社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

在宅ホスピスケアにおける家族の心理・社会的ニーズ-その構成因子と満足度の関係- 徳山磨貴

2008-04-30 23:04:53 | 社会福祉学
『ソーシャルワーク研究 Vol.32 No.1 2006』

関西の公立病院に勤務するソーシャルワーカーの論文。
とある学会(社会福祉学会もしくは、日本医療社会事業学会)での発表を聞いたことがあり、とても簡潔で的を得ている!と感激した覚えがある。

「家族」を「介護者」ではなく、「がん患者と共に生活をする人」として扱い、そのニーズを導き出し、今後の課題を提起している。

ソーシャルワーカーが書いたものであるため、うなずけるものも多く、理解しやすい。


「医療者との関係が良好であるからこそ、その他の心理面・社会面のニーズが生まれる。しかしそれを充足させることは、今は不十分である」という指摘は、「よりよい生活」をサポートできるソーシャルワーカーの出番だ!と感じた。
また、病院→在宅への移行は医療者同士の申し送りでなされていることが多く、このことで、「心理・社会的視点」が欠落させた状態を継続させてしまっている-点を指摘。
その視点、より具体的に検討していく余地があるだろう

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人はこのようにして死ぬことができる-在宅ホスピス十年の経験から- 小笠原一夫(2002)

2008-04-28 11:23:59 | 医学
『生と死の意味を求めて NPO法人生と死を考える会・編』

麻酔科医の実践報告。
「どうしたら在宅でホスピスが実現できるか」ということについて、10カ条を提示。
その中の一つに、「医療以外に必要な援助をコーディネートすること」がある。この「コーディネート」をどの職種が担っているのか、また担うべきか…については述べられていない。しかし、医療者が毎日訪問をしても、一日24時間の中でたかだか1~2時間にすぎず、あとの22時間は、主に家族が介護を担うことになる。その点に対しての「援助」が必要であり、「コーディネート」が必要である…と述べている。
介護保険対象者であれば、おそらくその役割は主にケアマネージャーになるだろう。40歳未満の方であれば、それはソーシャルワーカーが担え、業務の可能性を明示できるだろう。


「看護学」では、コーディネートは「看護師の役割」と記していることが多い。しかし医師が書いたものは、その限りではない。看護師もまた、業務の可能性を模索している中での記述なのか…。
業務範囲の争いをする必要は全くない。でもおもしろいことに医療の現場では、医師よりもむしろ看護師の活躍が広がっている印象を受ける。
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在宅医療とケア-訪問歯科診療から見えてきたこと-五島朋幸(生と死の意味を求めて 2002)

2008-04-26 11:40:47 | 医学
『NPO法人 生と死を考える会』編

新宿区で訪問歯科診療を行っている、開業医の講演内容。
「歯科医」という立場から、在宅医療について分かりやすく説明しており、自身の考え方もとても丁寧に述べている。

・主に先端医療を中心に発展してきたわが国の医療は、「疾患を治すこと」が目的であった。しかし在宅医療は、「よりよく生きるためのバックアップ」が目的である、と述べている。
 →さまざまな問題をクリアにすることで、よりよく生きることが実現しやすくなるだろう。この定義から考えると、ソーシャルワーカーの持つ視点(いわゆる心理社会的)の意義が、とてもすんなりと受け入れられる。

引用
「そもそも医学というのは自然科学(理系)の学問です。社会科学(文系)のような「倫理学」「社会学」といった感性を持った人材が医学関係者の中に少ないという現実があります。」
 →生活をバックアップすることが在宅医療というならば、ここの穴埋めをする必要があるだろう。ソーシャルワーカーの専門性はここにある?


「ソーシャルワーカー」という言葉は一つも出てこないが、「医師にも限界がある」的な発言が見え隠れしている印象を受けた。

「在宅医療とは、よりよく生きるためのバックアップである」そしてその中でのソーシャルワーカーの役割は、「よりよく生きるために、さまざまな問題をクリアできるよう、心理社会的な面からバックアップできる職種である」
…教科書によく出てくる言い回しだが、この本を読んで、今、すんなりと思い出し(思いつき)、受け入れることができた

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在宅医療における生と死 英裕雄 ハナブサ ヒロオ(生と死の意味を求めて 一橋出版 2002)

2008-04-25 14:08:33 | 医学
NPO法人 生と死を考える会・編
「生と死と考える会」の講演内容を文章化している。
新宿区でクリニックを開業している医師による講演。

興味深い言葉…
①日本の社会にはまだ「死」のコンセンサスがない。そのため医師は、本来の機能である「人をとことん助ける」ことになる
 →「死」が自分にとってどのようなものなのか、そして家族はどう考えているのか…事前の意思表明がなく、また医療者もギリギリにならないと意向を確認しない…そんなことがこういう事態を招いているのだろう。医師もまた、迷っているのだと感じた
②急性期治療を終えた後に、療養型の病院に入院せざる得ない人たちもいる。そこでの臨床経験から、療養型病院は「出口のない医療を行っている」と表現している。そこに勤務しているスタッフの質の問題ではもちろんなく、受け皿がなく、「帰れない」人を生み出している社会に問題があると提起している。 
 →この本の出版から約6年経過しているが、その事態に大きな変化はないように感じる。また、良くない意味で「在宅」が最後の砦となり、どんな状態であっても「帰らされる」という状況も生まれてきていると感じる。


在宅医療の特徴について、6点挙げている
そのなかの一つに、「在宅医療はチーム医療である(ケアチームの良し悪しが成否を決める)」というのがある。
ここには、「患者さんにとって」に限らず、「医師にとってもチームが必要」と書かれている。
おそらく、在総診をとらないいわゆる「往診」のみを行うのであれば、医師と看護師がいれば成り立つのだろう。しかし、ターミナルケアを視野に入れた「訪問診療」の場合、全人的なケアはできない…ということを再三述べている。

「チーム医療」の必要性はどの分野の文献をみても、必須項目として述べられている。そこで述べられているソーシャルワーカーの役割は、職種によってマチマチだが…。それを整理するのも、おもしろいかもしれない。


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がん終末期患者の在宅医療-その現状と課題- 木澤義之

2008-04-24 14:46:51 | 医学
『ターミナルケア Vo.11 No.4 JULY 2001』

筆者が勤務する医療機関での症例研究をもとに、終末期がん患者が病院医療から在宅ケアに移行する際の問題点を挙げ、その対策と今後の展望を述べている。

・在宅緩和ケアは、比較的短い期間で濃密なケアや医療が行われる短期決戦型である
・病棟スタッフが在宅医療について十分に理解していない
 →・退院当日や退院後に、在宅医療の依頼が入ることがある
  ・十分に連携がとれないことで、介護用ベットの導入や入浴サービスの導入なども後手後手になってしまう

終末期がん患者の在宅医療を充実させるための課題として、「ソーシャルワーカーとの連携」を挙げている
引用
「病院内では、どうしても医療関係者主導でこれからの医療の方針が決定されがちだが、MSWをチームの一員とすることで、かれらは医療を直接行わない医療者という特徴を活用して、医師などが捉えることのできない患者や家族の考え方や状況などを把握し、医療者と社会との橋渡しをする。いわば水先案内人の役割を果たしてくれる」


引用部分について…ソーシャルワーカーを「医療者」と位置付けてよいのか?という疑問は残るが、医師という立場からソーシャルワーカーの専門性を紹介し、必要性を論じていることをうれしく思った。

またしても、病院在宅の連携が問題点として挙げられていた。
それは単に、職種同士のつながりにとどまらず、「入院ベットを確保しておく」ということも指摘していた。
退院後も、自分たちが在宅に送り出した患者さんを知っておいてもらえるように、在宅での生活状況を報告しておくことも、在宅ケアの担い手には求められている。もちろん、主治医同士が「紹介状」「御礼状」と形式的に行うものも大切だが、節目節目に状況報告をすることで、いざという時も連携が取りやすくなるだろう。
その働きかけも、ソーシャルワーカーが担える大切な部分であると考える。
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在宅ターミナルケアの現状と今後の展望 藤井勇一(日医雑誌 第129号・第11号/2003年6月1日)

2008-04-23 18:36:25 | 医学
横浜で外来及び訪問診療をおこなっている開業医の、実践を踏まえての論文。
ガンの末期患者を念頭におき、論を進めている。

引用
在宅ターミナルケアとは、患者の住み慣れた家において、死が差し迫った患者が良くも悪くも「その人らしく生きる」ために、患者とその家族に可能な限りの援助をすることである

退院から在宅導入準備における問題として…末期ガンの進行に伴い出現してくるさまざまな苦痛症状、そしてそれに伴って揺れ動く患者・家族の心理を理解し、先を予測しての準備が不可欠である-と提起している。


ガンの末期となると、「時間の制約」がある。それは病状によるもの(EX,落ち着いているから今なら退院できる、痛みのコントロールがつけば退院できる)や、余命そのものであったりする。
どのタイミングであっても「準備万端」であるようにしておくことが、患者さんや家族のみならず、「受け手」である在宅の主治医にとっても重要なことである。
そのために、送り手の医療機関としては「退院調整」が、受け手の医療機関としては「在宅準備」が存在している。
私も実践の中では、この「在宅準備」が、ソーシャルワーカーの業務の中で一番のウエイトを占めていた。
入院先に出向き患者さんを交えてカンファレンスを行う、家族の「看取り」についての意向をうかがう、介護保険対象外の患者さんについては介護用ベットや車いすレンタルの業者を探す・社協に相談する---などなど、在宅で1週間過ごすために、1か月前から準備をすることも多くあった。それは、患者さんの病状と家族の体制を第一に考え、べストのタイミングで自宅に帰ってきてもらうためである。
「連絡調整」「資源の発掘」…こういったことに多くの時間を費やすことができ、それをスムーズに行える職種こそがソーシャルワーカーだと考えている。
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保健医療ソーシャルワーク実践2 第3章連携・協働

2008-04-22 11:49:26 | 社会福祉学
先日参加した研究会の年間テーマが「協働」であり、また、文献を読み進めていく中で、私の中でキーワードとして登場している「連携」。実践の中で、また理論としてどうとらえられているか、今一度確認をしてみた。

・「連携・協働」は目的を同じくするものが、連絡・協力し合い、物事を共同して行っている状態
・業務としての「連携」…目的確認、情報の相互提供、協働の意思確認、基本情報の共有化、目的の再確認、役割分担、業務処理・管理、報告・評価-といった一連の流れで行われている


「連携」はソーシャルワーカーの一つのスキルとして位置づけられているが、当然のことながら、ソーシャルワーカーのみが行っているものではない。それは、関係職種によって行われるカンファレンスもその一つであり、医師による「情報提供書」や、看護師による「看護サマリー」など書類を通して行われているものもあるだろう。どの職種にとっても、「連携」は大切なスキルの一つと認識されているだろう。
医療機関の専門分化がすすんだ結果として、「連携」や「協働」の必要性が叫ばれ、組み込まれてきた。ある時代においては、多種多様な職種を、また患者さんや家族と医療者を結びつける「専門職」として、ソーシャルワーカーが位置づけられたこともあったかもしれない。
しかし現在は、医学においても看護学においても、「患者本位の医療提供」が認識として浸透し、臨床以外にも教育の段階でも取り入れられている。
そのような中で、ソーシャルワーカーが果たすべき、「連携」のスキル…というか形は何だろうか?

医療者に、意見をうまく表出できない患者さんや家族にとっては、ソーシャルワーカーの存在は有効か?(→いわゆる「人権擁護」の視点で?!)
在宅医療の領域での、医療者(医療機関)と福祉職(ヘルパーや施設職員など)、そしてケアマネをつなぐためには、社会福祉の教育を受け、かつ所属機関が医療機関であるソーシャルワーカーの存在は有効か?


看護や医学で言われている「連携」を確認することも、答えを導き出す一つの方法かもしれない



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ホスピスケアにおける協働

2008-04-21 13:23:08 | あたまの整理
大学時代の恩師が中心となって活動している、ソーシャルワーク分野の研究会に参加。
アメリカで学位を取得し、現場でも長く仕事をしていた研究者の方の報告。

アメリカでは在宅でのホスピスケアが主流となっていて、そのチームリーダーは「看護師」であるとのこと。参加者から、薬の投与指示などは医師しか行えない行為であるため、看護師がトップに立つのは難しいのでは…と指摘があった。それについて、患者さんのお宅に定期的に訪問をするのは「看護師」であり、その状況を医師が報告として受け、必要に応じて訪問(往診)をしたり、薬の処方を行うことになっているそうだ。
医学的なアセスメントができ、かつケアの指導もできる…という意味で、看護師はある意味オールマイティーなのかもしれない。
ちなみに、ソーシャルワーカーもチームに組み込まれており、患者さん一人一人に担当がつくことになっている。その役割としては、「保険に関するペーパーワーク、延命治療に関する決定権の委任状の作成などを手伝うこと」。


日本のホスピスケアでのチームは、多くの文献に、「医師がリーダーとなり、看護師がコーディネーターである」と書かれている。
これについては研究会でも様々な議論があり、医学的ニーズが高い患者さんは看護師や医師が「リーダー」になりうるが、いわゆる老衰でのターミナルケアの患者さんは、ソーシャルワーカーやケアマネージャー、ヘルパーも「リーダー」ないし「コーディネーター」になりうるのでは?という指摘が多かった。


「ターミナルケア」の対象者を「がん末期患者」に限定した場合、それは医療者が担う場面が多いであろう。しかし、山崎章郎氏が指摘しているように、患者をがんの疾患限定せず、広く対象とするべきである…ことを踏まえると、必ずしも医療者が中心となるチームばかりでもないと思う(もちろん、「援助チームのリーダー」とそのチームを有する「組織の労務上での責任者」は別と考える)。
ソーシャルワーカーがコーディネーターとなり実践をしたチームを整理することで、何らかの特徴を見いだせるかもしれない。
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がん末期患者を在宅で支える 住み慣れた家で死ぬということ-死の日常化に向けて 桜井隆

2008-04-19 15:49:38 | 医学
ターミナルケア Vol.11 No.4 July 2001掲載

筆者は、兵庫県で開業医として在宅ターミナルを実践している。
「病診連携」を中心に、事例を交えての実践報告となっている。
筆者が院長を務める「さくらいクリニック」は、関西労災病院と連携をとり、365日・24時間対応を協働で行っている…とのこと。
病院から在宅ターミナルの依頼があった際には、病院外来在宅医療部の看護婦のコーディネートにより、退院前カンファレンスが開催されている。

引用
①病院スタッフと在宅ケアを担当するスタッフは必ず直接会って、できれば患者、家族とミーティングを行って、共に支援する姿勢を具体的に感じてもらう必要がある。決してファックスや電話、メールだけでは良い連携システムはつくれない。

②病院スタッフと診療所スタッフの意思疎通がうまくいかないと、末期の治療、ケアのイニシアティブをどちらがとるのかで患者、家族を混乱させてしまう恐れがある。


引用について
…確かに、患者さんと家族は、診断をつけてくれて手術もしてくれた、いわゆる「大病院」の医療者のほうを重んじることが多い感じがする(私の主観にすぎないが…)。だからこそ、紹介元からうまく「移行」してもらわないと、患者さんたちはいつまでも気持を引きずってしまうように思う。一方で「何かあったら、いつでもベットはあけておくから」と言われたにも関わらず、再入院の相談をしても「ベットがいっぱいで…」「まだ入院レベルではないから…」といとも容易く、断られることがものすごく多い。こういう場面になって初めて、「ああ…もう診てもらえないんだ…」と最悪の状態で「移行」を痛感させられるのである。
「入院対象のレベル」は、病院によっても異なるし、在宅の医療者と病院の医療者でもその判断が異なることがしばしばだ。だからこそ、在宅ターミナルを開始する時点で、各々が対応可能なこと、これからの役割分担のことなどを整理しておかねばならない。
「病診連携」は単に、医療機関同士の紙ベースのやりとりで済むものではなく、より時間を費やして取り組んでいくものだと、この論文を通して再認識させられた。


「病診連携」にソーシャルワーカーはどのように絡んでいけるのか?
この実践結果の整理も必要だ
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これまでのまとめ

2008-04-18 21:56:51 | あたまの整理
今日は娘の体調が悪く、集中して本を読むことができず…
自分のブログを読み返し、あたまの整理をしようと試みた。

1.「ターミナルケア」の定義
2.「連携」の意味
3.「保健医療におけるソーシャルワーカーの役割」の再確認

主に上記の3点を、さらに深く考えていくことで、在宅ターミナルケアにおけるソーシャルワーカーの役割をなんとなく整理できるような気がする。


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