(1)今年度答申で最低賃金(minimum wage:時給)が過去最大の31円増(3.3%)の時給961円となった。過去最大の961円といっても、その時給で募集しても多分人を集めることはむずかしい。時給1000円を超えないと今どき人を雇うことはできない社会事情だ。
(2)労働者の賃金、給与は企業が自主的、自発的に決めるものであり、最低賃金はこれを下回ってはならないという目安、基準であり、日本企業の賃金が国際的にみてもかなり低いという原因、原則でもある。
(3)それでも日本経済を支える中小企業、零細企業にとっては最低賃金の上昇は経営にも負担、負荷が大きく大変だが、やはり有能な人材を集めようとすれば投資は必要であり、労働者の生活改善もなく企業が利益を享受するということはあり得ない。
政府としては企業の正社員化を進めて労働者の身分保障の安定を進めることが大事だ。
(4)安倍元首相時代は官邸主導で介入して企業に賃上げを要請、実現してきたが、円安による輸入品、材料の高騰で帳消しになり実質賃金は目減りして国民生活には恩恵は及ばなかった。
日本企業の賃金が低い原因には中小企業が90%以上という経済構造にある。
(5)大企業の下請け企業としての中小企業が多い日本経済で高度経済成長時代を支えてきたが、時代は鉄鋼、建設、製造業主体の第2次産業からサービス業主体の第3次産業構造さらに情報、通信、コンピューター産業の第4次産業へと変遷して、若年層では働き方も多様化して特殊産業技術力の高い中小企業にも関心が集まり、若い有能な人材が中小企業を目指す志向もみえてきた。
(6)一方で若いうちに投資、貯蓄で資産を蓄えて一定期間働いて仕事を辞めて、あとは自由で好きなように人生を楽しむという生き方もあらわれて、企業経済としては技術の伝承、開発、成長、継続に不安もあり、担保としてのそれが内部留保(retained earnings)蓄積に傾いて、賃上げに向かわない要因でもある。
(7)企業の原理、原則、本則は投資効果による利益の掘り起こしであり、そのための人への投資は重要であり、国際基準並みの賃金保障に向かう努力は必要だ。
もちろん各国の経済構造、産業構造の違いはあるので、政府が経済対策でレベル整備することは必要だ。