっては、実践に盛り込みやすい材料であり、他職種にとっては、看護師が捉える視点を理解することを助け、また症状から何が派生するのか、といった医療知識を得る上で役に立つと感じた。

引用→
・厚生労働省は、施設での終末期の医療費を月に112万円と想定しているが、一方在宅での終末期を試算すればケースにもよるが、50万円内外である。
・(先行研究からの引用)痛みの感じ方に関する因子
【痛みの感じ方を増強する因子】
不快感 不眠 疲労 不安 恐怖 怒り 悲しみ 抑うつ 倦怠 孤独感 社会的地位の喪失
【痛みの感じ方を軽減する因子】
他の症状の緩和 睡眠 理解 人とのふれあい 創造的な活動 緊張感の緩和 不安の減退 気分の高揚



訪問看護の役割は、家族・親族が患者を援助することを援助する…とのこと。
確かに在宅においては、家族は介護の担い手であり、時には看護師と同様の医療処置を期待されることもある。しかしながら、家族も一生活人であり、単なる介護者にとどまらない。この視点こそ大切であり、ソーシャルワーカーの役割が期待される側面であると考える。


訪問看護アセスメント・プロトコル―生命・生活の両面から捉える
クリエーター情報なし
中央法規出版
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「救命救急センターにおけるソーシャルワーク実践~自殺関連事例の検討からみえてきたもの」

2011-04-18 09:59:04 | 社会福祉学
岩間紀子ら 『医療と福祉』No.89 Vol.44-2

自殺未遂患者への関わりについて、患者の特性や特性毎のアプローチ(事例)を通して、アセスメント方法を提示している。

引用→
・わが国における自殺者数は、一日平均約90人が自殺しているという異常な状況である。
・(本研究の対象事例中)統合失調症や人格障害といった精神疾患を抱える事例への介入依頼は4割となっている。
・自殺予防のためのソーシャルワークの特質
①瞬時にアセスメントすること
②排除からの脱却
③メッセージ性の強いアプローチ


---ー-
「なぜ死んではいけないのか?」という問いに、真っ正面から向き合うことが、この領域におけるソーシャルワーク実践の根本となるであろう。
単に生活問題への解決を支援するだけでは解決に至らず、かといって「命とは」を共に掘り下げて考えていくには、入院中という期間では困難であろう。
退院後、いかにして見守りの目を増やしていくか…これがソーシャルワーカーならではの支援方法の一つであると考える。
精神科受診を拒む患者が多いと報告されていた。そうであれば、保健所や障害者センターに働きかけていくことも必要かもしれない。
そしてそういった社会資源を国として整備していくことは、絶対要件であると感じた。
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「遺族を傷つけないためのご遺体の扱い方」橋爪謙一郎

2011-04-16 09:14:28 | その他
『EMERGENCY CARE』 2011 vol.24 no.2

葬儀社の立ち場から、看取り後~火葬におけるグリーフケアの対応について述べている。
保健医療福祉関係者以外からの報告について、違った角度からのグリーフケアを知ることができ、新鮮であった。

引用
・グリーフケアにおいては、①病院での死亡確認から自宅への搬送、②納棺、③最期のお別れから出棺、④火葬場という場面を経る中で、遺族が死別を現実のものとしてとらえていくと考えられている。

・故人の表情を整えていく際、もちろん化粧などの専門的な知識を持っていることはとても重要だが、それ以上に重要なことは、遺族が故人に対してどのようなイメージを持っているかについてお話しを伺っておくことである。



在宅医療においては、死後の処置を看護師や介護士とともに家族が行うということが多いと思われる。そのことは、「死」の受け入れを手助けしたり、援助者側としては、家族が死とどのように向き合っているかを知る機会となる。
病院で向かえる死とその後の過程と、在宅で迎えるそれとでは、異なる場面が存在するであろう。
しかしグリーフケアにおいては、どの領域であっても同様に行われるべきであり、格差があってはならない。
どの立場でどこまで担うのか(担えるのか)、自身の可能性と限界を知る必要があるだろう。そのことで、他職種(他組織)との連携も円滑に進むと考える。


エマージェンシーケア 24巻2号
クリエーター情報なし
メディカ出版
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「遺族の動揺が激しく、興奮が収まらないとき」久保田千景

2011-04-15 08:36:29 | 看護学
『EMERGENCY CARE』2011 vol.24 no.2

救急領域におけるグリーフケアについて、家族理解に役立つシステム論の説明や事例を踏まえて論じている。

引用
・救急領域でのアセスメント内容
①家族の発達段階
②家族システム(サブシステム)、死亡した家族成員とほかの家族構成員との関係性、家族役割(死亡した家族成員の家族役割機能)
③家族成員を支援している家族成員
④救急搬送、入院に至るエピソード(交通事故、自殺、脳出血、慢性疾患の増悪など)



グリーフケアの領域からみると、「概論」に近い内容となっている。そのため、救急領域という範疇にとらわれずグリーフケアの基本を学んだり、グリーフケア業務に組み込んでいくという時に活用しやすい資料が多い印象を受けた。
緩和ケア病棟や在宅緩和ケア以外にも、こういったケアが導入されつつあることを嬉しく思う。

エマージェンシーケア 24巻2号
クリエーター情報なし
メディカ出版

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「その日の前に」重松清

2011-04-14 16:30:26 | その他
「死にゆく」「看取る」を題材にした短編小説。
死を迎える準備期間を描いたもの、余命宣告を受けたと知らされた周囲の人間の葛藤など、小説でありながらも考えさせられ、胸に響いた。

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ご遺族によって書かれる「闘病記」とは異なり、患者・家族から医療者への要望や同病者へのメッセージ等ではない。
しかしながら、苦悩や葛藤が冷静に、かつ丁寧に描かれていて、こういう立場にある人たちに何ができるのか…と考えさせられた。
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