(1)安倍元首相の国葬は岸田首相の記者会見で表明された。戦前は国葬令があったが戦後は失効破棄されて規定の明文化はなく存在しない。戦後吉田茂元首相の国葬が内閣の決定で実施されたのが唯一の事例で、安倍元首相の国葬は2例目となる。
(2)岸田首相は安倍元首相の国葬発表で、銃撃を受けて亡くなった奈良県の事件現場での献花が10万人を超えたとして国民の関心の高さをあげて多くの国民の支持があることを理由としてあげた。政府が国民を代表する国会で説明し理解を得る手続きをしないのは、多分こうした理由によるものとみられる。
(3)しかし、直近のメディア世論調査では安倍元首相の国葬に「反対」、「どちらかといえば反対」が53.3%と過半数で、岸田内閣支持率は前回調査から12.2%急落して51%となり、国葬反対がこれを上回った。
安倍元首相の国葬を岸田首相の一存で決定して国会で説明、検討もせずに国民に説明をしない岸田首相の姿勢が批判を受けたものとみられる。
(4)国民には当初の衝撃的な安倍元首相の銃撃殺害事件の余韻も収まり、安倍元首相の晩年の森友、加計疑惑に桜を見る会のあらたな疑惑(飲料業界のビール提供)も発覚して、安倍元首相の残された疑惑の数々に生前本人からの説明もなく問題を消し去ろうとする姿勢に国葬反対が増えたと考えられる。
(5)政府は安倍元首相の国葬に対して、国民全体に喪に服することは強制しないと表明しているが、川崎市では安倍元首相の身内での通夜、葬儀に際して同教育委員会が全ての市立学校に半旗の掲揚を依頼していたこと(報道)が判明して強制ではないとしているが、教育委員会の立場を利用した行政指導と受け取られかねない事態だ。
(6)事は安倍元首相の身内の通夜、葬儀で、これでは行政側の安倍元首相の政治思想、信条に理解、賛同を示す行為と受け取られかねない。こういう社会現象も起きており、世論調査でも国民の53.3%が安倍元首相の国葬に反対しており、岸田首相の安倍元首相の国葬理由が否定されている(the reason for the national funeral was denied)中では、そもそも根拠法のない中で国会で説明、検討して国民の理解を得る結論を出す手続論はより必要となってきた。