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また昔話になってしまう。アラスカのとある村のバーでのこと。太っちょの老婆が入ってきてカウンター席に座った途端、中の女の子に「XXX、昨夜何が起こったか知ってる?」と興奮して言った。そして「一度も昨夜は目覚めなかったんだよ」と甲高い声が続いた。後は何を言っているのか聞き取れなかったが、余程嬉しかったらしく、わざわざそれを誰かに伝えたくて来たようだった。
昨夜、この老婆と同じことが起きた。そのことは、しかし、不眠を気にすることもないから、彼女のように大袈裟に言うことではない。ただ、こうは言ったかも知れない。「XXX、昨夜何が起こったか知っているか、実は懐かしい、いい夢を見たんだよ」と。
夢は不思議だ。登場人物は誰だかはっきりしている。しかし、その舞台となる場所は、現実には存在しない。よく東京近郊の山の夢を見たり、煩雑な列車の乗り換えに苦労する夢を見たりするが、実際に目にしたことはないし、経験したことでもない。
しかも、夢の中に出てくる、例えば奥多摩にしても、夢の中の山は見上げるほど高くて、より美しかったりする。郊外には一度も住まなかったかったが、3,4枚の稲田と里山の際にあった小さな家は、一度ならず夢の中に出てくる。描けと言われればできないことでもない。
昨夜の夢は都内の、古いアパートだった。現実にあったことが下敷きになってはいたが、そんな場所は全く記憶になくて、何故かその住宅地にあった一軒の家の壁に、コンクリ―のひび割れがあったのを鮮明に覚えている。
20代前後、アメリカは憧れの地で、幾度となく夢に見た。後年、ようやくにして訪れたかの国は、自然以外にはそれほど感動するものがなく、ハイウエイも、ビルの林立する街並みも、街路樹も、夢の中の風景の方が比較にならないほど清潔で、美しかった。
行ったこともない場所があれほど美しいというのは、どういうふうに解釈したらいいのだろう。記憶の片隅にある何枚もの情景が、願望のフィルターを通して女性の化粧のように、巧みに変容するのだろうか。そういえば、実際の記憶よりか夢の方が、登場人物も含めてずっと良かった。ムー。
師走14日土曜日、アラスカの荒野を長旅した「オヤジ」さまが上に来る。関心のある方は是非どうぞ。
かんとさん、今月の第3の週末21、22、23日でござるね。ならば、星の狩人たちも集まれ!TOKUさんもどう?
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